東雲輝之【新鮮すぎる魚が食べたい。】-vol.95- 青のり風味の魚をフレンチ風に『イスズミのキッシュロレーヌ』

なにかとクセが強い魚も、調理や工夫次第でおいしく食べられます。初心者でも楽しく釣って、おいしく食べる方法を、アウトドアライター・東雲輝之さんに教わる連載です。

「細い竿、細い糸、小さな鉤(はり)、小さなウキ」という繊細な仕掛けで挑むメジナ釣りは、常に興奮の連続です。右に左に泳ぐ魚を竿先で誘導し、急激な引きにはヒザのクッションで衝撃をいなし、時にはテンションを緩め、時には強引に糸を巻き、そして一気に釣り上げる! ……おやっ? 釣れたのはメジナではなく、「イスズミ」のようですね。

『イスズミ』ってどんな魚?



イスズミは、千葉県以南の太平洋沿岸から琉球列島、小笠原諸島、また網走近海のオホーツク海などに分布している海水魚です。

体長は30cmから50cmぐらいのサイズがよく見られますが、ときには70cmを超えることもあり、その引きの強さはクロメジナに相当するパワーを持っています。

どこで釣れるの?



「イス(石)棲み」が名前の語源であるように、イスズミは石や岩の多い磯に生息しています。

どうやって釣るの?



仲が良いのかどうかはよくわかりませんが、イスズミはメジナの群れに交じって泳いでいることが多く、釣り方もクロメジナと全く同じ餌・仕掛けで釣ることができます。

逆に言うと、イスズミとメジナを釣り分けることは不可能に近いぐらい難しく、磯釣りでは「クロメジナと思って釣り上げてみたらイスズミだった」ということがよくあります。

釣り人の間では「ババタレ」と呼ばれる



大型で引きの強いイスズミですが、残念なことに釣り人の間では全く人気がありません。その理由の一つは「クロメジナと思ったのに……」という“がっかり感”です。また、それとは別に、釣り上げた時に“糞”をまき散らすという理由があります。

イスズミは別名「ババタレ(うんこたれ)」と呼ばれており、釣り上げた途端、危険を察知し糞をまき散らす習性があります。この糞が服などに付くとなかなか落ちないため、釣り人の間では「やっかい者」と嫌われているのです。

ちなみに、イスズミの糞は臭くはありません。イスズミの食性は、冬場は主に海藻なので、その糞も海苔のような香りがします。さらにこの糞は食べても害は無く、舐めてみると濃いワカメのような味がします。

イスズミの刺身は青のり風味

メジナの外道として嫌われるイスズミですが、その味は悪くはありません。ただ夏場の海藻が少ないシーズンは動物性のエサを食べるため、身に強い磯臭さが出ます。食性が主に海藻などの冬場は、ほどよく脂が乗っており、刺身でも美味しくいただけます。


ただし、火を入れると独特のクセが出ます。そのクセは強い”青のり“のような匂いで、好き嫌いが分かれる香りです。


青のり風味を活かすフランス風お好み焼き

「青のり風味が苦手」という方は、こんな風に料理してみるのはいかがでしょうか?
まず三枚におろして骨を抜いたイスズミの身に、塩コショウをします。


次に、タルト皿にバターを塗って薄く伸ばしたパイ生地を置き、千切りにしたキャベツ、刻んだタマネギ、エリンギなどのキノコを並べて、その上にイスズミの身を置きます。


具材に、卵と生クリームを混ぜ合わせた卵液を注ぎ、最後にチーズをまんべんなくまぶして、200℃のオーブンで20分ほど焼きましょう。


パイ生地と生クリームで色々な食材を楽しむ『キッシュ・ロレーヌ』という料理は、フランス風お好み焼きとでも言いましょうか。

魚介類を入れる場合は、定番のタラなど白身魚のほかに、最近はサバ缶を使うのも人気のようですが、イスズミのような少しクセのある魚でも美味しくいただけます。




【新鮮すぎる魚が食べたい。】は、毎週金曜日に掲載します。
 

文・写真・イラスト:東雲輝之(しののめ てるゆき)/1985年生まれ、福岡県北九州市出身。猟師&ライター。狩猟や釣り、養蜂など、自然から食を得て楽しむ“キャッチ&イート”をメインテーマとしたアウトドアライター。ジビエの流通やニホンミツバチ養蜂などの活動も行う。著書「これから始める人のための狩猟の教科書」、「イラストマニュアルはじめての養蜂」など(共に秀和システム)。
ブログ「チカト商会」https://chikatoshoukai.com/
Twitter:@rakurou21

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