東雲輝之【新鮮すぎる魚が食べたい。】-vol.43- 身近な魚は極上の味『ハゼの南蛮漬け』

おいしい魚の条件のひとつは鮮度です。何より新鮮なのは、獲れたてピチピチの魚。自分で釣り上げた魚以上に新鮮なものはありません。そこで初心者でも楽しく釣って、おいしく食べる方法について連載でお届けします。指南役は、狩猟や釣り、養蜂など、自然から食を得て楽しむ“キャッチ&イート”をテーマに、幅広くご活躍中のアウトドアライター・東雲輝之さんです。

「私たちの日常で、一番身近にいる魚は何か?」と聞かれたら、あなたは何と答えるでしょうか? アジ? イワシ? サバ?……おそらくスーパーの鮮魚売場に並んでいる魚が思い浮かぶでしょう。しかしそれらは身近で売られている魚であって、本当に身近にいる魚とは「ハゼ(マハゼ)」なのです。秋晴れの行楽日和は「ちょっとそこまで」ハゼを釣りに出かけましょう!

『ハゼ』ってどんな魚?

有明海や八代海などに生息する超マイナーな魚、「ムツゴロウ」のことは知っているのに、身近に生息するハゼを知らない人は意外にも多いように思えます。ハゼは全長15cm程度の小魚で、内湾や海の水と川の水が混じり合う河口の砂泥底に多く生息しています。姿はムツゴロウのように平べったく、海底を這うように移動します。

春に産まれたハゼの稚魚は初夏にかけて浅瀬の河口付近に集まり、冬の始まりになると沿岸の深い場所に移動する習性があります。よって丁度秋の終わりごろには冬の生殖の季節に向けてたくさん栄養を取ろうとするので、釣りやすく、かつ、身も厚く美味しくなります。寿命はわずか1年という短命の魚ですが、まれに2年かけて成熟、産卵する「ひね」(ひねくれもの)もおり、20cm~最大25cmの大きさになると刺身でも食べられます。

どこで釣れるの?

ハゼは河口ならどこででも釣れます。江戸川や多摩川といった大きな河から、小さな橋が架かった小川、はたまた跨(また)いで渡れるような用水路まで至るところに生息しています。

水深が人の“くるぶし”ぐらいのごく浅い所にいたりするので、透明度の高い小川なら川底に群れてのんびり餌を待っている姿を見かけることができます。ときどき体の汚れを取るために、クルクル回って白い腹を見せるので、もし川底がキラキラ光るような場所を見つけたら、そこは絶好のハゼポイントです。

どうやって釣るの?

昔は「子どもの釣り」と言われていたハゼ釣りも、釣りをしない子どもが増えたことで、今ではすっかり「高齢者の釣り」になってしまいました。しかし裏を返せば、小さな子どもから人生のベテランさんまで楽しめる奥深い釣りと言ってよいでしょう。

ハゼ釣りは、長い竹などの竿先に針と糸だけを結んだ「のべ竿」で釣るのが通のやり方ですが、初心者のうちは釣具屋さんで2000円程度で購入できる竿セットと、天秤型のおもり、市販の投げ釣り針セットでやってみましょう。餌はゴカイと呼ばれる海に棲むミミズのような生物です。触りたくない人は “ワーム”と呼ばれる擬似餌でもよいでしょう。

ハゼは目の前に動く餌があれば、とりあえず何でも口にしてしまう魚なので、釣るのは難しくはありません。仕掛けを投げ入れたら、「チョンチョン」と竿を動かして餌に動きを与えれば、そのうち「ツンツン」と竿先に動きを返してきます。

そこまで釣り具を揃えるのが面倒な人は、屋形船に乗るのがおすすめです。ハゼ釣りの屋形船では、竿一式を貸し出してくれるだけでなく、船の上でハゼの天ぷらを揚げてくれます。

ハゼの下処理

ハゼは2~3時間で100匹以上も釣れたりします。その時は「気軽にたくさん釣れる、いい魚だ」と思われるでしょうが、家に持って帰ってからが大変です。ハゼは持ち帰った後もまだ生きています。さらに体からヌメヌメの体液が出るので捌(さば)くのも一苦労。そこで、排水溝用のネットや、ミカンのネットなどを使って、まとめて一気に処理しましょう。

1)ハゼに多めの塩をまぶす。
2)ネットに入れてよく揉み、ヌメリとウロコを落とす。
3)十分に揉んだらネットごと水洗いをする。
4)ネットから取り出し、ペーパータオルで水気をよく取る。

酒盗ならぬ「ビール盗」、ハゼの南蛮漬け

ハゼは淡泊な味わいの白身魚なので、料理といえばやはり定番の「天ぷら」です。サクサクの天ぷらを口の中に入れると、白身から素材の甘みがジュワッと染み出し、えも言われぬ美味しさです。とはいえ、何百匹ものハゼを天ぷらで食べるのは、さすがに胸焼けがします。そこで、作り置きにもなる「南蛮漬け」なんていかがでしょうか?




[材料]
・ハゼ 20匹 
・玉ねぎ 2個
・ピーマン 2個
・醤油:みりん:酢=1:1:2(ハゼがまんべんなく漬かるくらい)
・砂糖 大さじ1
・鷹の爪 2本
・小麦粉:片栗粉=1:1(ハゼにまんべんなく付くくらい)
・サラダ油(揚げ油) 適量

[作り方]
1.玉ねぎとピーマンをスライスする。
2.漬け汁を作る。鍋に醤油・みりん・酢を1:1:2の割合で入れ、砂糖、鷹の爪も入れて火にかける。煮立ったら火を消して冷ましておく。
3.ハゼの頭を落とし、内臓を出して腹の中を洗う。
4.よく水気を切ったハゼに、小麦粉・片栗粉を1:1の割合で振りかける。
5.まず160℃程度の低温でゆっくりと揚げる。きつね色の焦げ目がついたらいったん油から上げて、次に180℃の高温油で二度揚げする。

6.程よく揚がったらクッキングペーパーで余分な油を落とし、熱いうちに2の漬け汁に漬け込む。
7.密閉容器にハゼを全て入れたら、上にスライスした玉ねぎとピーマンをのせて蓋を閉め、2~3日保存する。

ハゼは骨ごと揚げるので、10~15cmの小振りの物がよいでしょう。もし20cmを超えるような大型が釣れたら刺身で食べるのがおすすめです。




ハゼの南蛮漬けを作るときに一番気を付けなければならないのは「ビールを飲まないこと」です。揚げたてのハゼを漬け汁にサッとくぐらせた“ジュワジュワ”をビールと一緒に頬張る快感を覚えてしまっては、もはや南蛮漬けにするハゼなんて残るはずがありません!


【新鮮すぎる魚が食べたい。】は、毎週金曜日に掲載します。
 

文・写真・イラスト:東雲輝之(しののめ てるゆき)/1985年生まれ、福岡県北九州市出身。猟師&ライター。狩猟や釣り、養蜂など、自然から食を得て楽しむ“キャッチ&イート”をメインテーマとしたアウトドアライター。ジビエの流通やニホンミツバチ養蜂などの活動も行う。著書「これから始める人のための狩猟の教科書」、「イラストマニュアルはじめての養蜂」など(共に秀和システム)。
ブログ「孤独のジビエ」http://kodokunogibier.blog.fc2.com/
Twitter:@rakurou21

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