新井由木子【まだたべ】vol.007 神様を食べた話(上)

何十年と生きていたって、世の中にはまだ食べたことのないものが溢れています。隣の家では毎日のように食卓に並んでいるのに、我が家では見たことも聞いたこともない、なんていう食べものもあるかもしれません。この連載では、そんな“まだ食べたことのないもの”が気になって仕方がない、というイラストレーター・新井由木子さんが、食べるモノや関わるヒトと奮闘する日々を綴ります。

 それが生きているうちに食べさせたいから本日集合と、急遽ONU氏から連絡が入りました。
 本屋を閉めてから待ち合わせ場所の公園に向かうと、薄暗がりの中に、高度技術職の立派な勤め人にはとても見えない、どこか深い森で通貨を介さない食べ物で生活を賄っていそうなONU氏が、小ぶりのリュックサックを背負ってニコニコと待っていました。

 ONU氏の名誉のために言っておくと、氏がわたしの目にそんな風に映るのは、彼は家族キャンプが趣味で、顔が真っ黒に日焼けしていることだけでなく、高度技術職として働く派遣先で、必ず何かしら野生のものを収集したり生け捕ったりして食べていることを、わたしが知っているせいだと思います。そういうことを知らなければ、ハットを被り銀のリングをしたおしゃれな人、としか見えないでしょう。

※【まだたべ】は、【思いつき書店】として世界文化社公式noteに移転しました。
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文・イラスト:新井由木子(あらい ゆきこ)/東京都生まれ。イラストレーター・挿絵描き。埼玉県草加市にある書店「ペレカスブック」店主。挿絵や絵本の制作のかたわら書店を営む。著書に『誰かの見たもの 口伝怪奇譚』『おめでとうおばけ』(大日本図書)、『まんじゅうじいさん』(絵本塾出版)ほか。「この世はまだ たべたことのないものだらけ。東京に近い埼玉県の、とあるカフェの中にあるペレカスブックで、挿絵や絵本を作りながら本屋を営んでいます。料理は上手ではないけれど、生まれ故郷の式根島と、草加せんべいの町あたりを行き来しながら、食べること周りのことを書いてゆきます」
http://www.pelekasbook.com
ブログ「Pelekas Books&Gallery&Bar」https://pelekas.exblog.jp
Twitter:@pelekasbook

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