東雲輝之【新鮮すぎる魚が食べたい。】-vol.41- 海のフォアグラはいかが?『カワハギのマース煮』

おいしい魚の条件のひとつは鮮度です。何より新鮮なのは、獲れたてピチピチの魚。自分で釣り上げた魚以上に新鮮なものはありません。そこで初心者でも楽しく釣って、おいしく食べる方法について連載でお届けします。指南役は、狩猟や釣り、養蜂など、自然から食を得て楽しむ“キャッチ&イート”をテーマに、幅広くご活躍中のアウトドアライター・東雲輝之さんです。

天高く馬肥ゆる秋。お米に野菜に果物に、秋は色々な食材が美味しくなる季節です。もちろんそれはお魚も同じで、特にこの時期「カワハギ」は、厳しい冬に向けて肝にたくさんの栄養を蓄えるため、最高に美味しくなります。

『カワハギ』ってどんな魚?

スーパーの鮮魚コーナーにも並ぶカワハギ。しかしその真の姿を知っている人は意外と少ないようです。カワハギは菱形の平べったい体にピョンと突き出た1本の角(背鰭棘)、小さなまん丸の目玉、前に突き出たおちょぼ口と、なんともひょうきんな顔をした魚です。性格もマイペースで、人がスキューバダイビングで近づいても警戒することなく、のんびりフワフワと海の中をお散歩しています。

どこで釣れるの?

カワハギは岩がゴツゴツと突き出した岩礁域に多く生息しています。よって砂浜ではなく、岬が近い漁港で釣るのがおすすめです。また、小さなテトラポッドがたくさん沈められている場所も絶好の釣りポイントになります。ただしテトラポッドは海水で濡れると滑りやすいので、釣りをするときは必ずライフジャケットを着用しましょう。
 カワハギは船上からでも釣れるので、ポイント付近の釣具屋さんに釣り船が出ていないか問い合わせてみるのも良いでしょう。

どうやって釣るの?




ダイバーにとっては癒やし系アイドルのカワハギですが、釣り人にとっては釣るのが難しい「強敵」として知られています。その理由の一つがなんと“おちょぼ口”。カワハギは餌を「パクッ!」と食べずに、「ツンツン」と少しずつ突きながら食べる習性があるため、釣り針に付けていた餌が気付かないうちに全て食べられてしまうのです。

「何年も修業が必要」と言われるカワハギ釣りですが、『カワハギ掛け針』と呼ばれるちょっと変わった仕掛けを使えば、初心者でも手軽に釣ることができます。カワハギ掛け針は傘のように広がった針が何本も付いており、上に餌を詰めるカゴが付いています。この仕掛けを海の中に沈めると、餌につられてやってきたカワハギが針の周りにたくさん集まってくるので、タイミングを見計らって竿を思いっ切り振り上げカワハギを引っ掛けて釣り上げます。

一般的なアジやサバといった魚は、泳ぐスピードが速いので針に引っ掛けることはできませんが、カワハギは泳ぐのが遅いので簡単に引っ掛けることができます。中には「卑怯な釣り方だ!」という釣り人もいますが、カワハギの「のんびり屋」という性格を逆手に取った面白い戦法といえます。

カワハギの下処理

「カワハギ」は、皮が簡単に剥がれて料理がしやすいことからその名前が付けられました。その通り、カワハギの下処理は、ウロコを取る必要がないのですごく簡単です。ただし、プリプリの肝を間違って潰さないように、初めに包丁を入れる位置だけは注意しましょう。



1.カワハギの角のすぐ後ろから、ヒレの付け根にかけて包丁で切る。切り込みを入れすぎると内臓を傷つけてしまい、肝に腸の臭いが付くので要注意。

2.角と胴体を握る。角はギザギザしているので、できれば手袋をはめると良い。

3.首をねじるようにして頭を外し、同時に内臓を取り出す。この時、腸を破らないように注意する。

4.切れ目から皮を剥いでいく。皮はガムテープを剥ぐようにビリビリとむくことができる。

5.刺身にする場合は、中骨に沿って包丁を入れ半身にする。カワハギには血合い骨がないので、腹骨を切り取ったらそのまま刺身にできる。

6.内臓から肝を取り分ける。肝には黒くて丸い苦玉と呼ばれる胆嚢が付いているので、そこは取り外す。

火加減に注意して『カワハギのマース煮』

カワハギ料理と言えば、肝を包丁でタンタンと叩き、ネギと醤油であえた『肝醤油』。これをカワハギの刺身に付けて食べると、“海のフォアグラ”の真骨頂を感じる美味しさがあります。しかしカワハギにはもう一つ、とっておきがあります。




[材料]
・カワハギ…頭と肝を付けて2匹 
・長ネギ…1本
・じゃがいも…2個
・タマネギ…1/4個
・しめじ…1株
・ショウガ…1片
・海塩(できるだけ美味しい塩)…適量
・泡盛(なければ料理酒)…1/2カップ
・水…1カップ

[作り方]
1.カワハギに海塩を振りかける。腹の中にも忘れずに振りかけ、20分ほど置く。
2.肝以外のカワハギの水気をよく切って、一口大に切ったジャガイモとスライスしたショウガ、大きめに切った長ネギ、石づきを落としたシメジ、くし切りにしたタマネギを鍋に入れ、水と泡盛を注ぐ。
3.はじめは中火にかけて、鍋が沸騰する寸前で弱火にし、さらにふたをして煮る。
4.ジャガイモが煮えたら火を落とし、最後に肝を入れる。

白身で淡泊な味わいのカワハギは、強火にかけると身が縮みパサパサになってしまいます。特に肝は熱を通しすぎると旨味が消えてモソモソした食感になるので、最後に入れるようにしましょう。

カワハギの肝と同じぐらいに魅力的なのは「出汁」です。カワハギはフグに近い魚なので、その骨からは上質な出汁を取ることができます。よって煮付けや鍋物にするときは骨を付けた状態で料理し、味付けもシンプルにしましょう。海塩だけで味付けしたマース煮ならその魅力を存分に味わうことができます。


【新鮮すぎる魚が食べたい。】は、毎週金曜日に掲載します。
 

文・写真・イラスト:東雲輝之(しののめ てるゆき)/1985年生まれ、福岡県北九州市出身。猟師&ライター。狩猟や釣り、養蜂など、自然から食を得て楽しむ“キャッチ&イート”をメインテーマとしたアウトドアライター。ジビエの流通やニホンミツバチ養蜂などの活動も行う。著書「これから始める人のための狩猟の教科書」、「イラストマニュアルはじめての養蜂」など(共に秀和システム)。
ブログ「孤独のジビエ」http://kodokunogibier.blog.fc2.com/
Twitter:@rakurou21

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