東雲輝之【新鮮すぎる魚が食べたい。】-vol.38- 秋の夜長に投げ釣りでも『アナゴのアヒージョ』

おいしい魚の条件のひとつは鮮度です。何より新鮮なのは、獲れたてピチピチの魚。自分で釣り上げた魚以上に新鮮なものはありません。そこで初心者でも楽しく釣って、おいしく食べる方法について連載でお届けします。指南役は、狩猟や釣り、養蜂など、自然から食を得て楽しむ“キャッチ&イート”をテーマに、幅広くご活躍中のアウトドアライター・東雲輝之さんです。

日中の暑さも和らぎ、晩酌には人肌のお湯割り焼酎が欲しくなる初秋。こんな秋の夜長には最高の贅沢を求めて夜釣りに出かけるのはいかがでしょうか? この季節、夜釣りで初心者でも楽しめて、さらに食べて美味しい魚といえば、脂がたっぷり乗った旬のアナゴです。

『アナゴ』ってどんな魚?

日本でアナゴといえば普通マアナゴをさし、体長は最大で1mにもなるウナギに似た細長い体をしています。昼間は浅い海の砂の中に潜って眠り、夜中に泳ぎ出して餌を探す夜行性の魚です。体中がヌメヌメでおおわれており、釣り上がると「ぬったんぬったん」と暴れまわるので、初心者の釣り人には嫌がられることも多いですが、一度アナゴの魅力を知ると、その独特な顔つきもどこか可愛らしく感じてしまいます。

アナゴの旬と言えば「夏」と言われることが多いですが、それは寿司や天ぷらなどに使われる「メソ」と呼ばれる子どものアナゴがたくさん捕れる季節だからという、魚屋さん目線での旬だったりします。「釣って食べて美味しい」という釣り人目線での旬は、脂がたっぷり乗って魚体が大型になる初秋から冬までの季節になります。

どこで釣れるの?

アナゴは夜行性なので夕方から夜の10時ごろまで行う半夜釣りが良いでしょう。この時期、防波堤には仕事帰りに釣り竿と夜飯を持って海に行くリーマンフィッシャーがたくさん現れます。

アナゴは砂場に生息しているので、地面が砂地になっている港から釣りましょう。うっすらとした明かりに引き寄せられる習性があるので、港の中でも街灯がある場所が良いでしょう。特に工場群から漏れる明かりがある海域に多く集まるので、実は地方よりも、夜でも明るい都会のほうがよく釣れたりします。夜の埠頭で釣り糸を垂らしつつ、工場群の明かりを眺めながら温かいドリンクを飲む。これだけでも心が癒やされます。

どうやって釣るの?

釣り方は、オモリを付けた仕掛けを海に投げる「投げ釣り」という方法が一般的ですが、アナゴは夜中に岸まで近寄ってくるので、それほど遠くに投げる必要はありません。せいぜい手前1mぐらいまで仕掛けが飛んでいけばいいので、市販の安い竿セットに少々重たいオモリを付けた仕掛けでチャレンジしましょう。

投げ釣りの夜釣りでは魚がかかったことを音で知らせるために、竿の先に鈴をつけておきましょう。アナゴがかかったら「リンリン!!」と鈴が鳴って知らせてくれるので、暗がりで竿を監視する手間が省けます。

餌は釣具屋さんで売られているゴカイという海泥に棲むミミズのような虫を使うのが一般的ですが、おすすめはサバやイワシなどの青物の切り身です。できるリーマンフィッシャーは、仕事帰りにスーパーに並んでいる“割引の刺身パック”から、高級アナゴを釣り上げる錬金術師です。

アナゴの下処理

アナゴ料理のハードルを高くするのは、なんといっても体表のヌメヌメです。活きの良いアナゴは家に持って帰ってもビッタンビッタンと大暴れして、キッチンをヌメヌメにしてしまいます。そこで、アナゴは釣れたらすぐに氷が入ったクーラーボックスに入れて締め、料理をする前に熱湯をかけてヌメヌメを落としましょう。アナゴやウナギなどの「長物」と呼ばれる魚の料理は、初めはとても苦労しますが、慣れてくれば意外と簡単! 最大のコツは、よく切れる包丁を使うことです。



和風に飽きた? それならば『アナゴのアヒージョ』

見た目が苦手な長物も、サクになってしまえば大人気! 煮付けに天ぷら、柳川風鍋、1mの大物にもなれば2~3日はアナゴフィーバーが楽しめることでしょう。しかし「和食の味付けばかりでは飽きそう」……そう思われる人にはアヒージョ(油煮)がおすすめです。

[材料]
・アナゴの切り身…1切れ 
・アナゴの骨…10cmぐらい
・ニンニク…1片
・赤トウガラシ…1/2本
・オリーブオイル…材料がひたひたに浸るぐらい
・ブラックペッパー…ホール(粒)で10粒ぐらい
・塩…少々
・ゆでたじゃがいも(付け合わせ)…1/2個


[作り方]
1.下処理したアナゴの切り身と、骨に塩少々をまぶして水気をよく切る。
2.グラタン皿などの耐熱容器にアナゴを入れて、つぶしたブラックペッパーとニンニク、刻んだ赤トウガラシ、付け合わせのゆでたジャガイモを入れて、材料がひたひたに浸るまでオリーブオイルを注ぐ。
3.オーブンを140℃ほどに設定し、1時間程度ゆっくりと煮込む。オイルからぷつぷつと泡が出る程度の火加減に調整する。




お店で出るアヒージョといえば、オリーブオイルがグツグツと煮立った熱々の料理を思い浮かべますが、もともと脂が強いアナゴは、グツグツ煮てしまうとさらに油を吸い込んでベチャベチャになってしまいます。そこで火加減は低めの140℃程度、じっくりと食材の旨味を油に溶け込ませるようにして調理します。

もし、大型で活きの良いアナゴが釣れたら、刺身に挑戦するのも面白いです。アナゴの刺身はコリコリとした歯ごたえに甘みのある脂が染み出す意外な食感。捌き方や血抜きにコツがいりますが、釣り人だからこそ味わえる超新鮮な最高の贅沢です。




【新鮮すぎる魚が食べたい。】は、毎週金曜日に掲載します。
 

文・写真・イラスト:東雲輝之(しののめ てるゆき)/1985年生まれ、福岡県北九州市出身。猟師&ライター。狩猟や釣り、養蜂など、自然から食を得て楽しむ“キャッチ&イート”をメインテーマとしたアウトドアライター。ジビエの流通やニホンミツバチ養蜂などの活動も行う。著書「これから始める人のための狩猟の教科書」、「イラストマニュアルはじめての養蜂」など(共に秀和システム)。
ブログ「孤独のジビエ」http://kodokunogibier.blog.fc2.com/
Twitter:@rakurou21

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