新井由木子【まだたべ】vol.043 算数の中の兄弟の巻

算数の問題、真剣に考えると、確かに謎に満ちた状況がたくさんありますね。“まだ食べたことのないもの”が気になって仕方がないイラストレーター・新井由木子さんが、食べるモノや関わるヒトと奮闘する日々を綴ります。

 わたしは、算数が苦手な子どもでした。
「兄が時速◯kmで家を出発します。弟が◯分後に自転車で時速◯kmで後を追いかけます。弟が兄に追いつくのは何分後でしょうか」
 こういう設問が好きではありませんでした。解いている間にも弟が兄を追い上げている気がして、落ち着いて取り組むことができないからです。そして追いついた暁には、兄弟に何が起きるのかも気になるのでした。

 今、大人になって改めてこの設問に向き合ってみると、当時の幼い自分のモヤモヤがよく理解できます。
 弟が兄を自転車で追いかけるというのは、余程のことだと思うのです。もしかしたら弟は何かに怒り狂って兄を追っているのではないでしょうか。弟は兄に追いついたとたんに、兄の頰にビンタを食らわせるのかもしれません。問題の正解と、兄が頰を張られる破裂音が、頭の中で重なります。

※【まだたべ】は、【思いつき書店】として世界文化社公式noteに移転しました。
連載はこちら

 

文・イラスト・写真:新井由木子(あらい ゆきこ)/東京都生まれ。イラストレーター・挿絵描き。埼玉県草加市にある書店「ペレカスブック」店主。挿絵や絵本の制作のかたわら書店を営む。著書に『誰かの見たもの 口伝怪奇譚』『おめでとうおばけ』(大日本図書)、『まんじゅうじいさん』(絵本塾出版)ほか。「この世はまだ たべたことのないものだらけ。東京に近い埼玉県の、とあるカフェの中にあるペレカスブックで、挿絵や絵本を作りながら本屋を営んでいます。料理は上手ではないけれど、生まれ故郷の式根島と、草加せんべいの町あたりを行き来しながら、食べること周りのことを書いてゆきます」
http://www.pelekasbook.com
Twitter:@pelekasbook

この連載のバックナンバー

▼ もっと見る