東雲輝之【新鮮すぎる魚が食べたい。】-vol.11- エサ代0円で鯛を釣る『クロダイの昆布〆』

おいしい魚の条件のひとつは鮮度です。何より新鮮なのは、獲れたてピチピチの魚。自分で釣り上げた魚以上に新鮮なものはありません。そこで初心者でも楽しく釣って、おいしく食べる方法について連載でお届けします。指南役は、狩猟や釣り、養蜂など、自然から食を得て楽しむ“キャッチ&イート”をテーマに、幅広くご活躍中のアウトドアライター・東雲輝之さんです。

日本における魚の代表格とも言える「マダイ」は釣り人の間でも非常に人気の釣魚です。しかしマダイは高いお金を払って船で沖に出なければ釣れず、エサ代もかなりの金額になります。そこで鯛を釣りたいのであれば、身近な防波堤から「クロダイ」を、しかも “エサ代0円”で釣っちゃいましょう!

『クロダイ』ってどんな魚?

アマダイ、イシガキダイ、フエダイなど「タイ」と名前がつく魚は多々ありますが、本当の鯛(タイ科の魚)は日本に10種類ほどしかいません。そんな名ばかりのタイの中でもクロダイは正真正銘タイ科の魚であり、マダイとは親戚になります。

クロダイはその名の通り体色が黒く、マダイに比べて地味な印象を受けますが、よく見るとウロコは“いぶし銀”の輝きを放つシブさがあります。これが40cmを超える大物になってくると、ウロコの色はさらに黒みが増し、「黒鉄の鎧を着た武者」のような、威風堂々とした姿になります。

そんな見た目もカッコいいクロダイは、港や堤防、汽水域など身近な海に多数生息しており、釣り人の間では「カイズ」や「クロ」、「チヌ」といった地方名で愛されています。

どうやって釣るの?


クロダイは昔から釣魚として抜群の人気を誇っているので、オーソドックスなウキ釣りから、ルアー釣り、投げ釣りなどさまざまな釣り方があります。どの釣法でも楽しさと難しさがありますが、もしあなたがクロダイを的確に、さらに“エサ代0円”で釣りたいと思うのならば、早朝や日の入り前に挑む「ヘチ釣り」がベストです。

クロダイは食事の時間帯(日の出、日の入りごろ)になると、エサが豊富な防波堤などの“へり(縁)”に集まってきます。そこでエサを縁に沿ってスルスルと落としていき、食事中のクロダイを狙い撃つのがヘチ釣りです。

ヘチ釣りに使うエサはオキアミやゴカイなどの釣り具屋さんで買える生き物よりも、磯ガニやヤドカリ、フナムシ、牡蠣、ムラサキイガイ、フジツボといった、もともと釣り場に生息している生き物の方が効果的です。
 そこでヘチ釣りをするときは、日の出・日の入りの時間よりも少し早めに釣り場に到着し、現地の生き物を採取しておきましょう。貝をエサにする場合は殻付きのままでも構いませんが、少し割っておくと海中に匂いが広がり効果的です。

ヘチ釣りの仕掛けには、糸に蛍光チューブを等間隔に取り付けた目印を使います。これはエサが落ちていくスピードを観測するためで、エサが縁に沿ってゆっくりと落ちていくと、目印もゆっくりと沈んでいきます。もし目印が途中で「ピタッ」と止まったとしたら、「落ちている途中でクロダイがエサを食べた」と考えられるので、竿を振り上げて針をかけましょう。

タイ…だけれども、旨味を足して料理しよう


「腐っても鯛」ということわざがあるように、マダイは刺身に焼き物に煮つけに、とどんな料理でも美味しく食べることができます。同じタイ科のクロダイも、もちろん美味しく食べることができる…のは確かですが、クロダイの身はマダイに比べて水っぽく、塩焼きなどで食べるとマダイよりも格落ちする印象を受けてしまうはずです。そこでクロダイは旨味を足す“昆布〆”や“ヅケ”といった料理方法が最適です。

昆布〆は表面を拭いた昆布でクロダイの半身を挟み、ラップにしっかりとくるんで冷蔵庫で寝かせましょう。半日ほどすると昆布の旨味が身に染み込み、その味わいはマダイに勝るとも劣りません。

ヅケにするときは、刺身にしたクロダイを、醤油、みりん、清酒を3:1:1で混ぜ、小さじ半分の砂糖を加えた漬けだれに、冷蔵庫で一晩漬けましょう。お好みで刻みノリやすりごま、わけぎなどを加えれば、よりバリエーション豊かに味わうことができます。
 なお、昆布〆やヅケを作るときは長く漬けすぎないように注意しましょう。あまり長く漬けすぎると、新鮮なクロダイのコリコリ感が失われて、“何かよくわからない魚”になってしまいます。

 

【新鮮すぎる魚が食べたい。】は、毎週金曜日に掲載します。

 

文・写真・イラスト:東雲輝之(しののめ てるゆき)/1985年生まれ、福岡県北九州市出身。猟師&ライター。狩猟や釣り、養蜂など、自然から食を得て楽しむ“キャッチ&イート”をメインテーマとしたアウトドアライター。ジビエの流通やニホンミツバチ養蜂などの活動も行う。著書「これから始める人のための狩猟の教科書」、「イラストマニュアルはじめての養蜂」など(共に秀和システム)。
ブログ「孤独のジビエ」http://kodokunogibier.blog.fc2.com/
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