【新鮮すぎる魚が食べたい。】-vol.2- 朝霜美人『サヨリとアスパラのバターソテー』

おいしい魚の条件のひとつは鮮度です。何より新鮮なのは、獲れたてピチピチの魚。自分で釣り上げた魚以上に新鮮なものはありません。そこで初心者でも楽しく釣って、おいしく食べる方法について教えていただく連載がスタートしました。指南役は、狩猟や釣り、養蜂など、自然から食を得て楽しむ“キャッチ&イート”をテーマに、幅広くご活躍中のアウトドアライター・東雲輝之さんです。

寒い日が続き朝方には地面に霜柱が降りるような季節になると、釣り人はいそいそと防波堤にサヨリ釣りへ出かけるようになります。サヨリは朝霜のように薄らとした輝きを放ち、群れるその姿は絹の糸を流したかのような美しさを持つ、知る人ぞ知る高級魚です。そんな魚も少しのテクニックを知っていれば、身近な防波堤で釣ることができます。

『サヨリ』ってどんな魚?

「細魚」と書くこの魚は、読んで字のごとく長細い姿をしており、体長は15cmから、時には40cmにも大きく成長します。体型だけでなくその顔も独特で、口紅をさしたような赤い口先と、パッチリと見開いた大きな目から、よく「女性のように美しい魚」として知られています。

どこで釣れるの?

高級料亭に出されるような大型のサヨリは沖合で漁獲されますが、20㎝以下の中・小型は沿岸まで回遊してくるため、普通の堤防から釣ることができます。

サヨリは群れで生活をしている魚なので、季節によって回遊する場所や時間が変わります。東京湾の場合は、初冬によく群れが回遊してきますが、九州や四国などでは春先や、真夏にまわってくることもあるので、近くの釣具屋さんで情報を収集しましょう。

どうやって釣るの?

女性にたとえられることが多いサヨリですが、彼女たちをしとめるには「繊細なアプローチ」と、「少々強引なアタック」が必要になります。

まず、サヨリの群れを引き付けるためには、撒きエサを使わなければなりません。エサは釣具屋に売られている“アミ”と呼ばれるプランクトンを使いますが、あまり大量に餌を撒くと群れが分散してしまうため、カゴに少量ずつ餌を詰めて、小まめに撒くようにしましょう。
 また、サヨリは非常に目が良い魚なので、使う針や糸は細いものでなければなりません。初心者は髪の毛のように細い糸を針に結ぶのは難しいことなので、釣具屋さんで市販されているサヨリ釣り専用のセットを購入するとよいでしょう。

サヨリは海面を泳ぐ魚なので、餌の付いた針をくわえると、ウキは沈まずに「ススス……」と横に移動します。その瞬間、先ほどの繊細なアプローチとは一転して、竿を大きく振って豪快に釣りあげます。
 サヨリの口は小さく、また驚くと水面をジャンプして逃げる習性があるため、もたもたしていると針が外れて逃げられてしまいます。そこで針にかかったら、少々強引にでもアタックを決めましょう。

サヨリの下処理

サヨリは釣りあげた後もバタバタと大暴れをするので、手早く氷水の入ったクーラーボックスに入れて“氷〆”にしましょう。
 家に持ち帰ったら頭を落とし、お腹の内側についている黒い膜と一緒に内臓を出して水洗いしましょう。よく「美人だから“腹黒い”」と揶揄されるサヨリの腹膜は、苦みが強いのでしっかりと取り除きましょう。
 また、サヨリのエラには小さなエビのような虫がついていますが、人間には無害なので気にしなくても大丈夫です。

透き通る美味しさ『サヨリの刺身』

運よく30cmを超える大型のサヨリを釣ることができたら、ぜひ刺身で食べてみましょう。サヨリの刺身は独特な風味があり、繊細な身の柔らかさの中に、一本鋭い線の通った旨味があります。血合い骨が気になる場合は、斜めに浅く切れ込みを入れて骨切りをしましょう。

小振りのサヨリは丸ごと使った料理に

“エンピツ”と呼ばれる20cm程度の小型のサヨリは、脂があまり乗っていないので刺身には向いていません。一般的には下処理したサヨリを塩水に漬けて乾燥させた「一夜干し」が、最高の酒の肴として有名ですが、せっかく新鮮なサヨリを手に入れたのなら、野菜を巻いてフレンチ風にソテーしましょう。

【材料】
・サヨリ 4匹
・アスパラガス 3本
・シメジ 1/3房
・人参 1/2本
・バター 25g
・塩こしょう 少々

【作り方】
1.サヨリを三枚におろし、塩コショウをする。
2.サヨリのサクを二つ並べて、カットしたアスパラガス、シメジ、下茹でしておいた人参を上において巻く。

3.竹串を2本刺して、バターを引いたフライパンで弱火で焼く。

小さなサヨリは、少し淡泊すぎる味わいなので、バターを加えて味にボリュームを出しましょう。
 また、料亭でサヨリは椀物として提供されることが多いように、良い出汁が出る魚なので骨は捨ててはいけません。このとき、サヨリのサクを野菜や梅干しなどで巻いて入れると、一風変わった上品な吸い物になります。




【新鮮すぎる魚が食べたい。】は、毎週金曜日に掲載します。

 

文・写真・イラスト:東雲輝之(しののめ てるゆき)/1985年生まれ、福岡県北九州市出身。猟師&ライター。狩猟や釣り、養蜂など、自然から食を得て楽しむ“キャッチ&イート”をメインテーマとしたアウトドアライター。ジビエの流通やニホンミツバチ養蜂などの活動も行う。著書『これから始める人のための狩猟の教科書』、『イラストマニュアルはじめての養蜂』など(共に秀和システム)。
ブログ「孤独のジビエ」http://kodokunogibier.blog.fc2.com/
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