東雲輝之【新鮮すぎる魚が食べたい。】-vol.45- お酒を買いに走る!『サッパのママカリ』

おいしい魚の条件のひとつは鮮度です。何より新鮮なのは、獲れたてピチピチの魚。自分で釣り上げた魚以上に新鮮なものはありません。そこで初心者でも楽しく釣って、おいしく食べる方法について連載でお届けします。指南役は、狩猟や釣り、養蜂など、自然から食を得て楽しむ“キャッチ&イート”をテーマに、幅広くご活躍中のアウトドアライター・東雲輝之さんです。

この時期、普段釣りをしないお父さんたちから、「子どもと釣りに行きたいんだけど、お金がかからず、簡単に釣れて、しかも食べて美味しい魚ってないかなぁ?」なんてことをよく聞かれます。いくらなんでもそんな都合のいい魚なん……いや、いますねぇ。それは「サッパ」です。

『サッパ』ってどんな魚?

サッパは、体長10~20cm程度で、東日本では普段あまり目にしない魚ですが、西日本、特に瀬戸内海や有明海では、よく食用として漁獲されている小魚です。

しばしば近種のコノシロと見間違われますが、コノシロのような長く伸びる背ビレが無いことや、エラ元の黒点が上のほうに付いていて、体の側面に黒い点線がないこと、また目が大きく“かわいい顔”をしていることなどから見分けられます。

なお、サッパには、サッパヤドリムシと呼ばれるフナムシのような虫が、よく頭にくっついています。気味悪く思えますが、人間には何も害はないので、サッパから引きはがして海に返してあげましょう。

どこで釣れるの?

サッパは、泥に溜まるプランクトンを食べる魚です。よって、河口付近の堤防など、底が泥になっているような場所(砂泥域)で釣れます。小さく密集した群れで移動するため、釣れるときは大量に釣れ、釣れないときはさっぱり釣れないと、釣果の差がはっきりしていますが、毎年同じ時期に、同じ場所に現れる傾向があるので、出現ポイントを釣具屋さんなどでチェックしておきましょう。なお、昼行性の魚なので、夜間はまったく釣れなくなります。

どうやって釣るの?

サッパは、カゴの中にエビに似た小さなアミと呼ばれるエサを詰めて擬似餌で引っ掛ける、サビキ仕掛けで釣ります。なかでも、サッパは底に溜まった餌を食べる習性があるので、海底にカゴを着地させることができるオモリ付き餌カゴが向いています。

サッパは餌を水ごと吸い込んで鰓耙(さいは)で漉(こ)し取って食べる習性があるため、水を吐き出す動作で自動的に口に針が掛かります。よって竿で合わせる必要はありません。さらに警戒心も弱いため、放っておいてもドンドンと針に食いついてきます。

この“大フィーバー”に、大人も子どもも大興奮間違いなし……なのですが、一つ注意事項として、糸は常にテンションをかけて緩ませないようにしましょう。サッパは針に掛かると浮いたり潜ったりとデタラメに泳ぎ回るので、糸を緩めているとこんがらがってしまいます。「釣っている時間よりも、からまった糸をほどいている時間のほうが長かった」なんてことにならないように、注意して釣りましょう。

下処理は効率的に

家族で一日中遊んでいたら、数百匹以上も釣れてしまうサッパは、一匹一匹下処理をしていたら、とんでもなく時間がかかってしまいます。そこで釣れたサッパは、まず大量の塩で締めてウロコをはがしやすくします。塩で締めると、余分な水分が出て身が引き締まるため、手で軽く揉むと塩ごとウロコが取れます。

次に、エラの部分に切れ目を入れて、“L字”になるように腹ごと頭と内臓を落とします。ちょっともったいない切り方ですが、サッパの腹の部分は小骨が多く固くなっているので、背側の部分だけ食べるようにします。


飯を借りる“ママカリ”

サッパは、その名の通り「さっぱり」した脂分の少ない淡白な魚ですが、かみしめると強い青魚の旨味をもっています。よって、三枚におろして刺身にするのはもちろん、片栗粉をまぶしてから揚げにしたり、南蛮漬けにしたり、オリーブオイルで煮てオイルサーディンっぽく仕上げても、美味しく食べられます。しかし、せっかくサッパを食べるなら、岡山名物の郷土料理“ママカリ”を作ってみましょう。





①まず、下処理したサッパに塩を振り、1時間ほどおいて水気を出します。

②表面の塩を拭いて水気を取ったら、焼き網に並べて、表面が軽く焦げるぐらいに焼いていきます。

③焼いている間に、酢1カップに、砂糖大さじ4、かつおだしの素小さじ1、塩少々、ショウガ適量を鍋に入れて、軽く火にかけます。

④焼き上がったサッパを3の漬け汁に漬けて、冷蔵庫で半日から1日ほど漬け込みます。




「ママ(ご飯)が足りなくなり、隣の家に借りに行くほど美味しい」ということから名前が付けられたママカリ。そのさっぱりした身をかみしめると、酸っぱい汁が“チュン!”と飛び出し、口の中に豊かな旨味が広がります。この旨さは、ご飯はもちろんですが、やっぱり合うのは“お酒”、肌寒い時期なら、人肌に温めた甘めの日本酒が最高に合います!

家族と釣った魚を食べながら談笑していると、あれ? いつのまにか酒瓶の中がすっからかん。でも大丈夫、現代はお隣の家に借りに行かなくても、コンビニが24時間空いています。さぁ、暖かい格好をして、ひとっぱしりお酒を買いに走りましょう!


【新鮮すぎる魚が食べたい。】は、毎週金曜日に掲載します。
 

文・写真・イラスト:東雲輝之(しののめ てるゆき)/1985年生まれ、福岡県北九州市出身。猟師&ライター。狩猟や釣り、養蜂など、自然から食を得て楽しむ“キャッチ&イート”をメインテーマとしたアウトドアライター。ジビエの流通やニホンミツバチ養蜂などの活動も行う。著書「これから始める人のための狩猟の教科書」、「イラストマニュアルはじめての養蜂」など(共に秀和システム)。
ブログ「孤独のジビエ」http://kodokunogibier.blog.fc2.com/
Twitter:@rakurou21

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