東雲輝之【新鮮すぎる魚が食べたい。】-vol.76- 柔らかい身を“冷やして”焼く『ベラのハブテ焼き』

釣りたい魚とは違うけれど、釣れてしまった魚を“外道”と呼びます。たとえ思うように釣れなくても、せっかく釣れたなら……おいしくいただきたいですね! 初心者でも楽しく釣って、おいしく食べる方法を、アウトドアライター・東雲輝之さんに教わる連載です。

キスをメインに狙う夏場の投げ釣りでは、外道としてメゴチやアイナメ、クロダイ、フグなど色々な魚が釣れますが、なかでもよくお目にかかるのが「ベラ」という魚です。そのヌメヌメした体と、ビビッドな色合いから、釣り初心者には気味悪がられることが多いベラですが、食べてみると意外と美味しい魚です。

『ベラ』ってどんな魚?




ベラは、スズキ目ベラ科に属する魚の総称で、世界中の暖かな海域におよそ500種類が生息しています。その大きさも手のひらサイズ(5cm程度)の小さなものから、2mを超える巨大なものまで、様々な種類がいます。

ベラの仲間の多くは、体色が多彩で、オスメスによってその色が違います。また、成長に従って性転換する種も多く、さらに生息する場所によって色合いも微妙に異なるため、見た目だけでは個々の種が識別しにくい魚です。

日本の釣りでよく見かける「ベラ」



日本近海には、およそ130種類のベラの仲間が生息しているといわれています。その中で、体長が15~20cm程度になったキュウセン、ホンベラ、ニシキベラ、ホシササノハベラ、オハグロベラなどは、投げ釣りの外道として、釣り上げることがよくあります。

どうやって釣るの?




ベラは食欲旺盛な魚なので、投げ釣りだけでなく、ワームと呼ばれるルアーで狙ったり、ウキ釣りの外道としてもよく釣れます。また警戒心が薄いため、スピアフィッシング(潜水し、モリやヤスで魚を捕らえる)でも狙いやすいターゲットです。

ただしベラの多くは、夜は砂に潜って眠る習性があるため、夜釣りでは釣れません。逆に言うと、キス釣りでベラばかりが掛かって困っているのであれば、夜釣りに切り替えてみるとよいでしょう。

ベラは種類に限らず身が“水っぽい”



ベラには様々な仲間がいますが、その食味について共通して言えるのが“水っぽい”ことです。ベラは身がグニャグニャとして捌(さば)きづらく、また普通に焼いただけでは身が「ネチャッ」とするため、あまり美味しくないという印象を持たれています。

しかしベラは、棲んでいる海域で味わいが大きく変わります。例えばキュウセンは、太平洋側で獲れるものよりも、潮の流れが急で魚の運動量が多い瀬戸内海側のほうが、身の旨味がかなり増します。

どんなベラも美味しく食べられる「ハブテ焼き」




どんな種類のベラでも美味しく食べられる料理がハブテ焼きです。ハブテ焼きとは広島の郷土料理で、煮付けた魚を“焼く”料理です。

ベラは身が水っぽいため、普通に煮付けても上手く煮汁を吸わず、味わいが喧嘩別れしてしまいます。そこで醤油と砂糖で煮付けたベラを、さらに焼いて余分な水分を落とすことで、ベラの持つ旨味と煮汁の味わいが融合します。

ただしハブテ焼きは、「若いお嫁さんが、柔らかくなった煮魚を焼くときに身を崩してしまい、お姑さんに叱られてスネる(はぶてる)」ことから名前が付けられたように、上手に焼くのはかなり難しいです。

そこで、煮付けたベラはいったん冷蔵庫で冷やして身を引き締めてから焼くようにしましょう。こうすることで、「ネチャッ」とした食感が「ホクホク」となり、ベラの持つ本来の美味しさを味わうことができます。





【新鮮すぎる魚が食べたい。】は、毎週金曜日に掲載します。
 

文・写真・イラスト:東雲輝之(しののめ てるゆき)/1985年生まれ、福岡県北九州市出身。猟師&ライター。狩猟や釣り、養蜂など、自然から食を得て楽しむ“キャッチ&イート”をメインテーマとしたアウトドアライター。ジビエの流通やニホンミツバチ養蜂などの活動も行う。著書「これから始める人のための狩猟の教科書」、「イラストマニュアルはじめての養蜂」など(共に秀和システム)。
ブログ「チカト商会」https://chikatoshoukai.com/
Twitter:@rakurou21

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