東雲輝之【新鮮すぎる魚が食べたい。】-vol.34- 臭い魚を美味しくたべよう『タカノハダイのウロコ焼き』

おいしい魚の条件のひとつは鮮度です。何より新鮮なのは、獲れたてピチピチの魚。自分で釣り上げた魚以上に新鮮なものはありません。そこで初心者でも楽しく釣って、おいしく食べる方法について連載でお届けします。指南役は、狩猟や釣り、養蜂など、自然から食を得て楽しむ“キャッチ&イート”をテーマに、幅広くご活躍中のアウトドアライター・東雲輝之さんです。

長年、釣りやスピアーフィッシングを続けていると、「これまで捕ってきたものの中で、一番美味しくなかった魚はなんですか?」と、よく聞かれます。う~ん……夏のマサバなんかは脂が少なくパサパサして食味がよくなかったりしますが、基本的にはどんな魚も料理次第で美味しく食べることができると私は思っています。それがたとえ、「磯臭い」と嫌われる「タカノハダイ」であってもです。

『タカノハダイ』ってどんな魚?


タカノハダイは、房総半島以南の暖かい海に分布しており、比較的水深が浅く、ゴツゴツした岩場が広がる磯に多く生息しています。

名前の由来は、体の表面に鷹の羽のような茶褐色の縞模様があることで、尾びれの白い斑点と相まって非常に派手な見た目をしています。しかし海の中では灰褐色の体色が周囲の岩場と上手く同化するようにできており、まるで迷彩服を着ているように外敵から姿をくらますことができます。


どうやって釣るの?

タカノハダイはメジナと生息している環境が似ているので、メジナ釣りの外道としてたびたびお目にかかります。よって、釣りの仕掛けもメジナと同じ「フカセ釣り」が最も適しています。フカセ釣りの仕掛けでタカノハダイだけを狙って釣ることはできませんが、少し針を大きくすることで、警戒心の強いメジナを避けることができます。タカノハダイはメジナに比べると釣りやすい魚ですが、40cmを超える大物になると、かなりの力で引っ張られるので、竿を上手に操作する釣りの腕が必要になります。

タカノハダイは比較的警戒心の緩い魚なので、スピアーフィッシングでも格好のターゲットになります。ただしウロコが硬いので至近距離まで近寄ってくるのを待ってから、ヤスを撃ち込みましょう。




臭い魚には“タバスコ”が効く

タカノハダイは「身が臭い」と言われることが多い魚で、実際にその身には「海藻をすり潰して発酵させたような臭み」があり、この匂いは俗に“磯臭さ”と呼ばれます。しかし味自体は決して悪くはなく、サラっとした繊細な脂身とタイのような旨味のある白身を持っており、四国や紀伊半島、伊豆半島などでは、しばしば漁港の朝市に並んでいることがあります。

さて、タカノハダイ料理でオススメなのが“ウロコ焼き”です。ウロコ焼きは、魚の内臓を取ったあと魚焼きグリルに入れて、ウロコが付いたままの状態で丸焼きにする豪快な料理です。

一見すると、とても美味しそうな料理には見えませんが、タカノハダイのウロコは硬くてしっかりしているため、丸ごと焼くとウロコがアルミホイルのような役割をして、身がふっくらと蒸されたように焼き上がります。さらにタカノハダイの脂は繊細なので、普通に焼いてしまうと身から抜けてパサパサになってしまいますが、ウロコ焼きではウロコに守られて、豊潤な脂が身にしっかりと残ったまま料理することができます。





ただし、この料理方法ではタカノハダイの持つ、独特な臭みを取り除くことができません。そこで身をタバスコ醤油に浸けていただきましょう。タバスコに含まれる唐辛子と酢の成分は、魚介類の持つ独特の臭気を消してくれる効果があり、タカノハダイのように「味は良いけど臭みの強い魚」との相性が抜群です。

タバスコと醤油は意外な組み合わせに思えますが、唐辛子と酢を混ぜて作ったタバスコは、実は牡蠣の臭みを抑えるために開発された調味料で、もともと魚介類との相性が良いとされています。また伊豆大島や沖縄のように、磯魚や島魚をよく食べる地域では、醤油に酢と島唐辛子を混ぜて食べる食文化があり、タバスコと同じように魚の臭みを抑える調味料として人気があります。

 

【新鮮すぎる魚が食べたい。】は、毎週金曜日に掲載します。

 

文・写真・イラスト:東雲輝之(しののめ てるゆき)/1985年生まれ、福岡県北九州市出身。猟師&ライター。狩猟や釣り、養蜂など、自然から食を得て楽しむ“キャッチ&イート”をメインテーマとしたアウトドアライター。ジビエの流通やニホンミツバチ養蜂などの活動も行う。著書「これから始める人のための狩猟の教科書」、「イラストマニュアルはじめての養蜂」など(共に秀和システム)。
ブログ「孤独のジビエ」http://kodokunogibier.blog.fc2.com/
Twitter:@rakurou21

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