東雲輝之【新鮮すぎる魚が食べたい。】-vol.15- 忘れちゃいけないエビ油『テナガエビチャーハン』

おいしい魚の条件のひとつは鮮度です。何より新鮮なのは、獲れたてピチピチの魚。自分で釣り上げた魚以上に新鮮なものはありません。そこで初心者でも楽しく釣って、おいしく食べる方法について連載でお届けします。指南役は、狩猟や釣り、養蜂など、自然から食を得て楽しむ“キャッチ&イート”をテーマに、幅広くご活躍中のアウトドアライター・東雲輝之さんです。

桜の花も散り、日中はうっすらと汗ばむ陽気になった今日このごろ、「そろそろ釣りに出かけてみるかな?」と海に足を向ける方も多いでしょう。しかし海の中はいまだ真冬。海風もまだまだ冷たく、思ったように釣果は上がりません。そこでこの時期は、ちょっと河口で「テナガエビ」釣りはいかがでしょうか。

『テナガエビ』ってどんなエビ?

腕の太さほどもある立派なイセエビから、小指の先ほどのサクラエビまで、一言で「エビ」といってもその姿形はさまざまです。中でもこのテナガエビは2本の長い“手”の先にカニのようなハサミが付いている不思議な姿が特徴的なエビです。日本には6種類ほどテナガエビが生息しており、南西部(九州、四国)に行くほど体が大きくなり、その体色も変わってきます。棲んでいる場所によって“手”の長さも長かったり短かったりするテナガエビですが、釣り方や味わいに違いはありません。

どこで釣れるの?

テナガエビは暖かい地域の河川や湖沼に生息しています。特に4月ごろになると、産卵を控えた大きな個体が海水と川の水が混じる汽水域に集まってくるので、釣りやすくなります。またテナガエビは夜行性で、昼間は岸近くのテトラポッドや岩の陰に隠れてじっとしているので、アクセスしやすく足場の良い岸壁からの釣りが気軽に楽しめます。

どうやって釣るの?

エビの頭を見たことがある人ならご存知の通り、エビはとても小さな口をしています。よって釣りには“エビ針”と呼ばれる爪先ほどの小さな針を使いましょう。足元で釣りをするので、竿は1~2m程度でかまいません。1000円程度の安い竿や、何なら細い棒でもかまいません。餌はイトミミズや赤虫がよく使われますが、赤い色の餌なら何でもよく食べるので、カニカマを使う人もいます。

釣る場所は河川敷の岸壁ですが、河口付近は潮の満ち引きで水深が大きく変わるので、満潮時付近を狙うようにしましょう。餌を付けた針を足元に落としたら、ウキに変化が出るまでしばらく待ちます。

テナガエビが餌に気づくと、まずハサミで細かくちぎって口に運ぶのでウキが「ぴょこぴょこ」と動きます。このタイミングで竿を引いてしまうと針がかかっていないことが多いので、まだじっくり待ちましょう。餌を食べ終わると巣に戻ろうとするのでウキが「ススス…」と動きます。このタイミングで竿を引いて釣り上げますが、テナガエビの口は小さいので、あまり力を入れすぎないようにゆっくり引っ張りましょう。

ワタ抜きは口からつま楊枝で

一般的にお店に並んでいる養殖のエビは、出荷される前に絶食期間を設けて“泥吐き”をします。そこで天然のテナガエビも水槽などで2~3日飼って泥吐きをしましょう。しかし「それはちょっと面倒くさい!」という人は、口から背ワタを引っ張り出すという少々強引な方法でもOKです。

まずテナガエビを仰向けに持って、脚と脚の間を親指で強く押します。すると口が開くので、つま楊枝を口の中に入れてグルっと1回まわしましょう。このままゆっくりとつま楊枝を引いていくと、胃袋ごと背ワタがズルズルと出てきます。初めは大変ですが、慣れてくれば牡蠣の殻を開けるぐらい簡単に取り出すことができます。

エビ油を捨ててはいけない

テナガエビの料理としては、殻が柔らかいので素揚げが一番です。下処理をしたテナガエビに塩を振りかけて、高温の油でサッと揚げましょう。香ばしく揚がったテナガエビは長い“手”の先までパリパリと美味しくいただくことができます!

…と、普通ならここで話が終わってしまいますが、テナガエビ料理では忘れてはいけないもう一人の主役が存在します。それは「テナガエビを揚げた後の油」です。テナガエビを揚げたときに出る赤い色は、アスタキサンチンと呼ばれる油に溶ける色素で、とても香ばしい香りがします。そこでこの油は捨てずに料理に利用しましょう!

赤い色素はご飯に混ぜることでターメリックのような明るい黄色になります。そこでテナガエビの身を細かく刻み、油と一緒にご飯と炒めてチャーハンにしましょう。テナガエビの香りがお米一粒一粒にコーティングされ、高級中華料理店のエビチャーハンに匹敵する味わいになります。

ちなみに、テナガエビに限らず普通のエビやカニからも、油と混ぜることで色素を抽出できます。フレンチには甲殻類の殻とバターを混ぜて作る「ブール・ド・クリュスタセ」という香味バターがあります。

 

【新鮮すぎる魚が食べたい。】は、毎週金曜日に掲載します。

 

文・写真・イラスト:東雲輝之(しののめ てるゆき)/1985年生まれ、福岡県北九州市出身。猟師&ライター。狩猟や釣り、養蜂など、自然から食を得て楽しむ“キャッチ&イート”をメインテーマとしたアウトドアライター。ジビエの流通やニホンミツバチ養蜂などの活動も行う。著書「これから始める人のための狩猟の教科書」、「イラストマニュアルはじめての養蜂」など(共に秀和システム)。
ブログ「孤独のジビエ」http://kodokunogibier.blog.fc2.com/
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