沢野ひとし【食べたり、書いたり、恋したり。】第9回『餃子を訪ねて三千里』

生きるうえで食べることは不可欠ですが、人生はそれだけではありません。寝たり起きたり、仕事をしたり、人に会ったり、旅に出たり。ときには恋もすれば、辛い別れもあります。一見、食べることとは無縁でも、忘れかけていた人生の一場面が、舌の記憶とともに鮮やかに蘇ることもあるでしょう。この連載では、イラストレーター・沢野ひとしさんが、人生のさまざまな場面で遭遇した“食”にまつわる思い出や発見を、文章とイラストで徒然に綴ります。

「母親の餃子が一番」。
 そう断言する中国人の友人に出会った。ならばそれを食べてみたい。

 中国のもっとも北の黒竜江省、竜江という小さな駅に降りて、友人の故郷を二年前の夏に訪ねた。トウモロコシ畑が一面に広がり、抜けるような透明感のある青空が出迎えてくれた。

 中国人は「南米北麺」という食文化を表わす言葉をよく口にする。南の人は米飯を主食にし、北は小麦粉やトウモロコシなどの粉物が中心となる。したがって北方の食堂に入ると、中国の蒸しパン、饅頭や麺類、そして茹でた熱々の餃子を頬張っている人が多い。


※【食べたり、書いたり、恋したり。】は、世界文化社公式noteに移転しました。
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文・イラスト:沢野ひとし(さわの ひとし)/名古屋市生まれ。イラストレーター。児童出版社勤務を経て独立。「本の雑誌」創刊時より表紙・本文イラストを担当する。第22回講談社出版文化賞さしえ賞受賞。著書に『山の時間』(白山書房)、『山の帰り道』『クロ日記』『北京食堂の夕暮れ』(本の雑誌社)、『人生のことはすべて山に学んだ』(海竜社)、『だんごむしのダディダンダン』(おのりえん作・福音館書店)、『しいちゃん』(友部正人作・フェリシモ出版)ほか多数。趣味は山とカントリー音楽と北京と部屋の片づけ。

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