東雲輝之【新鮮すぎる魚が食べたい。】-vol.49- 油で温める保存食『シロサバフグのコンフィ』

おいしい魚の条件のひとつは鮮度です。何より新鮮なのは、獲れたてピチピチの魚。自分で釣り上げた魚以上に新鮮なものはありません。そこで初心者でも楽しく釣って、おいしく食べる方法について連載でお届けします。指南役は、狩猟や釣り、養蜂など、自然から食を得て楽しむ“キャッチ&イート”をテーマに、幅広くご活躍中のアウトドアライター・東雲輝之さんです。

ルアーで海釣りをしていると、竿に“グンッ!”と重みを感じるのに、その後まったく引いてこない魚が掛かることがあります。不思議に思いながらリールを巻いてみると、ゆっくり浮き上がって来たのは大きなフグ。毒を持たないフグとして知られる「シロサバフグ」です。

『シロサバフグ』ってどんな魚?

シロサバフグは、日本から東南アジア、オーストラリア北部などに広く生息するフグ科の海水魚で、日本では鹿児島県以北の沿岸で広く見られます。体の側面が金色に光っていることから、「キンフグ」や「カナトフグ」と呼ばれることもあるこのフグは、古くから“毒が無い”とされており、各地で食用にされてきました。

現在でも検査により、中毒を引き起こすレベルの毒(テトロドトキシン)は検出されていませんが、近年になってフグ科の魚は食べる餌によっては毒化することが知られるようになりました。今後、地球温暖化などの影響で生態系が変化してくると、これまで無毒だったシロサバフグも毒化する危険性がある、とされています。また、シロサバフグによく似た全身に猛毒を持つ「ドクサバフグ」と呼ばれるフグもいるため、釣ったフグを食べるときは、専門のフグ釣り船を利用しましょう。

どうやって釣るの?

まん丸で愛嬌のある顔をしたシロサバフグですが、実はどう猛に小魚を追って食べるフィッシュイーターです。よってシロサバフグはルアーでよく釣れる魚なのですが、できれば「生き餌カットウ仕掛け」がお勧めです。

生き餌カットウは、カットウ針と呼ばれるイカリ状の針の上に、小アジなどの小魚を引っ掛けて海に落とす仕掛けです。この仕掛けは、生き餌を付けない普通のカットウ仕掛けよりもシロサバフグの食いつきが良く、さらにブリやサワラ、ヒラマサ、ヒラメ、カサゴといった美味しい高級魚が、“外道”として釣れる可能性もあります。なお餌の小魚は生き餌でなくても、スーパーで売られているパックの小アジなどで十分です。

シロサバフグは針に掛かると、水を吸い込んでパンパンに膨らむため非常に重たく感じます。しかし泳ぐ力は弱いため、あせらずゆっくりと糸を巻き上げていきましょう。

フグが釣れたときは歯に注意!

特に難しいことは無いフグ釣りですが、釣り上げた後に口から針を外すとき、指を噛まれないよう注意しましょう。フグにはカミソリのような鋭い板状の歯が、上下それぞれ2枚ずつ計4枚並んでおり、指先を噛まれるとペンチで挟まれたような傷になります。大きなフグの場合は肉がえぐり取られてしまう恐れもあるので、不用意に口に手を近づけないようにしましょう。

保存食として活躍! 美味しいシロサバフグのコンフィ

シロサバフグは大量に獲れて、しかも毒が無いことから“庶民のフグ”として親しまれており、地方によっては鮮魚店で下処理をしてよく洗った状態(身欠き)で買えたり、干物にしたものが市場に出回っていたりします。

シロサバフグの刺身は、フグの名に恥じない上質な白身を持っていますが、トラフグやマフグ、ショウサイフグなどと比べるとやはり身質が水っぽく、旨味がぼやける感じがします。




そこでシロサバフグの料理は、身に締まりを与え、かつ、新鮮な旨味を閉じ込めるコンフィ(低温での油煮)がオススメです。

まず、プロに処理してもらったシロサバフグを三枚におろし、薄く塩をして15分ほど寝かせます。次にジップロックなどのジッパー付き保存袋に身とオリーブオイルをひたひたになるまで注ぎ、空気を抜いて袋のまま魔法瓶に詰めます。ここにお湯を注ぎ込み、瓶の中を45~50℃に維持した状態で、2時間ほど温めましょう。




油煮というと、アヒージョのようにオリーブオイルでグツグツ煮る料理を想像されるかもしれませんが、コンフィは低温の油脂で食材を加熱し、旨味をそのまま活かす料理方法です。例えば鶏肉などのコンフィでは80℃前後で調理するのが一般的ですが、魚の場合は火が通りやすい身質なので、50℃前後の温度が向いています。




コンフィはもともと、食材を保存食として利用するための調理方法でもあるので、油の中で保存しておけば半年以上は日持ちします。そこで、大量にシロサバフグのコンフィを作っておき、ピンチョスなどのパーティー料理に使ってみるのもよいでしょう。スズキやタイとはまったく違う白身の不思議な味わいに、「これって何の魚?」と話題になるはずです。




【新鮮すぎる魚が食べたい。】は、毎週金曜日に掲載します。
 

文・写真・イラスト:東雲輝之(しののめ てるゆき)/1985年生まれ、福岡県北九州市出身。猟師&ライター。狩猟や釣り、養蜂など、自然から食を得て楽しむ“キャッチ&イート”をメインテーマとしたアウトドアライター。ジビエの流通やニホンミツバチ養蜂などの活動も行う。著書「これから始める人のための狩猟の教科書」、「イラストマニュアルはじめての養蜂」など(共に秀和システム)。
ブログ「孤独のジビエ」http://kodokunogibier.blog.fc2.com/
Twitter:@rakurou21

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