東雲輝之【新鮮すぎる魚が食べたい。】-vol.17- 釣り半夜、捌き三年、焼き一生『ウナギの蒲焼』

おいしい魚の条件のひとつは鮮度です。何より新鮮なのは、獲れたてピチピチの魚。自分で釣り上げた魚以上に新鮮なものはありません。そこで初心者でも楽しく釣って、おいしく食べる方法について連載でお届けします。指南役は、狩猟や釣り、養蜂など、自然から食を得て楽しむ“キャッチ&イート”をテーマに、幅広くご活躍中のアウトドアライター・東雲輝之さんです。

春の暖かさから次第に夏の暑さに移り変わるこの季節、新年度の忙しさも一段落し、ちょっと疲れが溜まってきたのではないでしょうか? 今はまだ大丈夫でも、気温と湿度が上がった途端に体調は崩れてしまいがち。そこで“春の土用”のこの時期に「ウナギ」を食べて、来たるべき暑い季節に備えましょう。

『ウナギ』ってどんな魚?

太古の時代より日本人にはなじみの深いウナギですが、いつ捕まえてもお腹の中に卵が入っていないため、どうやって生まれてくるのかわからない不思議な魚と言われていました。

2006年に日本の研究チームによりマリアナ諸島の特定の海域で、集団で産卵することが判明しましたが、未だにどのような条件でお腹の中に卵を作るようになるかが不明瞭なため、卵から育てる“完全養殖”は今なお難しいとされています。

どこで釣れるの?

マリアナ諸島で生まれ、そこに戻って卵を産むウナギですが、育つ場所は2000kmも離れた日本です。なぜわざわざそんな長旅をするのか不明ですが、難しい話は抜きにして、ウナギは私たちのすぐ近くの河川や湖沼、河口など、いたるところに生息しています。

ウナギは夜行性の動物で、日が暮れると水草の間や石の隙間、流木の中などに作った巣穴からニュルニュルと出てきて餌を探して回ります。よって、釣るのは夕方から日没後2、3時間の間に行う“半夜釣り”になります。

どうやって釣るの?

ウナギはちょっとした隙間を巣穴にするため、大きな河川や湖沼よりも、どちらかと言うと農業用の水路や、街中を流れる小川にも多く生息しています。そこで仕掛けは、足元にポイっと投げるような物で構いません。ただし半夜釣りでは、暗くなって竿先が見えづらいので、竿先に鈴やケミホタルと呼ばれる蛍光性のアイテムを付けておきましょう。

餌は魚の切り身や、釣具屋さんに売っているアオイソメなど、比較的何でも釣れますが、やはり一番効果的なのはドバミミズです。ドバミミズは畑の隅に積まれている腐葉土などの中に生息していますが、山と道路の間にある側溝によくたまっています。ミミズは色々な魚の餌になる万能餌ですが、釣具屋さんで買うと鮮度が良くないうえ価格もエラく高いので、 是非“Myミミズポイント”を探しておきましょう!

あたりが出たら素早く巻いて!

半夜釣りは17時過ぎぐらいから準備を始めて、暗くなりはじめる18時には餌を投入できるように段取りしておきましょう。餌を投入してからは特にやることはありませんが、ウナギが針にかかると鈴が「リリリン!!」とけたたましく鳴るので、急いでリールを巻きあげます。ウナギは危険を感じると周囲の物に巻き付く習性があるため、のんびりしていると水草などに絡まってしまいます。こうなるとテコでも動かなくなるので、鈴が鳴ったら急いで釣りあげましょう。

背開きに挑戦しよう

場所と時間さえ選べば初心者でも釣れるウナギですが、「捌きは三年の修業が必要」と言われるように、ウナギの下処理はかなりの熟練技術が必要になります。その理由の1つが「高い生命力」で、ウナギは水から上げられても何時間も生きている魚なので、まな板の上に乗せても「のったん! のったん!」と暴れまわります。プロのウナギ料理人なら、一瞬のうちに急所を突いて捌くのですが、我々一般人が真似できるような芸当ではないので、ウナギを1時間ほど冷凍庫に入れて“仮死状態”にしましょう。冷凍することで、身の鮮度は少し落ちますが、生きている状態よりは格段に捌きやすくなります。

春の土用にウナギを食べよう

捌くのに3年の修業が必要なウナギ料理ですが、正確には「捌き三年、串打ち八年、焼き一生」と言われ、ウナギはとにかく焼き方が難しい魚です。その理由の1つが身のにおいで、焼き方が甘いと独特の川魚臭さが鼻に付き、焼きすぎると脂が落ちてコゲコゲのカスカスになってしまいます。

臭みを飛ばしながら脂を程よく残すテクニックには、関東流や関西流、浜松流、名古屋流など様々あり、奥深い世界です。私のような素人が解説するのはおこがましいので詳しい解説は控えておきますが、1つアドバイスとして言えるのは「家でウナギを焼くときは窓を全開にしましょう」ということです。ウナギを焼くときに出る煙は一般家庭の換気扇ではカバーしきれないほど猛烈なので、窓を開けておかないと火災報知器がなります。私は過去3回アパートの警報器を鳴らして、管理人さんに怒られています。



余談ですが、ウナギは夏バテ予防として、“夏の土用”(2018年は7/20~8/6)に食べるのが定番ですが、本来の五行思想から言うと、食べるのは“春の土用”(4/17~5/4)になります。もともと土用とは「次の季節に移り変わる準備期間」なので、ウナギのような精が付く食材は、夏の暑さに備えるために春の土用に食べると良いとされています。2018年の春土用の丑の日は4/27(金)。皆さんも厳しい夏に備えて、今から精の付く食材を食べて、体の準備を始めておきましょう。

 

【新鮮すぎる魚が食べたい。】は、毎週金曜日に掲載します。

 

文・写真・イラスト:東雲輝之(しののめ てるゆき)/1985年生まれ、福岡県北九州市出身。猟師&ライター。狩猟や釣り、養蜂など、自然から食を得て楽しむ“キャッチ&イート”をメインテーマとしたアウトドアライター。ジビエの流通やニホンミツバチ養蜂などの活動も行う。著書「これから始める人のための狩猟の教科書」、「イラストマニュアルはじめての養蜂」など(共に秀和システム)。
ブログ「孤独のジビエ」http://kodokunogibier.blog.fc2.com/
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