東雲輝之【新鮮すぎる魚が食べたい。】-vol.97- 魚に食べていただきたい!『釣り餌のレシピ』

なるほど、魚に機嫌よく食いついてもらうためには、おいしそうな好物でさりげなくおもてなしをすることも大事なんですね。初心者でも楽しく釣って、おいしく食べる方法を、アウトドアライター・東雲輝之さんに教わる連載です。

魚釣りでは「レシピ」がとても重要です。この「レシピ」と聞いて、「魚を釣って、どんな料理を作ろうかな?」と思った人は釣り人としてはまだまだ半人前。「魚を釣るために、どんな料理を作ろうかな?」と思った人は、立派な釣り人です。今回は「魚の料理」ではなく、「魚たちへの料理」である『釣り餌』について、お話をしましょう。

魚たちは何を食べるのか?

釣具屋さんに行くと、たくさんの種類の餌が並んでいることからもわかるように、魚たちは意外と“グルメ”です。例えば、「パン粉」や「米ぬか」、「押し麦」、「乾燥させたトウモロコシ」といった、人間でも食べられる素材もあれば、「カキ殻」、「ウニの殻」、「サナギの粉」といったものもあります。さらには、「ニンニクの粉末」や「化学調味料」、「キラキラした謎の粉」などなど、「そんな物まで魚たちは食べるのか!?」と驚くようなものも並んでいます。


これらの材料は一つ一つ買わなくても、程よくミックスされた「集魚剤」というものがあります。しかし集魚剤もそれぞれ配合されている材料によって効果がまったく異なるため、初心者のうちは何を買えばよいか迷ってしまいます。

まずは付け餌を選ぶ



魚釣りの餌は、まず、鉤(はり)に付けて使用する付け餌(つけえ)を考えます。付け餌は、定番の「オキアミ」を始め、虫類や小魚、生き餌などがあります。

これら付け餌のチョイスは魚の種類だけでなく、時間や天候によっても種類が変わります。例えばアジ釣りでは、普通は「アミエビ」や「オキアミ」を使いますが、夜間や曇天で日光が当たらないときは、暗闇で光る「アオイソメ」が効果的です。

さらに同じ種類の付け餌であっても状況によって使い分けが必要になることがあります。例えば水温が低く魚の活性が低い時期は、飲み込みを良くするため、「オキアミ」の頭や尻尾を取ったり、逆に水温が高く活性が高い時期は「オキアミ」を茹でて固くし、鉤から外れにくくする工夫をします。

このように魚釣りの餌は、まるで「シェフがお客様にお出しする料理を考えるように」、魚のことを考えて決めなければなりません。

撒き餌には、付け餌と同じものを混ぜる



撒き餌を使うときは、セオリーとして付け餌と同じものも混ぜるようにします。例えば「オキアミ」を付け餌にする場合は撒き餌にも「オキアミ」を混ぜ、「押し麦」を付け餌にする場合は撒き餌にも「押し麦」を混ぜます。

これは、鉤の付いた餌を撒き餌でわかりにくくするためです。魚たちは意外と目が良いので、鉤が見えていると餌を食べようとしなくなります。しかし撒き餌に同じものが混ざっていると、鉤の存在が気付かれにくくなり、魚が付け餌を食べやすくなります。

餌の比重で材料を決める



撒き餌に混ぜる材料は、釣りをする場所や状況を考えてチョイスします。例えば潮通しの良い場所で釣りをする場合、「パン粉」や「米ぬか」といった軽い材料は、すぐに流されてしまうため魚が散ってしまいます。そこでこのような場所では、カキ殻や押し麦といった水に沈みやすい物を混ぜ、なるべく海底に餌が溜まりやすいようにします。

比重の軽い「パン粉」などの材料は、例えば海中に濁りを作って魚たちの警戒心を薄くしたり、小魚(餌取り)を海面付近に集めて海底にいる大物を狙いやすくするなどの目的で使用します。「餌取り」とは、本命の魚よりも先に餌を食べてしまう魚のことです。

「米ぬか」の場合は、餌に混ぜると粘りが出て固まるため、まとまった状態で遠くに投げることができます。

オリジナルレシピを作ってみよう!

魚釣りの餌には、ある程度のセオリーがありますが、最終的なチョイスは「経験と勘」になります。世の釣り人たちは、撒き餌に「醤油」や「味噌」、「化学調味料」を混ぜたり、付け餌に「砂糖」をまぶしたり、「塩」に漬けたりと、実に様々な試行を凝らしています。

もちろんその工夫が本当に効果があるのかは、魚に聞いてみなければわからないことですが、オリジナルレシピで大物が釣れたときは、まるで「シェフがお客様にお褒めの言葉をいただいた」ように、喜びが湧いてきます!





【新鮮すぎる魚が食べたい。】は、毎週金曜日に掲載します。
 

文・写真・イラスト:東雲輝之(しののめ てるゆき)/1985年生まれ、福岡県北九州市出身。猟師&ライター。狩猟や釣り、養蜂など、自然から食を得て楽しむ“キャッチ&イート”をメインテーマとしたアウトドアライター。ジビエの流通やニホンミツバチ養蜂などの活動も行う。著書「これから始める人のための狩猟の教科書」、「イラストマニュアルはじめての養蜂」など(共に秀和システム)。
ブログ「チカト商会」https://chikatoshoukai.com/
Twitter:@rakurou21

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