東雲輝之【新鮮すぎる魚が食べたい。】-vol.6- 少し危険なオトナの味 『ゴンズイの煮つけ』

おいしい魚の条件のひとつは鮮度です。何より新鮮なのは、獲れたてピチピチの魚。自分で釣り上げた魚以上に新鮮なものはありません。そこで初心者でも楽しく釣って、おいしく食べる方法について連載でお届けします。指南役は、狩猟や釣り、養蜂など、自然から食を得て楽しむ“キャッチ&イート”をテーマに、幅広くご活躍中のアウトドアライター・東雲輝之さんです。

釣りを長く続けていると、必ず「外道」と呼ばれる魚と出合いますが、中でも代表的なのが、夜釣りで頻繁にお目にかかるゴンズイです。珍妙な見た目と強力な“毒”を持つことから、釣り人からは海に返されることなく、防波堤に打ち捨てられることも多い嫌われ者です。
 しかしそんなゴンズイ、実は付き合い方さえ知っていれば、意外と美味い魚だったりします。

『ゴンズイ』ってどんな魚?

顔から“にょろり”と伸びた4本の髭と、ヌメヌメの粘膜に覆われたこの魚は、言うなればドジョウのような見た目をしています。この外見だけなら、まだ「ゆるきゃら」としての愛嬌もありますが、ゴンズイが嫌われる理由はその超強力な毒にあります。

背中に1本、胸ヒレに左右1本ずつ突き出した毒針に刺されると、大の大人でも絶句するほどの痛みに襲われます。患部を強く握っても「ジンジン」とこみ上げてくる激痛の渦に、顔面は蒼白し、足は震え、数十分間は地獄の苦しみを味わうことになります。ゴンズイが地獄に住む鬼『牛頭(ごず)』から命名されたのもうなずける痛みです。

どこで釣れるの?

ゴンズイは夜に活発に活動する魚です。そのため、夏から冬にかけて防波堤でアナゴなどの魚を狙っていると、“釣れて”しまいます。
 さらにこの魚は大群で移動する習性があるため、いったん釣れ始めると、おそらくその海底はゴンズイだらけ。周りは早々に竿を収めて帰り支度を始めることでしょう。

しかし、それは並みの釣り人の場合。ゴンズイの痛みとともに、その“味”を知るゴンズイニストは、「ようやく本命がお出ましだ」とにやりと笑い、漆黒の海に向きなおすことになります。

どうやって釣るの?


ゴンズイは海底を這うように泳ぐ魚なので、魚の切り身などの餌を針に付け、おもりの付いた仕掛けと共に海に放り込む“ぶっ込み”という方法で釣りましょう。

釣り上げて暴れるゴンズイから安全に針を外すために、メゴチバサミという道具を持っておきましょう。メゴチバサミは魚をしっかりつかむための「トング」のような物です。ゴンズイ以外にも毒針を持った危険な魚は多いので、釣りバッグの中に常に入れておきましょう。

なお、ゴンズイを狙っていると、稀にイセエビがかかることがあります。もちろん本命はゴンズイなので、外道のイセエビはリリースです。

ゴンズイの下処理

ゴンズイの下処理で、まずやらなければならないが毒針の切除です。釣り上げたらメゴチバサミでしっかりと握り、調理バサミで背中と胸びれの毒針3本を確実に切断しましょう。
 なお、切断した針の先には毒が残っているので、ハサミを海水でじゃぶじゃぶ洗ってから、ティッシュペーパーでふき取りましょう。

1.釣り上げてすぐに、背中1本、胸ヒレ2本の毒針をキッチンバサミで切り落とす。
2.持ち帰ったら、毒針のあった背中から胸びれにかけて頭を落とす。
3.内臓を取り出して中をよく洗う。
4.熱湯をかけて表面のぬめりを取る。

毒は熱で消えるので食中毒の心配なし

見た目と毒針で悪目立ちをしているゴンズイですが、その味は「ウナギのようなとろける脂身に、ドジョウのような身のほっくり感。そして白身魚のような甘味」という、いろいろな魚の良いところを組み合わせたような気品があります。

料理も、揚げ物から蒲焼まで万能に使えます。特に「刺身」で食べるとヒラメの縁側のような旨味がありますが、ここは定番の煮つけでいきましょう。

【材料】
・ゴンズイ 10匹 
・大根 1/4カット
・しょうが ひとかけ
・酒 1/4カップ
・醤油(甘めのがおすすめ) 大さじ3
・みりん 大さじ3

【作り方】
1.大根を短冊状に切る。
2.ゴンズイを鍋に並べ、酒を入れる。
3.いったん強火にしてアルコールを飛ばし、煮立ったら火を落として弱火にする。
4.しょうがと大根、醤油、みりんを加えて落とし蓋をする。
5.煮詰まったら火を消して30分ほど冷ます。
6.再度弱火にして温めなおす。

魚の煮つけを作るときは、必ず酒と一緒に火にかけましょう。これはアルコールが飛ぶときに、魚の臭み成分を一緒に揮発させる「共沸」という現象を起こすためです。

もし、食べる気がないゴンズイが釣れたとしても、堤防に捨てたりしないでください。ゴンズイの毒は死んでも消えることがないため、まれに捨てられたゴンズイを踏んで地獄を味わう人がいます。
 ゴンズイは意外とおとなしい性格なので、優しく扱えば毒針を立てずに穏やかな表情をしています。こちらの態度によって鬼にも仏にもなるのがゴンズイという魚。一礼一拝を済ませたら海にお帰り願いましょう。




【新鮮すぎる魚が食べたい。】は、毎週金曜日に掲載します。

 

文・写真・イラスト:東雲輝之(しののめ てるゆき)/1985年生まれ、福岡県北九州市出身。猟師&ライター。狩猟や釣り、養蜂など、自然から食を得て楽しむ“キャッチ&イート”をメインテーマとしたアウトドアライター。ジビエの流通やニホンミツバチ養蜂などの活動も行う。著書「これから始める人のための狩猟の教科書」、「イラストマニュアルはじめての養蜂」など(共に秀和システム)。
ブログ「孤独のジビエ」http://kodokunogibier.blog.fc2.com/
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