東雲輝之【新鮮すぎる魚が食べたい。】-vol.60- 見た目は“青い”が味は一級『アナハゼの刺身』

少しずつ春が近づいてきました。のんびり釣り糸を垂らす休日、気持ちいいだろうなあ。青い空、青い海、青い魚……。え、青い魚? 初心者でも楽しく釣って、おいしく食べる方法を、アウトドアライター・東雲輝之さんに教わる連載です。

寒さに強いメバルやカサゴ、クロソイなどの“ロックフィッシュ”(海底の岩礁や海草の間、瀬などを棲み家とする魚の総称)と呼ばれる魚たちは、海水温が低い時期でも釣ることができます。しかしこれらロックフィッシュは人気が高い釣魚なので、大きなサイズはあらかた釣り尽くされてしまっており、滅多にお目にかかることはありません。そこで、もしあなたが「見た目はあまり気にしない人」なのであれば、普通の釣り人は見向きもしないけれど、実はとても美味しいロックフィッシュ、「アナハゼ」を釣るのはいかがでしょうか?

『アナハゼ』ってどんな魚?

アナハゼは、本州から宮崎県までの各地沿岸部、朝鮮半島、済州島などに広く生息している、体長20cmほどの海水魚です。名前に「ハゼ」と付いていますが、マハゼのようなスズキ目ハゼ科ではなく、カサゴ目カジカ科に分類される魚です。近種の仲間としては、北海道全沿岸を中心に北の海に生息している「トゲカジカ」や、全国の河川に生息する「ゴリ」と呼ばれる魚などがあり、あまりメジャーではありませんが、どちらも美味しい魚として知られています。

どこで釣れるの?

アナハゼは、名前の由来の通り、岩の隙間にできた穴に生息している魚です。よって、磯や消波ブロックの多い防波堤など、至る所に潜んでいます。またアナハゼは、あまり泳ぎ回ることはせず、普段は岩の隙間でジッとしているので、潮が引いたあとに残る潮だまり(タイドプール)に取り残されていることがよくあります。このような場所なら、アナハゼがいることが目視でわかるので、「見釣り(みづり・サイトフィッシング)」が楽しめます。

どうやって釣るの?

アナハゼを釣るのはたいして難しくありません。アナハゼは目の前に落ちてきた物を「とりあえず口に入れてみる」という習性を持っているため、短い竿にブラクリという小さなオモリをつけた仕掛けを海底まで落とし、「ちょんちょん」と動かしてみて様子を見ましょう。近くの岩陰にアナハゼがいれば、素早く頭を出して餌を丸のみしてくるので、そのまま引っ張って釣り上げます。



餌はゴカイなどの虫餌を使いますが、魚の切り身や茹でたマカロニ、また輪ゴムのような“フェイクのエサ”でも釣ることができます。

美味しいけれど、見た目がネック

アナハゼの仲間のトゲカジカは、北海道では「鍋物(味噌汁)にすると、一滴の汁も残さないよう箸で鍋の底を突っつき過ぎて壊してしまうほどに美味しい」という意味で、別名『鍋こわし』と呼ばれています。このアナハゼも、身はエビのようにねっとりとした甘みがあり、モチモチとした食感でとても美味しい魚です。



しかしこのアナハゼ、味は良いのですが、身の色が“青い”という独特な特徴を持っています。このため釣り人の間では「こんな毒々しい色をした魚なんて美味しいわけがない!」と思われ、まったく見向きもされません。よって、釣れたアナハゼのほとんどはリリースされるので、カサゴやメバルが乱獲されたような海でも、比較的簡単に、しかも大量に釣ることができます。

しかし、そうはいっても、見た目が“ミント色のお刺身”では食欲はわいてきません。そこで、見た目が気になる人は、大葉で巻いたり、衣をつけて天ぷらにするといった工夫をしましょう。



【新鮮すぎる魚が食べたい。】は、毎週金曜日に掲載します。
 

文・写真・イラスト:東雲輝之(しののめ てるゆき)/1985年生まれ、福岡県北九州市出身。猟師&ライター。狩猟や釣り、養蜂など、自然から食を得て楽しむ“キャッチ&イート”をメインテーマとしたアウトドアライター。ジビエの流通やニホンミツバチ養蜂などの活動も行う。著書「これから始める人のための狩猟の教科書」、「イラストマニュアルはじめての養蜂」など(共に秀和システム)。
ブログ「孤独のジビエ」http://kodokunogibier.blog.fc2.com/
Twitter:@rakurou21

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