東雲輝之【新鮮すぎる魚が食べたい。】-vol.10- 新感覚の潮干狩り『焼きマテガイ』

おいしい魚の条件のひとつは鮮度です。何より新鮮なのは、獲れたてピチピチの魚。自分で釣り上げた魚以上に新鮮なものはありません。そこで初心者でも楽しく釣って、おいしく食べる方法について連載でお届けします。指南役は、狩猟や釣り、養蜂など、自然から食を得て楽しむ“キャッチ&イート”をテーマに、幅広くご活躍中のアウトドアライター・東雲輝之さんです。

地上では梅の花が咲いても、海の中はまだ真冬。防波堤には魚の姿も見えず、釣り人にとっても冬枯れのシーズンが続きます。しかしこの時期、一足早く春の陽気を察知して砂浜には「マテガイ」と呼ばれる変わった貝が姿を現します。

『マテガイ』ってどんな貝?

マテガイは長細い殻を持った貝で、殻の左右から「にょきっ」と足と水管が突き出ています。とても奇妙な見た目をしていますが、実はアサリやハマグリと同じように、殻は真ん中から二つに割ることができる二枚貝の仲間で、同じく砂に穴を掘って巣穴を作ります。

習性もアサリやハマグリと同じように、潮が引いている時間帯は巣穴の中でじっとしており、潮が満ちてくると巣穴から飛び出して活動します。ただしマテガイは体を縦にして“ドリル”のように掘り進むため、アサリやハマグリよりも深いところまで潜ることができます。

何が必要なの?


マテガイを獲る方法は「潮干狩り」ですが、アサリやハマグリよりもずっと深いところに生息しているので、普通の潮干狩りのように砂を掘り返すのは非効率です。そこでマテガイ独特の“塩”を使った方法で攻めましょう。

用意する物は食塩、バケツ、エアポンプ、それと平たいスコップです。食塩は大量に使うので、安いものを1kgほど用意し、持ち運びしやすいようにドレッシングを入れる容器などに詰め替えておきましょう。

どうやって獲るの?

砂の深い場所に潜っているマテガイは、光や音で地表の様子を探ることができません。そのため巣穴に“濃い塩分”が入ってきたら、潮が満ちてきたと判断して地上に上るという習性があります。
 そこでこの習性を逆手にとって、マテガイの巣穴に塩を振りかけ、潮が満ちてきたと“勘違い”して飛び出したところを捕まえます。

1.まず、砂浜をスコップで2cmほど浅くすいて、巣穴を見つけましょう。砂浜にはカニやエビなどの巣穴がたくさんありますが、マテガイの巣穴はひし形をしているので、見た目で判別することができます。

2.巣穴を見つけたら穴の中にたっぷりと塩を注ぎ込みましょう。巣穴にマテガイがいる場合、数秒すると巣穴から海水がぶくぶくと吹き出してきます。変化がなければマテガイはいないので、次の穴に移動しましょう。

3.数十秒から数分(気温が高いと早い)たつと、巣穴から水管がニョキっと顔を出します。この水管は、地上で捕食者が待ち伏せしていないかを確認する“囮”なので触ってはいけません。もし水管を掴むと、トカゲの尻尾のように切れて、再び地中深くに逃げ込んでしまいます。

4.水管が出てしばらくたつと体が半分出てくるので、素早く根元を持って引き抜きましょう。このとき、あまり勢いよく引っ張ると足が切れてしまうので、慎重に引っ張りましょう。また、マテガイの力はけっこう強いので、巣穴に逃げ込まれないように注意しましょう。

獲って楽しい、食べて美味しい…でも鮮度には要注意!

マテガイ獲りは“もぐらたたき”みたいな楽しさがあるので、ついつい夢中になって遊んでしまいます。しかし獲ったマテガイを何十匹もバケツに入れっぱなしにしたり、陽の当たる場所に放置したりしないように注意しましょう。

マテガイは非常に酸欠に弱い貝で、バケツに入れっぱなしにしていると死んで酷い腐敗臭を放ちます。そこでバケツには酸欠防止用のエアポンプを付けて、バケツの海水も小まめに変えるようにしましょう。一般的に潮干狩りというと5月の連休がシーズンといわれていますが、マテガイの場合は鮮度を維持する都合上、3月ごろのまだ寒い時期がベストだといえます。

火加減にも要注意!「焼きマテガイ」

鮮度が良いマテガイはアサリやハマグリなど目じゃないほどの濃い旨味があり、大変美味です。また、砂を噛んでいることがほとんどないので、軽く塩水でゆすいだらすぐに調理することができます。

調理方法は塩ゆでやアヒージョ、炊き込みご飯、獲れすぎた場合は干して乾物にしても良いですが、「サッ」と酒を振って直火で焼くと、マテガイの香ばしさが引き立ちオススメです。

ただしマテガイの内臓は、「生すぎると生臭く、火を入れすぎるとボソボソになる」という難しさがあります。そこでマテガイを焼くときは、殻がしっかり焦げるまで焼いて火を止め、予熱で温めるようにして調理しましょう。茹でる場合は塩水から茹で始め、沸騰したら火を止めて10分ほど予熱で調理すると良いでしょう。

 

【新鮮すぎる魚が食べたい。】は、毎週金曜日に掲載します。

 

文・写真・イラスト:東雲輝之(しののめ てるゆき)/1985年生まれ、福岡県北九州市出身。猟師&ライター。狩猟や釣り、養蜂など、自然から食を得て楽しむ“キャッチ&イート”をメインテーマとしたアウトドアライター。ジビエの流通やニホンミツバチ養蜂などの活動も行う。著書「これから始める人のための狩猟の教科書」、「イラストマニュアルはじめての養蜂」など(共に秀和システム)。
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