東雲輝之【新鮮すぎる魚が食べたい。】-vol.35- キャンプライフが楽しくなる”焚き火料理”の基本

おいしい魚の条件のひとつは鮮度です。何より新鮮なのは、獲れたてピチピチの魚。自分で釣り上げた魚以上に新鮮なものはありません。そこで初心者でも楽しく釣って、おいしく食べる方法について連載でお届けします。指南役は、狩猟や釣り、養蜂など、自然から食を得て楽しむ“キャッチ&イート”をテーマに、幅広くご活躍中のアウトドアライター・東雲輝之さんです。
9月に入り暑さの盛りを越えると、いよいよ本格的なキャンプシーズンの到来です。自然の中でのんびりと過ごすキャンプには様々な楽しみがありますが、なかでも焚き火には格別な魅力があります。そこで今回は、あなたのキャンプライフがより楽しくなる「焚き火料理」の基本についてお話しましょう。
『燃える』ってなに?
皆さんは物がどうやったら燃えるのか、ご存じですか? 「そんなのは常識だ!」と答える方がほとんどだと思いますが、キャンプ場で観察してみると、薪に火を点けられずにあたふたしているキャンパーをよく見かけます。
燃焼には必ず、「燃料」「酸素」「熱」という3つの要素が必要になります。このなかで燃料(炭や薪など)と酸素については常識の範囲かと思いますが、“熱”については意外と知らない人が多く、例えば薪のような燃料にただマッチの火を近づけても、薪に火が燃え移ることはありません。
実は燃焼という現象は、物質(燃料)自体に火が点いているのではなく、物質から出る透明な“可燃性ガス”に火が点くために起こります。そしてこのガスを発生させるためには、その物質全体が高温(薪の場合は200℃以上)になっていなければなりません。
火を育てよう
物が燃えるためには高い熱が必要になりますが、いきなり薪を200℃に加熱できるわけではありません。そこでまずは小さな火種を、油などの常温でもガスが出やすい物質や、綿や麻糸などの空気をたくさん含む物質に燃え移らせましょう。
次にその火を新聞紙や小枝、枯れ葉といった、より火持ちの良い物質に燃え移らせ、さらにその火を太い枝に燃え移らせていきながら、最終的に太い薪の温度が200℃以上に上がるように火を大きく育てていきましょう。
焚き火の“形”も重要
焚き火で料理をするときは、焚きつけや薪の置き方も重要になります。
例えばティピー型と呼ばれる置き方では、熱が突端に集中するため、素早く熾火(おきび・燃え上がった後、真っ赤になった薪)を作ることができます。この熾火は食材の中まで均一に熱を通す遠赤外線を強く出すので、魚や肉を串焼きにするときには、このティピー型がよく使われます。
またハンター型と呼ばれる置き方では、2本並べた薪の間を空気が通るので、ハの字になった焚き火の先端に熱が集中するようになります。よって炒めたり煮たりと火力が必要な調理をする場合には、このハンター型が便利です。ちなみに、薪を使った焚き火の火力はガスよりもはるかに小さく、焚き火料理で言う「強い火力」は、ガスコンロに置きかえると弱~中火程度になります。
薪を放射状に広げたインディアン型と呼ばれる置き方は、薪の燃える部分が小さいので、食材を調理するような火力を出すことはできません。しかし火が長時間持つので、鍋に入れた料理やケトルのお湯を長時間温めておく場合に便利です。またインディアン型はマシュマロを上手に焼くことができます。
ネイチャーストーブを使ってみよう
「焚き火を組むのは難しそう……」と思われる方には、ネイチャーストーブがおすすめです。ネイチャーストーブは、空気や熱が容器の中で効率よく循環するように設計された道具で、火を点けた焚きつけと一緒に薪を入れておけば、初心者でも簡単に大きな火を作ることができます。またネイチャーストーブは、地面で直接焚き火をするよりも掃除が楽なので、ちょっとしたアウトドアにもよく使われます。
夜釣りにネイチャーストーブを持っていき、釣ったばかりの魚をその場で焼いて食べるのも、なかなかオツな楽しみ方です。
【新鮮すぎる魚が食べたい。】は、毎週金曜日に掲載します。
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