東雲輝之【新鮮すぎる魚が食べたい。】-vol.44- スポーツがてら食欲の秋『モクズガニのトマトクリームパスタ』

おいしい魚の条件のひとつは鮮度です。何より新鮮なのは、獲れたてピチピチの魚。自分で釣り上げた魚以上に新鮮なものはありません。そこで初心者でも楽しく釣って、おいしく食べる方法について連載でお届けします。指南役は、狩猟や釣り、養蜂など、自然から食を得て楽しむ“キャッチ&イート”をテーマに、幅広くご活躍中のアウトドアライター・東雲輝之さんです。

すっきり爽やかな秋晴れの休日は、河口沿いをランニングしてみるのはいかがでしょうか? かすかに漂う潮の香り、風になびくススキの穂、柔らかな太陽の日差しは、スポーツの秋にうってつけです。「スポーツも良いけど、食欲もね!」という方は、付近の岩の隙間をのぞいてみましょう。この時期の旬の味「モクズガニ」が見つかるはずです。

『モクズガニ』ってどんなカニ?

モクズガニは日本全国に分布しており、主に河川や河口、水田などに生息する淡水性のカニです。甲幅6cmくらい、大きいものだと人間の手のひらぐらいに成長するモクズガニは、そのハサミの部分に、短い藻のような毛が生えていることから「藻くず」の名が付けられました。その他、「ツガニ」や「ズガニ」、「ケガニ」、「カワガニ」など、モクズガニはたくさんの地方名を持つ、古くから人間になじみ深いカニです。

どこで釣れるの?

モクズガニは淡水に棲むカニですが、秋が深まると春の産卵のために、汽水域まで河から下りてくる習性があります。よってこの時期は、河口のテトラポッドや岩場、崩れたコンクリートの壁、護岸のために積まれた石などの隙間に多数潜んでいます。

どうやって釣るの?

モクズガニは、市販されている“カニカゴ”という籠を沈めて取るのが一番簡単ですが、カニカゴの使用は法律的に少し問題があり、またその海域の漁業権を侵す危険性があるので、使用を禁止されている区域では使わないようにしましょう。

カニを捕まえる別の方法に、カニ網があります。これは竿にカニ網と呼ばれる目の細かい網と、ミカンのネットのようなエサ袋が付いており、エサ袋の中にアジやイワシなどの小魚(魚の頭やアラでもOK)を詰めて沈めます。モクズガニはエサの匂いに誘われて近寄ってきますが、途中で細かいカニ網が脚に絡みついて動けなくなるので捕獲できます。

モクズガニはそのまま手づかみで取ることもできます。昼間のモクズガニは岩の隙間で寝ているので、手を突っ込んでカニのお尻をつかみ、引っ張り上げます。手をはさまれそうで怖い人は、火ばさみかトングで摘まみ上げるとよいでしょう。

しばらく生かしておく場合の注意点

取ったモクズガニは、すぐに料理しないのであれば、バケツなどの入れ物に水道水を入れて生かしておくことができます。ただしモクズガニは酸欠に弱いので、必ずサーキュレーター(水槽のブクブク)を入れておきましょう。また、よく脱走するので、入れ物にはしっかりとフタをしておきましょう。

モクズガニの下処理

生きているモクズガニは深い鍋に水と一緒に入れ、フタをした状態で茹で締めにします。いきなり熱湯にモクズガニを入れると大暴れして飛び出すので、必ず水から茹でるようにしましょう。モクズガニの下処理はそれほど難しくありません。カニが動かなくなったら鍋から取り出し、ふんどし、ガニ(魚でいうエラ)、口、砂袋を取り外して、あとは適当な大きさにカットします。


モクズガニ料理のコツは、しっかりと出汁を取ること

モクズガニは、ケガニやズワイガニのように大きくないので、身はそんなには取れません。また、小振りの爪を割って中身を掻き出すのは結構大変です。

食用としてあまり魅力がなさそうですが、実はこのモクズガニは高級カニとしてよく知られている“上海ガニ”の仲間で、そのミソや内子(卵巣)の美味しさは、他のカニに引けを取りません。そこでモクズガニは、これらから出る“出汁”を存分に利用して料理しましょう。

①まず、フライパンにオリーブオイルをたっぷりと引き、刻んだニンニクといっしょに、バラしたモクズガニを入れて炒めます。




②殻が赤くなってきたら、白ワイン1カップを加えてフタを閉めます。このままモクズガニの出汁が出て、汁がクリーム色になるまで、弱火でジックリと火にかけます。このタイミングで、パスタ鍋でお湯を沸かし始めます。




③モクズガニの出汁がしっかりと出たら、薄切りにした玉ねぎ1/2個、シメジ1/2株、トマト缶1/2缶を加えて、煮詰めます。このタイミングで、パスタを茹で始めましょう。




④食材に火が通ったら、生クリーム大さじ2を入れ、塩・コショウで味を調えます。




⑤パスタが、やや芯が残るぐらいに茹で上がったら、④のフライパンに入れて、勢いよくかきまぜてソースとからめ、お皿に盛り付けましょう。




モクズガニは他のカニに比べて、濃い旨味を持っています。特に殻の内側に付いているミソには深いコクがあるので、殻も一緒に料理しましょう。




モクズガニは、当然、脚の中の身にも旨味が詰まっています。そこで脚の付け根を齧(かじ)って割り、中をチュッチュと吸いましょう。手をソースでベタベタにしながらカニの殻に吸い付くのはマナーが悪いように思われますが、問題ありません。美味しいものを残さず美味しく食べるのが、食べ物に対する最高のマナーなのですから。


【新鮮すぎる魚が食べたい。】は、毎週金曜日に掲載します。
 

文・写真・イラスト:東雲輝之(しののめ てるゆき)/1985年生まれ、福岡県北九州市出身。猟師&ライター。狩猟や釣り、養蜂など、自然から食を得て楽しむ“キャッチ&イート”をメインテーマとしたアウトドアライター。ジビエの流通やニホンミツバチ養蜂などの活動も行う。著書「これから始める人のための狩猟の教科書」、「イラストマニュアルはじめての養蜂」など(共に秀和システム)。
ブログ「孤独のジビエ」http://kodokunogibier.blog.fc2.com/
Twitter:@rakurou21

この連載のバックナンバー

▼ もっと見る