東雲輝之【新鮮すぎる魚が食べたい。】-vol.59- 冬の鯛『コブダイのポワレ』

パリッと焼いた皮にふわっとやわらかい白身の食感も楽しいコブダイのポワレ。忍耐の後には至福の美味しさが待っています。初心者でも楽しく釣って、おいしく食べる方法を、アウトドアライター・東雲輝之さんに教わる連載です。

暖かい時期に防波堤などに群れていた小魚たちは、冬の寒い時期になると沖の深い場所へ移動してしまうため、まったく釣れなくなります。しかし寒さに強い大型の魚は、たま~に近海に顔を出すことがあるため、冬場の釣りでは「コブダイ」のような珍しい大物と出会う可能性が高くなります。

『コブダイ』ってどんな魚?

コブダイは、全長およそ80cm以上にも成長する大型の海水魚で、沖縄以外の日本全国に広く分布しています。若魚と成魚とでは見た目が著しく異なり、小型のときは雌で、性転換して大型になると雄になります。特徴的なのは頭に大きなコブを持っている点で、このコブは大型になればなるほど大きく張り出し、1mを超える老齢魚ともなると、なんとも威厳がある顔立ちになります。

なおコブダイは、「鯛」という名前が付いていますが、実はベラ科の魚で、マダイやクロダイのようなタイ科の魚ではありません。このようなタイ科ではないのに「タイ」という名前が付いている魚は、俗に「あやかりタイ」と呼ばれており、漁師さんたちが市場で高く売るために “イメージアップ”で名付けたとも言われています。

どこで釣れるの?

コブダイはサザエやアワビのような固い殻を持つ巻き貝を主食にしているため、磯や消波ブロックがたくさん沈んでいるような防波堤に生息しています。

コブダイは決して冬場だけ近海にいるわけではないので、一年中釣ることができる魚です。しかし寒い時期以外の磯や防波堤は、他の小魚たちがたくさんいるため、のんびりと泳ぐ大型のコブダイよりも先に小魚たちが釣り餌を食べてしまいます。よって小魚たちが沖に逃げている寒い時期が、コブダイと出会える絶好のチャンスとなります。

どうやって釣るの?

仕掛けは棒状のウキを使った「浮き釣り」でいきましょう。この時期はコブダイ以外にも、クロダイやボラ、またサワラやタチウオといった大物を釣ることもできます。



冬場の釣りは忍耐勝負です! 寒空の下、ウキがぴくりとも動かない長く単調な時間が続くかもしれませんが、がんばりましょう。防寒対策は特に足元をしっかりとしておいてください。冷えは足先から登ってくるので、貼るタイプの使い捨てカイロを靴の中に貼っておき、靴下も二枚重ねにしてはくことをおすすめします。

“寒鯛(かんだい)”の旨味は皮にある



コブダイは別名「寒鯛」と呼ばれており、特に冬に美味しくなることで知られています。冬場のコブダイは、身に繊細な脂がみっちりと詰まっています。

しかし……実を言うと、コブダイの身には旨味がそれほどありません。舌の上をサラサラと流れる脂分は独特な食感で面白いのですが、その味はどこかそっけなく、“蝋(ろう)”を食べているような気分にすらなります。

そこで、コブダイを料理する時は必ず“皮”を付けたまま調理しましょう。コブダイは身よりも皮に旨味が乗っている魚です。ただし、皮は厚く生では食べられないため、火を通した料理方法が向いています。

コブダイの切り身は、まず両面に塩・コショウをたっぷりとすり込み、オリーブオイルを引いたフライパンで皮目をパリっと焼き上げましょう。普通の魚は皮を焼くと縮まって丸くなってしまいますが、コブダイの皮は厚いので、綺麗に焼き上げることができます。



皮目をしっかりと焼いたら裏返して、反対側も焼いていきます。このとき、身の半分程に熱が通った段階で火を落とし、あとは余熱で温めて、身をふんわりと焼き上げます。



コブダイの皮はゼラチン質が多く、ここにコブダイ特有の旨味があふれています。この皮と身を一緒に食べることで、身のふわっとした食感に旨味が加わり、まさに“鯛”の名に恥じることの無い最高の味わいを楽しむことができます。


【新鮮すぎる魚が食べたい。】は、毎週金曜日に掲載します。
 

文・写真・イラスト:東雲輝之(しののめ てるゆき)/1985年生まれ、福岡県北九州市出身。猟師&ライター。狩猟や釣り、養蜂など、自然から食を得て楽しむ“キャッチ&イート”をメインテーマとしたアウトドアライター。ジビエの流通やニホンミツバチ養蜂などの活動も行う。著書「これから始める人のための狩猟の教科書」、「イラストマニュアルはじめての養蜂」など(共に秀和システム)。
ブログ「孤独のジビエ」http://kodokunogibier.blog.fc2.com/
Twitter:@rakurou21

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