東雲輝之【新鮮すぎる魚が食べたい。】-vol.96- 釣れない時間は“のんびり”待とう『ブダイのみぞれ揚げ』

鳴かぬなら、鳴くまで待…たないで、気持ちと仕掛けをちょっとだけ切り替えるという作戦もよさそうです。初心者でも楽しく釣って、おいしく食べる方法を、アウトドアライター・東雲輝之さんに教わる連載です。

潮通しの良い沖磯は、堤防や地磯などに比べて釣れる魚が多いのですが……そうは言っても、な~んにも釣れないときだってあります。ピクリとも動かないウキに「イライラ」するかもしれませんが、そんなときは少しブレイクタイム。仕掛けを「ブダイ」狙いに切り替えて、時合が来るまでのんびり待ちましょう。

『ブダイ』ってどんな魚?



ブダイは、本州中部以南の西太平洋、またインド洋といった、比較的暖かい海に分布する海水魚です。

体長は、およそ40~60cmに達する大型で、体色は赤色と青色が複雑にからみあった色合いをしています。

この体色は性別によって差があり、オスは青みが強く、メスは赤みが強くなります。ただしブダイは性転換を繰り返すことができる変わった魚なので、体色によるオスメスの見分け方は専門家でも難しいといわれています。

どこで釣れるの?



ブダイは、歯が癒合してくちばしのようになっているのが特徴です。そのギザギザの歯を使って、岩場に隠れているカニやエビ、また、岩にこびり付いた海藻を“岩ごと”削って食べます。よって、これらの生き物や海藻の多い、磯場に多く生息しています。

魚には、餌を食べる“時合”がある

ところで人間社会で、朝・昼・晩と食事を取るタイミングがあるように、魚の世界でも餌を食べる時間が、あらかた決まっています。このような時間帯は「時合(じあい)」と呼ばれており、日の出の前後1~2時間(朝まずめ)と、日の入り前後1~2時間(夕まずめ)、また天候や潮の流れが変わるタイミングなどに訪れます。

時合から外れたら魚たちは餌を食べなくなるので、鉤(はり)にも掛からなくなります。こうなったら焦っても仕方がないので、“昼寝”をするか、別の魚種に仕掛けを変更するのが定石になります。

ブダイは、この時合と時合の合間に狙うのがオススメの魚です。ブダイは他の魚に比べて時合の影響が小さく、また、餌を「もそもそ」と食べるので、鉤に掛かるまで時間がかかります。

よって沖磯では時合を外れたら、同じく時合の影響を受けにくい根魚(カサゴやメバルなど)や、ブダイ釣りに切り替えるようにします。

どうやって釣るの?



ブダイ釣りの仕掛けは、クロメジナと同じものでも大丈夫ですが、松葉テンビンを使った専用の物もあります。

餌もクロメジナと同じようにオキアミでも釣れますが、アオサやハバノリ、ホンダワラといった海藻でも釣れます。これらの海藻は釣具屋さんで購入できますが、磯にこびり付いているものを少し採取して使っても良いでしょう。関東の方では、湯通ししたほうれん草や大根の葉を使って釣ることもあるそうです。

ブダイが餌を見つけると、ギザギザの歯で削り取るように食べていきます。このときウキが「ピョコピョコ」と動きますが、焦らずじっくりと待ちましょう。ブダイが鉤を飲み込んだらウキがゆっくりと沈んでいくので、リールを素早く巻いて釣り上げます。

顔に似合わず、柔らかい白身

ブダイは市場に出回ることがほとんどない魚ですが、生息数の多い高知や和歌山では人気が高く、エガミ(イガミ)という名前で親しまれています。

ブダイでオススメの料理は、『みぞれ揚げ』です。まず三枚におろした身を皮つきのままブツ切りにし、片栗粉をたっぷりとまぶします。これを高温のサラダ油でサッと揚げ、大根おろし、すりおろした生姜、刻んだ分葱(わけぎ)、めんつゆをかけて、熱いうちにいただきます。


ブダイの身質は、そのいかつい顔に似合わずあっさりとしており、皮はコラーゲン質で旨味があります。また、熱が入った身は「ほくほく」の食感になるので、大根おろしのさっぱり感と、めんつゆの旨味が合わさり、なかなか上品な味わいに仕上がります。




【新鮮すぎる魚が食べたい。】は、毎週金曜日に掲載します。
 

文・写真・イラスト:東雲輝之(しののめ てるゆき)/1985年生まれ、福岡県北九州市出身。猟師&ライター。狩猟や釣り、養蜂など、自然から食を得て楽しむ“キャッチ&イート”をメインテーマとしたアウトドアライター。ジビエの流通やニホンミツバチ養蜂などの活動も行う。著書「これから始める人のための狩猟の教科書」、「イラストマニュアルはじめての養蜂」など(共に秀和システム)。
ブログ「チカト商会」https://chikatoshoukai.com/
Twitter:@rakurou21

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