【新鮮すぎる魚が食べたい。】-vol.27- 夜風にゆれる『スズキのカルパッチョ』

おいしい魚の条件のひとつは鮮度です。何より新鮮なのは、獲れたてピチピチの魚。自分で釣り上げた魚以上に新鮮なものはありません。そこで初心者でも楽しく釣って、おいしく食べる方法について連載でお届けします。指南役は、狩猟や釣り、養蜂など、自然から食を得て楽しむ“キャッチ&イート”をテーマに、幅広くご活躍中のアウトドアライター・東雲輝之さんです。

7月に入り夜風が気持ちのいい季節になると、夜の防波堤には海面をポツポツと輝かせる電気ウキの光が見られるようになります。釣り人たちが狙っているのは、皆さんもよくご存じの魚「スズキ」。夏の夜のひとときは、風に揺れる電気ウキの光を眺めながら、スズキ釣りに出かけてみてはいかがでしょうか。

『スズキ』ってどんな魚?

料理の世界でもなじみ深い素材のスズキは、体長1mを超える大型の魚で、北海道南部から九州まで日本各地で釣ることができます。大型魚は一般的には冬場が旬の場合が多いのですが、スズキの産卵時期は12月から2月頃になるので、冬場は生殖器官に栄養を吸い取られて身が痩せてしまいます。しかし初夏を迎える頃から体力を取り戻して餌をよく食べるようになるため、身に脂がのる夏場が旬になります。

スズキは大きさによって名前を変える“出世魚”としても有名で、20cm程度の小さいものは「セイゴ」、40cm程度の中型を「フッコ」、それ以上の大型を「スズキ」と呼んでいます。なお、釣りの世界ではどんなに大きなスズキが釣れても「セイゴ」と呼ぶ習慣があり、これは釣果を誇示せず控えめに言う奥ゆかしさを表す意味があります。まぁ、実際は「スズキが釣れた!」なんて言おうものなら、周囲の釣り師から「そんな小さな魚がスズキなもんか! 俺なんかもっとでかいのを釣ったことがある!」と面倒くさいツッコミを受けてしまうためです。よって最近は「シーバス(英:sea bass)」とカタカナを使ってはぐらかす人もよくいます。

どこで釣れるの?

スズキは、どのような環境にも適応する力を持った魚なので、外洋から身近な防波堤、はたまた淡水が混じる河川に至るまで、様々な場所で釣ることができます。季節によって回遊する魚で、釣れる場所が変わってきます。詳細は近所の釣具屋さんなどで聞くと良いでしょう。

インターネットで「スズキが釣れる場所」と検索すると、たいていは工場地帯など、夜間でも明かりが灯って小魚や虫が寄ってきやすい場所がヒットします。しかしこのような水域のスズキは、化学物質によって汚染されていることが多く、また身にもオイルのような臭いが染みついていることがあるので、スポーツフィッシングとしては楽しめますが、食べるための釣りには向いていません。

どうやって釣るの?

「スズキはルアーで釣る魚」と思っている人も多いのですが、電気ウキと虫(ゴカイ)を使った餌釣りも手軽で人気があります。電気ウキは中に電池が入っており、先端が光るので真っ暗闇の中でも魚がかかったことを知ることができます。電気ウキが無くても、ウキの先に「ケミホタル」と呼ばれる発光性の棒を取り付けることで代用もできます。

スズキは夜行性の魚なので、日が沈んでから2~3時間が釣れやすい時間帯です。素早く泳ぎ回りながら目の前に居た小魚や虫などの餌を食べる習性があるので、竿は2~3本用意しておき、ウキから針までの深さを上層、中層、下層と3段階ぐらいにそれぞれ分けておくと、釣れる可能性が高くなります。

スズキがかかったら電気ウキが素早く海中に引き込まれるので、急いでリールを巻いて釣りあげましょう。スズキは真横に泳ぐ習性があるので、ぼやぼやしていると他の竿の糸を巻き込んでグチャグチャになってしまいます。またスズキは水面をジャンプする“エラ洗い”という特別な動きをするので、糸が引きちぎられたり、針が振りほどかれたりしないように、常に糸の張り具合には気を使いながら引き寄せていきましょう。

小型のスズキは夏の野菜と一緒に食べよう

薄氷のように輝く白身が美しいスズキは、刺身はもちろん、フレンチではソテーやポワレといった焼き物もたまりません。特に夏場のスズキは脂がのっているため、薄く削ぎ切って氷の上に並べた『洗い』が最高です。

スズキは小型のセイゴサイズであっても味わいは変わらないのですが、肉厚がないのと脂が弱いのとで、“食べ応え”という点で不満が残ります。そこで、トマトやパプリカ、キュウリ、ズッキーニなどの夏野菜をたっぷり使い、スズキの身と一緒にオリーブオイルで和えた“カルパッチョ”にするのがおすすめです。

カルパッチョの味付けは、塩、ビネガー、レモンでシンプルに決めましょう。通常、魚は、塩辛さのパンチが利いた海の塩と相性が良いのですが、スズキは旨味がしっかりしている魚なので、口当たりがまろやかな山の塩(岩塩)との相性がよい食材です。特にピンクソルトを使うと、白く輝く身にピンクの粒が美しく映えます。


 

【新鮮すぎる魚が食べたい。】は、毎週金曜日に掲載します。

 

文・写真・イラスト:東雲輝之(しののめ てるゆき)/1985年生まれ、福岡県北九州市出身。猟師&ライター。狩猟や釣り、養蜂など、自然から食を得て楽しむ“キャッチ&イート”をメインテーマとしたアウトドアライター。ジビエの流通やニホンミツバチ養蜂などの活動も行う。著書「これから始める人のための狩猟の教科書」、「イラストマニュアルはじめての養蜂」など(共に秀和システム)。
ブログ「孤独のジビエ」http://kodokunogibier.blog.fc2.com/
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