東雲輝之【新鮮すぎる魚が食べたい。】-vol.22- ゴチになります!『メジナの焼霜造り』

おいしい魚の条件のひとつは鮮度です。何より新鮮なのは、獲れたてピチピチの魚。自分で釣り上げた魚以上に新鮮なものはありません。そこで初心者でも楽しく釣って、おいしく食べる方法について連載でお届けします。指南役は、狩猟や釣り、養蜂など、自然から食を得て楽しむ“キャッチ&イート”をテーマに、幅広くご活躍中のアウトドアライター・東雲輝之さんです。

三寒四温を繰り返していた海水温も6月に入ると安定しはじめて、次第に海の中はにぎわいを見せてきます。この時期によく釣れる「メジナ」は、釣って楽しい、食べて美味しい魚ですが、大物を釣るとなると、「ゴチになるか・なられるか」という、真剣勝負になります。

『メジナ』ってどんな魚?

海の色が溶け込んだような美しいコバルトブルーをしたメジナは、その引きの強さと味の良さで、釣りの世界では人気の高い魚です。しかし、死んでしまうとすぐに目は白く濁り、魚体はくすんだ色になってしまうため、鮮魚として扱われることはほとんどなく、その本来の姿は、まさに知る人ぞ知る魚といえます。

なお、この魚は関東では「メジナ」、関西では「グレ」、九州では「クロ」などの様々な地方名を持っています。

どこで釣れるの?

メジナは海底にゴツゴツした岩が多い場所に棲んでおり、ビーチのような海岸にはまったくいません。そこで、釣りをする場所は岬などの岩場が多い“磯”がよいでしょう。ただし磯は、海の流れが急で、万が一、海に落ちてしまうと死の危険性すらあるので、初心者のうちはテトラポッドが多く積み上げられた堤防のような場所から始めましょう。

どうやって釣るの?

メジナは非常に警戒心が強く、目が良い魚なので、ルアーで釣ることはできません。よって、小さな針の先に餌を付けて、ウキの浮き沈みで当たりを取る「フカセ釣り」と呼ばれる方法で釣りましょう。

フカセ釣りには必ず“撒き餌”が必要になるので、竿やリールなどに加えて、撒き餌用の道具もそろえておかなければなりません。撒き餌の道具には、餌を入れておくバッカンと、餌を投げ飛ばすヒシャク、そして餌を混ぜるマゼラーが必要です。一見、どれもホームセンターに売られているような物で代用できそうですが、海水に対する耐久性や扱いやすさを考えると、釣具屋さんで専用の物を購入したほうが断然良いです。

撒き餌は、市販の集魚剤をベースに、集魚効果をアップさせる“アミエビ”や、餌に粘りを出す“米ぬか”、海底に溜まって、そこに魚たちを釘付けにしておく“押し麦”、キラキラ光って魚たちを興奮させる“牡蠣殻”など、様々な餌がミックスして作られ、配合する餌の比率は、釣りたい魚や、その日の天候、潮の流れの速さなどによって変わってきます。餌の種類は、混ぜれば混ぜるほど釣れる可能性をアップさせることができますが、当然、費用も跳ね上がります。

海に撒き餌を投入すると、まずは小さな魚たちが気付いて寄ってきます。このとき小魚たちは仲間を呼び寄せる“採餌音”を出すので、次第に大きな魚たちも寄ってきます。釣り針には撒き餌と同じ種類の餌を付けて海に投げ込みますが、撒き餌と同じ場所に付け餌を投入すると、小魚に食べられてしまうため、潮の流れの上流に投入して、ゆっくり沈めながら、大型が潜んでいる海底を狙うようにしましょう。

メジナ釣りでは撒き餌をケチってはいけません。警戒心の強いメジナが岩の陰からユラユラと姿を現すまで、辛抱強く小魚たちに餌を与え続けましょう。「魚たちにご馳走したお金で、刺身定食をビール付きで食べられたのに。」といった失敗は“釣り師あるある”ですが、血涙が乾くころには、きっと大型メジナが竿を曲げてくれるはずです。

知られざる美味! 「メジナの焼霜造り」

お魚たちへの“ゴチ”の壁を乗り越えて、見事に脂が乗った40cmを超えるメジナを釣り上げることができたのなら、その日は迷わず“焼霜造り”で祝杯をあげましょう!

メジナは皮目に旨みのある脂がジットリと付いていますが、固い皮は刺身では食べにくいものです。そこで、身に塩を薄く振りかけて引き締め、皮をバーナーでサッと炙った焼霜造りが最高です。



釣りの腕前が足りず、手のひらサイズ(20cm程度)しか釣れなかったときは、一夜干しがオススメです。作り方は簡単で、塩分12%ほどの濃いめの塩水に30分ほど漬け、ベランダで干しておけばOKです。焼霜造りほどではありませんが、ほどよく皮の風味を残したまま、凝縮されたメジナの旨味を楽しむことができます。



 

【新鮮すぎる魚が食べたい。】は、毎週金曜日に掲載します。

 

文・写真・イラスト:東雲輝之(しののめ てるゆき)/1985年生まれ、福岡県北九州市出身。猟師&ライター。狩猟や釣り、養蜂など、自然から食を得て楽しむ“キャッチ&イート”をメインテーマとしたアウトドアライター。ジビエの流通やニホンミツバチ養蜂などの活動も行う。著書「これから始める人のための狩猟の教科書」、「イラストマニュアルはじめての養蜂」など(共に秀和システム)。
ブログ「孤独のジビエ」http://kodokunogibier.blog.fc2.com/
Twitter:@rakurou21