東雲輝之【新鮮すぎる魚が食べたい。】-vol.51- 初春の『イセエビのお味噌汁』

新年最初の釣りはイセエビで縁起よく! 初心者でも楽しく釣って、おいしく食べる方法を、アウトドアライター・東雲輝之さんに教わる連載です。

あけましておめでとうございます。関東では7日までが松の内だとされていますが、私の住んでいる九州地方は15日ぐらいまで門松など松飾りを飾っているので、ひとまず新年のご挨拶をば。さてさて、ハレの日に供される魚といえば、タイやブリ、サケが定番ですが、見た目がおめでたく華やかで、その味わいもひとしおの縁起物といえば、やはり「イセエビ」ではないでしょうか?

『イセエビ』ってどんなエビ?

イセエビは大型のエビで、日本の房総半島以南の西太平洋沿岸部、九州、朝鮮半島南部、台湾などに分布しています。漢字で「伊勢」と書かれていることからもわかるように、伊勢(三重県)はイセエビの主産地のひとつですが、その語源は「磯(イソ)でたくさん獲れるから」や、「捕まえると威勢(イセイ)よく跳ね回るから」など様々です。

イセエビは「鎌倉時代の大鎧」のような見た目から、古くは「鎌倉蝦」や「具足海老」とも呼ばれており、武家で“勝負運”や“仕事運”を高める験(げん)担ぎに食べられていたことから、現在でもハレの料理として親しまれるようになりました。

どこで釣れるの?

超高級食材なので人跡未踏の大海原のような場所でしか釣れないイメージのあるイセエビですが、実は意外と近場の磯や防波堤などに潜んでいます。ただしイセエビは日が沈んだ直後や、日が昇る直前に活動する薄明薄暮性と呼ばれる習性を持っているので、空がイセエビと同じ海老色(暗紫色)になる時間帯を狙いましょう。

イセエビ釣りで注意しておかなければならないのが、漁業権の問題です。イセエビは成長が遅く、すみかをあまり変えない魚なので、乱獲されると一帯に棲むイセエビはすぐに絶滅してしまいます。よって漁港付近の磯や防波堤ではイセエビ釣りを禁止する場所も多いので、そのような旨が書かれた看板が辺りに無いか、事前によく確認しておきましょう。

どうやって釣るの?

イセエビを釣る仕掛けは、市販のセットなども売られていますが、カサゴやメバルなどのロックフィッシュ(海底の岩礁、海草の間や瀬などに棲み、遠くへ移動することのない生息範囲の狭い魚)を釣る、ブラクリと呼ばれる仕掛けがオススメです。

餌は、カサゴやメバルと同じく石ゴカイなどの虫エサによく食いついてきますが、小さな魚に邪魔されることも多いので、その海域に棲んでいる貝を使ったほうがよいでしょう。船のロープにくっついているムラサキイガイ(ムール貝)や、岩場に“傘”のような見た目でひっついているヨメガカサ、小さな巻貝のイシダタミなどを、石で割って身を取り出し、針に引っ掛けます。

主役は“殻”からの出汁

イセエビは死んでから時間が経つと身がぼろぼろになって美味しくないため、生きたまま持ち帰りましょう。クーラーボックスに海水を1/3ぐらい入れて、氷は入れずに保管します。

持ち帰ったイセエビは、頭の隙間から包丁の先を入れて締めましょう。このときイセエビはドッタンバッタン大暴れするので、殻の針で手を切られないようにタオルか厚い軍手を使ってしっかりと握りましょう。ちょっと怖いと思う人はまず冷凍庫で5分ほど冷やし、大人しくなってから作業します。



完全に動きが止まったら、頭の付け根の肉を刃先でぐるっと切り、頭をねじって取り外します。頭を外したら、背中と腹の殻のつなぎ目をハサミで切って、身を取り出します



ちなみに海外では、このように頭をねじって切り離したり、生きたまま熱湯に入れたりする調理方法は“非人道的である”として禁止されている国もあります。「その通りだ!」と思われる方は、イセエビの目の間に刃を入れて、頭ごと胴体を真っ二つに割るようにして捌(さば)きましょう。

身はブツ切りにして刺身でいただきましょう。直前まで生きていたイセエビの身は透明で弾力があり、時間が経ったものとは驚くほど甘味が違います。

もちろんイセエビの殻は捨ててはいけません! 縁起物でもあるので、甲殻をたわしでよく擦(こす)って洗い、お刺身の飾りにします。



また、刺身を食べ終わった後の殻は、水からゆっくりと煮て出汁をとり、味噌を入れて汁物にしましょう。イセエビの殻からは旨味だけでなく、ミソからも濃厚な甘味が出ます。



長生きするものは25~30年も生きるというイセエビのエキスをいただいて、今年も一年、元気よく頑張りましょう!



【新鮮すぎる魚が食べたい。】は、毎週金曜日に掲載します。
 

文・写真・イラスト:東雲輝之(しののめ てるゆき)/1985年生まれ、福岡県北九州市出身。猟師&ライター。狩猟や釣り、養蜂など、自然から食を得て楽しむ“キャッチ&イート”をメインテーマとしたアウトドアライター。ジビエの流通やニホンミツバチ養蜂などの活動も行う。著書「これから始める人のための狩猟の教科書」、「イラストマニュアルはじめての養蜂」など(共に秀和システム)。
ブログ「孤独のジビエ」http://kodokunogibier.blog.fc2.com/
Twitter:@rakurou21

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