【新鮮すぎる魚が食べたい。】-vol.16- 食べてはいけない魚たち

おいしい魚の条件のひとつは鮮度です。何より新鮮なのは、獲れたてピチピチの魚。自分で釣り上げた魚以上に新鮮なものはありません。そこで初心者でも楽しく釣って、おいしく食べる方法について連載でお届けします。指南役は、狩猟や釣り、養蜂など、自然から食を得て楽しむ“キャッチ&イート”をテーマに、幅広くご活躍中のアウトドアライター・東雲輝之さんです。

自分の手で釣りあげた魚は、スーパーで買ってきただけの魚とは違う特別な味わいがあります。…もちろん、親の欲目ならず“釣り人の欲目”というのもあるのですが、それでも獲れたての新鮮な魚を食べられるのは、釣りの醍醐味と言えるでしょう。しかし、世の中のすべての魚が食べられるわけではありません。それは「おいしい」とか「おいしくない」ではなく、食べると“中毒の危険性”があるということです。

フグのテトロドトキシンは、手足がしびれて呼吸困難に!

食べて危険な魚の代表格と言えば、皆さんもよくご存知のフグです。フグは釣りをしているとよくお目にかかる魚で、クサフグやショウサイフグ、アカメフグ、キタマクラなど、釣れるフグのほぼすべてに毒があります。

フグの毒はテトロドトキシンと呼ばれる化学物質で、口にすると手足が麻痺し、重症の場合、呼吸が停止して死に至ります。解毒剤もないので、釣れたフグを自宅で調理するのは絶対にやめましょう。

ちなみにテトロドトキシンは筋肉の動きを弱める毒なので、8時間もすれば体から完全に排出されて後遺症もなく回復します。よって万が一フグで当たってしまった場合は、救急車が来るまで人工呼吸を続けていれば、命が助かる可能性は高くなります。

イシガキダイのシガトキシンは、水に触れると痛みが襲う!

イシガキダイは、料亭で出てくると目玉が飛び出るほど高級な魚です。釣りの世界でも1日に1匹でも釣れたらハッピーになれる、釣り人垂涎の魚なのですが、南の海(沖縄や鹿児島)で大きなイシガキダイが釣れたときは涙を呑んでリリースしたほうがよいでしょう。

南の暖かい海に生息しているイシガキダイで、長年生きた老魚の中には、筋肉内にシガトキシンと呼ばれる恐ろしい毒を持つものがあります。このシガトキシンを口にすると、全身を針で突かれたようなチリチリとした痛みが走り、さらに水のような冷たい物に触れるとドライアイスを押し付けられたような激痛が走ります。交感神経を阻害するシガトキシンには解毒剤がないので、体から毒が消えるまで、数日、長ければ1カ月以上も痛みに苦しむことになります。

シガトキシンを含むシガテラ毒は、イシガキダイの他に、ハタ類(バラハタ、マダラハタなど)、ドクウツボ、オニカマスなどにも含まれていることがあるので注意しましょう。

アオブダイのパリトキシンは、筋肉が溶ける!?

アオブダイやソウシハギ、ハコフグといった魚には、パリトキシンと呼ばれる猛毒が含まれていることがあります。このパリトキシンはフグのテトロドトキシンのおよそ50倍もの強い毒性を持っており、少量でも口にすると筋肉(横紋筋)が溶けてしまい、激しい筋肉痛や麻痺、痙攣が起き、最悪の場合、10時間から数日で死に至ります。

なお、パリトキシンは魚の肝臓に溜まる毒なので、アオブダイやソウシハギなどは身だけなら安全に食べることができます。もちろんこれらの魚をさばくときは肝臓を傷つけてはいけないので、包丁の腕に自信がなければいけません。

旬を外した貝は要注意!

潮干狩りのシーズンから外れる“夏”に獲れた貝は、食中毒のリスクがあるので食べないほうがよいでしょう。アサリやムラサキイガイ(ムール貝)、カキといった普段から目にする貝の中は、夏場に多く発生する特殊なプランクトンを大量に食べて毒化する場合があります。この毒は貝毒と呼ばれ、テトロドトキシンと同じように呼吸困難を引き起こす麻痺性貝毒や、ひどい腹痛と嘔吐を伴う下痢性貝毒などがあります。潮干狩りのシーズンでは貝にこれらの毒が無いか、行政や業界が調査するので安全ですが、シーズンオフにはこれらの情報は出回らないので、十分に注意しましょう。

またバイ貝やツブ貝といった巻貝の内臓は、テトラミンと呼ばれる毒を持っていることがあるので、見慣れない貝を食べるときはよく知っている人に相談するようにしましょう。

マルソウダの刺身は絶品!…なんだけれども

毒があるわけではないのですが、生で食べると危険な魚にマルソウダ(ソウダガツオ)がいます。この魚は主にカツオ節の原料として使われる魚なのですが、主な産地の高知県では生食されることもあり、普通のカツオを遥かに凌ぐ旨味と、プリプリの食感(高知弁では「ぐびぐび」と言います)を味わうことができます。ただしこのマルソウダは傷むのが非常に早い魚で、少しでも鮮度が落ちるとヒスタミンと呼ばれる成分が高くなり、ひどい頭痛や下痢を引き起こします。

かくいう私も、高知の友人から「絶対に刺身はやめちょきーね!」と言われたマルソウダをタタキにして食べ、天にも昇る美味しさを味わったことと引き換えに、翌2日間、下痢地獄を味わったことがあります。食欲は身を亡ぼすこともあります。

 

【新鮮すぎる魚が食べたい。】は、毎週金曜日に掲載します。

 

文・写真・イラスト:東雲輝之(しののめ てるゆき)/1985年生まれ、福岡県北九州市出身。猟師&ライター。狩猟や釣り、養蜂など、自然から食を得て楽しむ“キャッチ&イート”をメインテーマとしたアウトドアライター。ジビエの流通やニホンミツバチ養蜂などの活動も行う。著書「これから始める人のための狩猟の教科書」、「イラストマニュアルはじめての養蜂」など(共に秀和システム)。
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