東雲輝之【新鮮すぎる魚が食べたい。】-vol.13- 解禁直後なら初心者でも釣れる『ヤマメの塩焼き』

おいしい魚の条件のひとつは鮮度です。何より新鮮なのは、獲れたてピチピチの魚。自分で釣り上げた魚以上に新鮮なものはありません。そこで初心者でも楽しく釣って、おいしく食べる方法について連載でお届けします。指南役は、狩猟や釣り、養蜂など、自然から食を得て楽しむ“キャッチ&イート”をテーマに、幅広くご活躍中のアウトドアライター・東雲輝之さんです。

桜の花も満開を迎え、いよいよ春本番。外に遊びに出るのも大分気軽になったこの時期は、萌える山の空気も清々しい渓流釣りに出かけましょう。渓流釣りはかなり難度の高い釣りではありますが、解禁直後であれば渓流の女王「ヤマメ」を数釣りすることも夢ではありません。

『ヤマメ』ってどんな魚?

渓流の魚として代表的なヤマメは、「サクラマス」と呼ばれる魚のうち、一生を淡水で過ごす個体を指します。海に回遊するサクラマスは50cmを超える大きさに成長して、サケのように銀色の魚体に変化していきますが、渓流で過ごすヤマメは30cm程度で成長が止まり、魚体は桜のような薄いピンクの下地に『パーマーク』と呼ばれる黒い斑点が浮かび上がります。

生息域は北海道から関東以北の太平洋側と日本海側全域、中国地方の北部、大分を除く九州とバラついていますが、ヤマメのいない流域には「アマゴ(サツキマス)」と呼ばれるよく似た魚が棲んでおり、ヤマメと同じ方法で釣ることができます。

どこで釣るの?

ヤマメ釣りは過酷です。渓流釣りの道具とキャンプ用品をリュックに背負い、道なき道を、ときにはロッククライミングを駆使しながら進んでいきます。

釣り場に着いても気を抜いてはいけません。警戒心の強いヤマメは、石が「ゴトッ」と擦れる音がしただけでも逃げてしまうので、釣り場では慎重に歩かなければなりません。もちろんおしゃべりもNGです。

このように本格的な渓流釣りは、長い釣り経験とアウトドアの技術が要求される奥深い世界ですが、「とりあえずヤマメ釣りを体験したい!」と思われるかたは「管理釣り場」に行きましょう。

管理釣り場は地元の漁協が管理している渓流で、一日遊漁券を購入すれば誰でも気軽に釣りを楽しむことができます。管理釣り場では養殖した魚を放流しているため、特に解禁日(多くの場所では4月1日)直後であれば、まだ警戒心の緩いヤマメを比較的簡単に釣ることができます。

どうやって釣るの?

ヤマメ釣りはルアーやフライと呼ばれる道具を使った方法がありますが、初めての方は餌を使うのがおすすめです。ヤマメの餌釣りでは、のべ竿と呼ばれるリールのないシンプルな竿に髪の毛のように細い糸と針を使って、糸には小さなリボンを結びます。餌はカワムシやブドウ虫(蛾の幼虫)といった生きた虫がよく使われますが、市販のイクラでも十分釣ることができます。

ヤマメなどの渓流魚は、川上から流れてくる餌を狙っているので、餌の付いた針をヤマメが潜んでいそうな場所の少し川上に落とします。ヤマメは流れが狭まり白い泡が立っているような“瀬(せ)”の川底に潜む魚ですが、放流したての養殖ヤマメたちは、ひとまず水深が深く流れの緩やかな“淵(ふち)”に集まっていることが多いので、重点的にそのような場所を狙うとよいでしょう。

餌を落としたら目印が餌の真上にくるように、流れに合わせて竿を操作します。流している途中で目印がピタっと止まったり、急に沈むなどの変化が現れたら、ヤマメが餌に食いついた可能性があるので、素早く竿を合わせて針をかけましょう。ヤマメが餌をくわえるのは“0.3秒”とも言われています。目印の微妙な変化を見逃さないように、集中して挑戦しましょう。

サケ科の魚は総じて頭が美味い。『ヤマメの塩焼き』

淡水に住む魚には少なからず特有の“川魚臭さ”がありますが、新鮮なヤマメには嫌な臭いは微塵もありません。身は淡泊ながらもサケに似た特有の旨味があり、爽やかな渓流を彷彿させるような繊細さがあります。

料理でおすすめなのは、やはり定番の塩焼きです。ヤマメを焼くときは、まず塩を振って小一時間ほど寝かせて余分な水を抜くと、旨味が引き立ちます。また焼き網に載せるときに、魚の表面にお酢を薄く塗ると、皮が網にくっつかずにきれいに焼くことができます。

焼き魚の鉄則ですが、火加減は「強火の遠火」で焼きましょう。20cm程度のヤマメであれば遠赤外線でじっくり焼くことで、骨まで柔らかく食べることができます。また好き嫌いがわかれると思いますが、できれば頭も一緒にいただきましょう。サケの仲間は総じてコラーゲンのたっぷり詰まった頭が抜群に美味いのです。
 

【新鮮すぎる魚が食べたい。】は、毎週金曜日に掲載します。

 

文・写真・イラスト:東雲輝之(しののめ てるゆき)/1985年生まれ、福岡県北九州市出身。猟師&ライター。狩猟や釣り、養蜂など、自然から食を得て楽しむ“キャッチ&イート”をメインテーマとしたアウトドアライター。ジビエの流通やニホンミツバチ養蜂などの活動も行う。著書「これから始める人のための狩猟の教科書」、「イラストマニュアルはじめての養蜂」など(共に秀和システム)。
ブログ「孤独のジビエ」http://kodokunogibier.blog.fc2.com/
Twitter:@rakurou21