東雲輝之【新鮮すぎる魚が食べたい。】-vol.58- 見た目はアレだけど超高級珍味『ユムシの酢の物』

「えっ、コレ食べられるの?」と思うほど衝撃のビジュアルですが、“超高級珍味”とは聞き捨てならないですね。お試しあれ。初心者でも楽しく釣って、おいしく食べる方法を、アウトドアライター・東雲輝之さんに教わる連載です。

冬枯れの海岸は魚の姿もなく、ただ冷たい海風だけが物悲しく吹きすさびます。しかし、決して海に生物がいないわけではありません。この時期の海岸を掘ってみると、おそらくほとんどの人が知らないであろう究極の珍味、「ユムシ」と出会うことができるかもしれません。

『ユムシ』ってどんな生物?

ユムシは、太く短い円筒形をしたソーセージ状の軟らかい体に口とお尻が付いた、ぬっぺりとした姿の生物です。国内では北海道から九州までの浅い海域の砂浜に生息しています。

見た目はミミズのようですが、ミミズ(環形動物)とユムシ(ユムシ動物)は分類学上では違う生物とされています。

どこで採れるの?

ユムシはもともと海底に棲んでいる生物ですが、冬の寒い時期には、繁殖のために浅瀬に集まってきます。よってこの時期の干潮時に海岸へ行けば、出会える可能性が高いです。

ユムシ採りの持ち物は、バケツと大型スコップがあれば十分です。風が強いととても寒いので、防寒対策はしっかりとしておきましょう。

砂浜に着いたら、まず地面を観察してユムシの巣穴を探しましょう。冬の寒い時期でも砂浜には、子ガニやエビ、ゴカイなどの生物がたくさんいるため、地面には色々な種類の穴が開いてます。その中で『穴の入口に細長い砂の塊がたくさん落ちている』穴を見つけます。ユムシは砂を食べる習性を持っているため、ユムシの巣穴には細長い糞がたくさん落ちています。



巣穴を見つけたら、次にもう1つの穴を探します。見つけた巣穴に海水を注いで踏みつけると、ユムシはUの字型に巣穴を掘るため、どこか別の穴から海水がしみ出します。潜んでいるとしたら、2つの穴をつなぐ直線上にいるはずです。そこで、穴の手前から周りを深めに掘り返してみましょう。巣穴の途中からスコップを入れると、ユムシを切ってしまう可能性があるので注意しましょう。

コリコリ食感、味は上質なミル貝



おそらく、トップの画像を見た人の中には“ゲテモノ”と思われた方も多いでしょう。確かにユムシはとても一般ウケするような見た目ではありません。しかし北海道では「ルッツ」、韓国では「ケブル」、中国では「ハイチャン」という名前で、高級食材として知られています。

ユムシの頭には小さな針が生えており、ここを使ってドリルのように体を回転させることで地面に潜っていきます。この針は少し固くなっているため、ユムシの下処理は、まず頭を落として体を縦に裂きましょう。ユムシの体内にはコノワタのような内臓が入っているので、包丁の先で擦って綺麗に取り除きます。



開いたユムシを水で綺麗に洗ったら、醤油、みりん、酢を等分に入れた三杯酢に漬けて、冷蔵庫で半日程置きましょう。



元の見た目は、ちょっとアレなユムシですが、その味わいは“格別”の一言です! ユムシの身にはうま味成分であるアミノ酸が豊富に含まれており、コリコリした身を噛むたびにミル貝のような甘みが染み出します。それに見た目だって、料理してしまえば大して気になりません。むしろナマコやホヤよりも鮮やかな色合いで、美味しそうに見える食材だと言えます。



ユムシは、食材としては超マイナーですが、釣りの世界では「魚がよく釣れる餌」として有名です。よって、どうしてもユムシを食べてみたい人は釣具屋さんに行けば簡単に購入することができます。ただし、餌として売られているユムシは、ちょっと鮮度が悪いので旨味が薄く、また1匹150円近くもするので、食材として購入するのは考えものです。


【新鮮すぎる魚が食べたい。】は、毎週金曜日に掲載します。
 

文・写真・イラスト:東雲輝之(しののめ てるゆき)/1985年生まれ、福岡県北九州市出身。猟師&ライター。狩猟や釣り、養蜂など、自然から食を得て楽しむ“キャッチ&イート”をメインテーマとしたアウトドアライター。ジビエの流通やニホンミツバチ養蜂などの活動も行う。著書「これから始める人のための狩猟の教科書」、「イラストマニュアルはじめての養蜂」など(共に秀和システム)。
ブログ「孤独のジビエ」http://kodokunogibier.blog.fc2.com/
Twitter:@rakurou21

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