東雲輝之【新鮮すぎる魚が食べたい。】-vol.19- 貝掘り界の救世主?『ホンビノス・ビアンコ』

おいしい魚の条件のひとつは鮮度です。何より新鮮なのは、獲れたてピチピチの魚。自分で釣り上げた魚以上に新鮮なものはありません。そこで初心者でも楽しく釣って、おいしく食べる方法について連載でお届けします。指南役は、狩猟や釣り、養蜂など、自然から食を得て楽しむ“キャッチ&イート”をテーマに、幅広くご活躍中のアウトドアライター・東雲輝之さんです。

初夏の日差しが気持ちのいい5月。休みの日は家族総出で潮干狩りに出かけてみるのはいかがでしょうか? 

潮干狩りといえばアサリやハマグリですが、これらの貝は近年減少が激しく、せっかく潮干狩りにやって来たのに、家族で数十個ぐらいしか獲れなかったということもよくあります。しかし、今、漁業界の救世主(?)とも言われている「ホンビノスガイ」であれば、ザクザク獲れて、しかも美味しい貝料理が楽しめます。

『ホンビノスガイ』ってどんな貝?

ホンビノスガイは、北アメリカ大陸の太平洋側に生息している貝で、もともと日本には生息していなかった外来種です。しかし1990年代ごろ、北米からの船にまぎれて積まれていた稚貝が太平洋を越えて日本の海に放たれ、今では日本各地の砂浜で繁殖するようになりました。

ホンビノスガイは1998年に東京湾の幕張で初めて生息が確認されて以降、しばらくは「大きくて気持ち悪い貝」として“やっかいもの”扱いをされていました。
 しかし、もともとアメリカではクラムチャウダーなどに使われるメジャーな食用貝であったことや、2000年代初めごろからアサリやハマグリが激減しはじめたことから、現在では「漁業界の救世主!」や「江戸前新名物!」などと、なかなかの評価を受けています。

どこで獲れるの?

ホンビノスガイ掘りは「ふなばし三番瀬海浜公園」や「千葉ポートタワー」が有名です。大阪湾などでも獲れるようですが、表立った宣伝はされていないようです。

潮干狩りは、潮が大きく引いて沖の方まで貝堀りができる大潮の日を選びましょう。「潮見表」を使えば、その日の何時に潮が大きく引くかを調べることができます。

どうやって掘るの?

潮干狩りに必要な道具は、くまでと貝掘りネットです。どちらも100円ショップに売っているので、家族全員分を揃えておきましょう。
 なお、「じょれん」と呼ばれる柄の長いカゴのような道具を使っている人もいますが、これはレジャーの貝掘りでは使用を禁止されていることが多いので注意しましょう。

足元は長靴を履くのが普通ですが、かがんでずっと貝を掘っていると足首が痛くなるうえ、ぬかるみに足が埋まって、長靴の中がダッポンダッポンになります。かといって、素足やサンダルだと、貝の殻や毒クラゲなどを踏みつける危険性があります。
 そこで足元は、シュノーケルで履くマリンシューズがおすすめです。また、長靴とズボンが一体となった胴長(ウェダー)があれば、帰る時、車に乗る前に真水で丸ごと洗えるので楽チンです。
 
潮干狩り場に着いたら、まずはベテランおじさん・おばさんを探しましょう。
 砂浜に生息している貝は、広く分散せずにある程度固まっているので、むやみやたらに掘り返しても漁果は上がりません。
 そこで潮干狩り場には必ず、「毎週貝掘りに来ているベテランさん」がいるので、装備や服装、顔の日焼け具合をよく観察して、その人について行きましょう。
 ホンビノスガイは群れにさえ当たれば、あとは適当に掘り返すだけでバケツ1杯分はすぐに獲れます。

ホンビノスガイは生命力が強く、酸素濃度が低い水でも長く生きられるので、マテガイのようにポンプを使って空気を送り込む必要はありません。海水から揚げても十数時間は生きるので、水気を切ってそのまま持ち帰りましょう。

砂抜きをする

ホンビノスガイを持ち帰ったら、いったん真水で表面を綺麗に洗います。このとき、殻が割れている貝を見つけたら、すべて取り除きましょう。

次に海水と同じ4%程度の塩水を殻の下側が浸かるぐらい入れて“砂抜き”をします。
 ホンビノスガイはアサリやバカガイと比べて、あまり砂を噛んでいることはありませんが、それでもしばらく塩水に浸けておくと、モヨモヨした粘着物と一緒に砂を吐き出します。
 ある程度水が濁ってきたら、再び真水で洗って塩水に浸けましょう。この作業を2回ほど行うと、砂を綺麗に抜くことができます。

出汁を余すところなく楽しむ「ホンビノス・ビアンコ」

ホンビノスガイは一時期、「白ハマグリ」や「大アサリ」といった名前で売られていましたが、その旨味や香りは両者に比べてだいぶ「大味」です。しかし、身から染み出る出汁を余すところなく利用した「ホンビノス・ビアンコ(ホンビノスの白ワイン風味)」は、ハマグリやアサリに勝るとも劣らない味わいになります。

まず、刻んだニンニクをオリーブオイル大さじ3で、焦がさないようにじっくり炒めます。油にニンニクの香りが移ったら、表面を綺麗に拭いたホンビノスガイを殻ごと入れます。よく温まったら、半カップ分の白ワインを注いでフタをし、蒸していきましょう。

ホンビノスガイの口が開いたらフライパンから取り出して、むき身にします。ボンゴレビアンコ(アサリの白ワイン風味)の場合は殻ごとお皿に盛りますが、ホンビノスガイは殻が厚くて邪魔なので、先に取っておいた方がよいです。

むき身ができたら、ホンビノスガイを蒸したフライパンをそのまま使って、キャベツやアスパラガスなどの春野菜を炒めます。野菜にある程度火を通したら、最後にホンビノスのむき身と、殻に溜まった出汁を入れて、少し温めたら完成です。

ホンビノスガイを焼き蒸しにしたフライパンには、殻から染み出たうま味成分が残っているので、絶対に洗ったり拭きとったりしてはいけません。
 また、ホンビノスガイは火を入れすぎると、縮んでしまうので、むき身にした後は極力火を入れないようにしましょう。

 

【新鮮すぎる魚が食べたい。】は、毎週金曜日に掲載します。

 

文・写真・イラスト:東雲輝之(しののめ てるゆき)/1985年生まれ、福岡県北九州市出身。猟師&ライター。狩猟や釣り、養蜂など、自然から食を得て楽しむ“キャッチ&イート”をメインテーマとしたアウトドアライター。ジビエの流通やニホンミツバチ養蜂などの活動も行う。著書「これから始める人のための狩猟の教科書」、「イラストマニュアルはじめての養蜂」など(共に秀和システム)。
ブログ「孤独のジビエ」http://kodokunogibier.blog.fc2.com/
Twitter:@rakurou21