東雲輝之【新鮮すぎる魚が食べたい。】-vol.90- 雑魚(ざこ)って呼ばないで! 『ヒメのさつま揚げ』

「ヒメ」と「ザコ」では、えらい違いのように思いますが、海には「ヒメ」と呼ばれる美味しい「ザコ」がいるそうですよー。初心者でも楽しく釣って、おいしく食べる方法を、アウトドアライター・東雲輝之さんに教わる連載です。

船釣りでは、名前がよくわからない小魚がよく釣れます。こういった小魚は総じて「雑魚(ざこ)」と呼ばれるわけですが、せっかく釣りを趣味にしているのであれば、色々な魚の名前を知っておきたいものです。ですから、もし今回ご紹介する小魚が釣れたときには「ザコ」なんて呼ばずに、「ヒメ」という、カワイイ名前で呼んであげてください。

『ヒメ』ってどんな魚?



ヒメは、西太平洋から中部太平洋まで広く生息している海水魚です。

体は長細く円筒形で、体長は15~25cm程度しかありません。大きく真ん丸な目に、体色は全体的に赤味を帯び、体の側面には赤い斑点がいくつも連なっています。赤と黄の縞模様になった美しい尾ビレがVの字状になっている点が、見分けるポイントです。

どこで釣れるの?

ヒメは、水深100mから200mほどの、深い海の砂泥底に生息しています。よって、マダイや、カサゴ(ウッカリカサゴ)を狙う船上からの釣りで、しばしばお目にかかります。


どうやって釣るの?

仕掛けは、タイラバや一つテンヤでも良いですが、できれば針がたくさんついた胴付き仕掛けが良いでしょう。


ヒメは動物食性で特に警戒心が強い魚ではないので、とりあえず“餌っぽい”物を見つけたら、口に入れる習性があります。よって、針が1本しかないタイラバや一つテンヤでは、仕掛けを落とした途端にヒメが引っ掛かることがあり、深海からヒメを1匹ずつ釣り上げる、“エレベーター”のような効率の悪い状態になってしまいます。

そこで、ヒメばかりが掛かるような状態になったら、1回の操作で何匹も釣り上げることができる胴付き仕掛けに変更してみると良いでしょう。餌はわざわざ買わなくても、その場で釣った魚を切り身にしたもので釣れます。

小骨の多いヒメは、すり身にして揚げると美味しい!



ヒメはマダイ狙いのときに、頻繁に外道として邪魔してくることや、サイズが小さいこと、また小骨が多いことなどで、釣り人の間では嫌われることがあります。

しかしヒメは、決してマズイ魚ではありません! 新鮮なヒメを刺身にして食べると、ねっとりとした甘さがあり、マダイなどとは比較にならないほどの濃厚な旨味があります。

しかし、やはり厄介なのは小骨の多さです。せっかくの美味しい刺身であっても、口の中で小骨がチクチクしたら、食欲も無くなってしまいます。

そこでオススメなのが、ヒメをすり身にして揚げた『さつま揚げ(九州では「天ぷら」といいます)』です。

ヒメ4尾は三枚におろして、木綿豆腐1丁と塩小さじ2、小麦粉大さじ2、砂糖大さじ2、醤油小さじ2と一緒にフードプロセッサーですり身にします。これに、千切りにしたニンジンとゴボウを加えて手のひら大に成形し、焦がさないように注意しながら高温の油でサッと揚げましょう。

ヒメのさつま揚げは、ふわふわとした食感と、刺身のときに感じた甘さが感じられ、思わず「おヒメ様!」とありがたく思うほどの味わいです。
 
さつま揚げは、ヒメ以外の小魚でも作れます。外道で釣れたエソやベラ、小鯛なども一緒にすり身にすると、ヒメ単体とは違った美味しさを感じることができます。



【新鮮すぎる魚が食べたい。】は、毎週金曜日に掲載します。
 

文・写真・イラスト:東雲輝之(しののめ てるゆき)/1985年生まれ、福岡県北九州市出身。猟師&ライター。狩猟や釣り、養蜂など、自然から食を得て楽しむ“キャッチ&イート”をメインテーマとしたアウトドアライター。ジビエの流通やニホンミツバチ養蜂などの活動も行う。著書「これから始める人のための狩猟の教科書」、「イラストマニュアルはじめての養蜂」など(共に秀和システム)。
ブログ「チカト商会」https://chikatoshoukai.com/
Twitter:@rakurou21

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