新井由木子【まだたべ】vol.052 草加いきもの伝説の巻

私たちの“日常”も、いずれ歴史となり伝説となる日が来るのかもしれません。“まだ食べたことのないもの”が気になって仕方がないイラストレーター・新井由木子さんが、食べるモノや関わるヒトと奮闘する日々を綴ります。

 草加の歴史の中には、さまざまな生き物の伝説が息づいています。
 草加宿場町通りの北の外れ、草加松原の松並木では、往診に出かけたお医者さんが狐に化かされて、松の幹に注射を打ったなどという昔話があります。また、宿場通り街道内でも狐は頻繁に見られたようで、草加の宿の多くを焼き尽くした大火の際には、出火の前日、近辺の狐が大変に騒いだという言い伝えも残っています。
 元々湿地帯だった草加の辺りに街道が整備され、その周りに人が集まり田畑ができ、狐の棲める環境があったのだろうと想像します。

 それから時代はぐっと現代に近くなり、今から70年くらい前。わたしの老父が少年だった頃になると、さすがにもう狐は見られなかったそうですが、田んぼの畦道を横切るイタチの姿は、頻繁に見られたそうです。
 また、犬たちが比較的自由に町内を散歩していたそうで、草加小学校のグラウンドで遊ぶ子どもたちの中に犬が交ざっていることもよくあったとか。鬼を決めるジャンケンの輪に入っていた犬が、プーッとオナラをしたのが可笑しくて、みんなで笑いながらその犬を追いかけたこともあったそうです。

※【まだたべ】は、【思いつき書店】として世界文化社公式noteに移転しました。
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文・イラスト・写真:新井由木子(あらい ゆきこ)/東京都生まれ。イラストレーター・挿絵描き。埼玉県草加市にある書店「ペレカスブック」店主。挿絵や絵本の制作のかたわら書店を営む。著書に『誰かの見たもの 口伝怪奇譚』『おめでとうおばけ』(大日本図書)、『まんじゅうじいさん』(絵本塾出版)ほか。「この世はまだ たべたことのないものだらけ。東京に近い埼玉県の、とあるカフェの中にあるペレカスブックで、挿絵や絵本を作りながら本屋を営んでいます。料理は上手ではないけれど、生まれ故郷の式根島と、草加せんべいの町あたりを行き来しながら、食べること周りのことを書いてゆきます」
http://www.pelekasbook.com
Twitter:@pelekasbook

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