新井由木子【まだたべ】vol.026 口をきく猫の巻

家族を思う気持ちは皆同じ。“まだ食べたことのないもの”が気になって仕方がないイラストレーター・新井由木子さんが、食べるモノや関わるヒトと奮闘する日々を綴ります。

 猫が「ママ」と言えるようになりました。
 わたしの家に住む2匹の猫の、若いほうの雌猫ナノの話です。最初は「ニャニャッ!」と、口角を鋭く上げて細かく鳴くだけでした。それが最近、口の中の空気を舌で丸く包むようにして、柔らかな「マ」を発音するようになったのです。いつでも短く2度続けて鳴く度に「ママ、って言ってるのね、偉いねえ」と褒めているつもりが、発音のお手本を示していたのかもしれません。
 ナノは雉(きじ)猫ですが、全体にグレーが強くかかっていて縞がはっきりしない地味な色合い。灰色で丸々と太っていて手足も短いことから里芋とあだ名されるナノが、真面目な顔をして「ママ」と言うのは可愛いけれど、どこか妖怪じみてもいます。

※【まだたべ】は、【思いつき書店】として世界文化社公式noteに移転しました。
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文・イラスト・写真:新井由木子(あらい ゆきこ)/東京都生まれ。イラストレーター・挿絵描き。埼玉県草加市にある書店「ペレカスブック」店主。挿絵や絵本の制作のかたわら書店を営む。著書に『誰かの見たもの 口伝怪奇譚』『おめでとうおばけ』(大日本図書)、『まんじゅうじいさん』(絵本塾出版)ほか。「この世はまだ たべたことのないものだらけ。東京に近い埼玉県の、とあるカフェの中にあるペレカスブックで、挿絵や絵本を作りながら本屋を営んでいます。料理は上手ではないけれど、生まれ故郷の式根島と、草加せんべいの町あたりを行き来しながら、食べること周りのことを書いてゆきます」
http://www.pelekasbook.com
Twitter:@pelekasbook

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