東雲輝之【新鮮すぎる魚が食べたい。】-vol.70- 季節の変わり目の食欲がないときは『マテガイのぬた』

ニョキッと出てきたところを引き抜いて採る、楽しい貝。この時期はぬたがおすすめですよ。初心者でも楽しく釣って、おいしく食べる方法を、アウトドアライター・東雲輝之さんに教わる連載です。

5月も終わりを迎え、吹く風にもだんだんと湿度が加わり、汗ばむ季節になりました。この時期になると、アサリは産卵が終わり、身が痩せてしまうため、潮干狩りシーズンはそろそろ終わりになります。しかし、「マテガイ」は梅雨の時期にかけて大きく成長するので、今なら身がプリプリとした美味しいマテガイを味わうことができます。

巣穴に塩を入れて、出てきたところを捕まえる

マテガイの採取方法は、vol.10の『焼きマテガイ』の回でお話したように、地面に開いた巣穴を見つけて塩を注ぎ込み、飛び出してきたマテガイを引き抜きます。

5月末ごろに採れるマテガイは、3~4月に比べて大きく成長しているため、警戒心も強くなっています。なかなか出てこないことに焦ってマテガイの端(水管)をつかむと、トカゲのしっぽのように身が切れて逃げられてしまうので注意しましょう。

採れたマテガイは、塩水でよく洗う

マテガイは、アサリやバカガイのように、それほど砂を含んでいないため、砂抜きは必要ないと言う人もいます。ただし、殻の隙間に砂が付着しているので、海水と同じ濃度(塩分3.5%)の塩水で丁寧に表面を洗いましょう。

マテガイをアサリのように一晩置きたいのであれば、『エアサーキュレーター』と呼ばれる電動で空気を送り込むポンプを使いましょう。マテガイは酸欠にとても弱く、空気を送り続けてあげないとすぐに死んでしまいます。もし容器に入れているマテガイが1匹でも死ぬと、他のマテガイも死んで、ひどい腐敗臭を放つので注意してください。

日本酒でサッと熱を通す

マテガイは火を通しすぎると身が縮んでしまい、さらに内臓から生臭さが出てしまいます。そこで茹でるときは、塩水から茹で始め、沸騰したら火を止め、余熱を利用して10分ほど放置しましょう。

もしくは、フライパンにマテガイを並べ、日本酒をひたひたになるぐらいに注ぎ、フタをして火にかけて「酒蒸し」にしましょう。アルコール成分がマテガイの持つ生臭さを消してくれるうえ、身も硬くならずにふっくらと仕上がります。

初夏のダルさを吹き飛ばす「マテガイのぬた」

梅雨にかけての季節は、極端に暑い日があったり、逆に肌寒い日があったりと、気温の変化が激しく体調を崩しがちです。そのような時期にオススメの料理が、マテガイと長ネギを酢味噌で和えた「ぬた」です。



茹で上がったマテガイは、身を殻から外して取り出しておきます。



次に、白味噌大さじ3に対し、酢を大さじ2、砂糖大さじ1を加えて、すり鉢でよくすります。



この間に、ざく切りにした長ネギを茹でておき、十分に熱が通って柔らかくなってきたらキッチンペーパーで水気を切って、酢味噌と和えます。ネギの汁気と酢味噌がよく馴染んできたら、マテガイの身を加えて軽く和えましょう。後は冷蔵庫で冷やします。



季節の変わり目で暑い日が続くと、体は温度変化についていけず、食欲が減退してしまいます。そこで、酢の酸味とネギの甘味、そしてマテガイの旨味が程よくマッチしたぬたが、食欲を刺激し、不安定になりがちな体調を整えてくれます。



【新鮮すぎる魚が食べたい。】は、毎週金曜日に掲載します。
 

文・写真・イラスト:東雲輝之(しののめ てるゆき)/1985年生まれ、福岡県北九州市出身。猟師&ライター。狩猟や釣り、養蜂など、自然から食を得て楽しむ“キャッチ&イート”をメインテーマとしたアウトドアライター。ジビエの流通やニホンミツバチ養蜂などの活動も行う。著書「これから始める人のための狩猟の教科書」、「イラストマニュアルはじめての養蜂」など(共に秀和システム)。
ブログ「チカト商会」https://chikatoshoukai.com/
Twitter:@rakurou21

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