東雲輝之【新鮮すぎる魚が食べたい。】-vol.68- その美味しさ“女王級”『アオリイカの刺身』

vol.1のジンドウイカから始まり、イカシリーズも第3弾。ついに”女王”様のお出ましです。初心者でも楽しく釣って、おいしく食べる方法を、アウトドアライター・東雲輝之さんに教わる連載です。

5月も中旬となり、いよいよ海釣りシーズン開幕! 海水温の上昇と共に、これまで深い海に身を潜めていた小魚たちも、沿岸にたくさん集まってきます。そしてそれらの小魚を目当てにやってくるのがフィッシュイーターと呼ばれる魚たち。その中でも特に人気のあるのが、“イカの女王”として名高い『アオリイカ』です。

『アオリイカ』ってどんなイカ?

アオリイカは、ハワイ以西の西太平洋からインド洋の暖かい海、また温帯域に広く分布するイカで、日本では北海道以南の沿岸に生息しています。大きさは、胴の長さが大きいもので50cm以上、体重は6kgほどになるものもあり、陸から釣れるイカとしては最大級です。

ちなみに、「アオリイカ」の名前の由来は、胴体の側面についているヒラヒラが、馬の胴体に泥除けとして巻く馬具、障泥(あおり)に似ていることから付けられたとされています。目の周りにアイシャドーのような青い色が浮き出ていることから、「イカの女王」とも呼ばれています。

どこで釣れるの?

アオリイカは普段は深い海に生息しています。しかし、春から夏にかけては産卵のために岸に寄ってくるので、アオリイカが卵を産み付ける海藻が多い、防波堤や磯などで釣ることができます。

どうやって釣るの?

アオリイカを釣るには、餌木(エギ)と呼ばれるルアーを使う『エギング』が人気です。しかしエギングは、ルアーを動かすのにコツがいるため、初心者には少し難しい釣法です。そこで今回は『ヤエン釣り』という、エギングよりも釣りやすい釣法をご紹介しましょう。

ヤエン釣りは、アジなどの小魚を針に引っ掛けて泳がせ、アオリイカが食いついてきたら「ヤエン」と呼ばれるフックが付いた道具を滑り落とし、そこに引っ掛けて釣り上げます。

餌のアジは、釣りたての生餌のほうが食いつきがよいですが、スーパーで売られているアジでも十分です。

アオリイカは餌のアジにつかみかかると、横取りされないように泳ぎ回る習性があります。このとき竿を引いてしまうと、イカが違和感を覚えて餌を手放してしまうので、動きが止まるまでじっと観察しましょう。

アオリイカが餌を食べ始めると、夢中になって周りがよく見えなくなるため、ヤエンを滑り落としても逃げられる心配はありません。

墨袋を破かないように注意しながら捌(さば)く

アオリイカの捌き方は、まず胴体と頭のつなぎ目を包丁で切ります。

次に、下足(ゲソ)をゆっくりと引っ張り、内臓ごと頭と下足を取り外しましょう。

アオリイカの胴体には、コウイカほど大きくはありませんが、墨袋が付いています。破ってしまうとキッチンが真っ黒になってしまうので注意して取り除きましょう。

よく水気を切ることが、美味しい刺身のコツ

アオリイカの味わいは、数あるイカのなかでも最高級との呼び声が高く、身には濃い旨味とねっとりとした甘さがあります。しかしアオリイカは、他のイカに比べて身が柔らかいので、真水に触れたままにしておくと身が水っぽくなり、旨味も半減します。

よって、下処理が済んだアオリイカの胴体は、キッチンペーパーに包んで冷蔵庫(できればチルド室)で寝かせましょう。一晩経つと、キッチンペーパーがびしょびしょになるので、さらに2回ほどキッチンペーパーを取替えて、1~2日ほどかけて身から余分な水分を吸い出します。

とても手間がかかりますが、こうすることで「イカの女王」の貫禄にふさわしい、ねっとりとコクのある最高級の味わいが楽しめます。



【新鮮すぎる魚が食べたい。】は、毎週金曜日に掲載します。
 

文・写真・イラスト:東雲輝之(しののめ てるゆき)/1985年生まれ、福岡県北九州市出身。猟師&ライター。狩猟や釣り、養蜂など、自然から食を得て楽しむ“キャッチ&イート”をメインテーマとしたアウトドアライター。ジビエの流通やニホンミツバチ養蜂などの活動も行う。著書「これから始める人のための狩猟の教科書」、「イラストマニュアルはじめての養蜂」など(共に秀和システム)。
ブログ「チカト商会」https://chikatoshoukai.com/
Twitter:@rakurou21

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