沢野ひとし【食べたり、書いたり、恋したり。】第1回『ジャガイモ』

生きるうえで食べることは不可欠ですが、人生はそれだけではありません。寝たり起きたり、仕事をしたり、人に会ったり、旅に出たり。ときには恋もすれば、辛い別れもあります。一見、食べることとは無縁でも、忘れかけていた人生の一場面が、舌の記憶とともに鮮やかに蘇ることもあるでしょう。この連載では、イラストレーター・沢野ひとしさんが、人生のさまざまな場面で遭遇した“食”にまつわる思い出や発見を、文章とイラストで徒然に綴ります。

 五年前の二月中旬に中国雲南省の麗江(リージャン)に行った。チベットやインドの交易ルートで古くから栄えた町である。城壁のない土地なので、どこを歩いても開放的な印象を受け、町のいたるところを走っている水路と掃除の行き届いた石畳が美しい。

 家屋の多くは古い日本家屋のように、黒い瓦葺(かわらぶき)屋根に木造の二階建てでできている。十二世紀頃から育まれた東巴(トンパ)文字は現代に生きる唯一の象形文字である。グラフィックな文字を扱うデザイナーの人の憧れの古都。そして水路が豊富、道路と住居のバランスの良さ、ナシ族建築様式と、他の中国の町では見られないしっとりと落ち着いた風格を表している。
 隣の国はベトナムと南の方に位置するために、冬でも温暖な気候である。そのため屋台に並ぶ果物類には目を見張る。



※【食べたり、書いたり、恋したり。】は、世界文化社公式noteに移転しました。
この続きはこちらからどうぞ。

 

文・イラスト:沢野ひとし(さわの ひとし)/名古屋市生まれ。イラストレーター。児童出版社勤務を経て独立。「本の雑誌」創刊時より表紙・本文イラストを担当する。第22回講談社出版文化賞さしえ賞受賞。著書に『山の時間』(白山書房)、『山の帰り道』『クロ日記』『北京食堂の夕暮れ』(本の雑誌社)、『人生のことはすべて山に学んだ』(海竜社)、『だんごむしのダディダンダン』(おのりえん作・福音館書店)、『しいちゃん』(友部正人作・フェリシモ出版)ほか多数。趣味は山とカントリー音楽と北京と部屋の片づけ。

この連載のバックナンバー

▼ もっと見る