東雲輝之【新鮮すぎる魚が食べたい。】-vol.53- 冬枯れ前の良いタコ釣り『イイダコのサンナッチ』

冬の夜の海に潜む魅惑のイイダコを韓国風のお刺身で! 初心者でも楽しく釣って、おいしく食べる方法を、アウトドアライター・東雲輝之さんに教わる連載です。

大寒を過ぎ、海中も次第に冬の冷たさが厳しくなってくると、それまで浅瀬にいた魚たちは越冬のために、暖かい海底に向かって移動を始めます。釣果の上がらない、俗に「冬枯れ」と呼ばれるこの時期に、逆に浅瀬に向かって集まってくるのが、小さなタコとして知られる「イイダコ」です。

『イイダコ』ってどんなタコ?

イイダコは、東アジアの浅海に広く生息しているタコの仲間で、他のタコが優に1mを超える大きさがあるのに対し、イイダコは全長10~30cm程度しかない小型の種類です。

タコは同じ種類でも体の大きさが違い、さらに見た目もそっくりなため見分けが付きにくいのですが、イイダコは腕の間のひだに金色の丸い輪が二つ付いていること、両眼の間に長方形の模様があることで見分けることができます。冬から春にかけての産卵シーズンに、体の中に米粒状の卵をたっぷりと持つことから、「飯(いい)ダコ」という名前が付けられたといわれています。

どこで釣れるの?

イイダコは沖に生息しているタコですが、寒さが厳しくなると産卵の準備のために、浅瀬へ多く集まってきます。夜行性なので危険な夜釣りをしなければなりませんが、イイダコは流れが緩やかな港の中のような場所を好むので、比較的足場が安全な場所で釣りを楽しむことができます。

どうやって釣るの?

職業としてイイダコを獲る漁師さんたちは、カプセルのような容器を海にたくさん沈めておき、イイダコが中に棲み着いたタイミングで引き上げる、蛸壺漁を行います。しかし蛸壺は一般人がレジャーで使うのは法律的に問題があるため、釣り人の間ではイイダコテンヤと呼ばれる小型のルアーがよく使われます。

テンヤは、小さなオモリにかぎ針の付いた仕掛けです。これを海中に落とすと、ヒラヒラと動いて沈んでいくので、遠くにいるイイダコを引き寄せる効果があります。さらにイイダコは、好物であるシャコやエビに似た白色に反応するので、テンヤに白い板やラッキョウ、白ネギなどをくくりつけておくと、さらに引き寄せる効果がアップします。

釣り方は単純に、足元の海面にイイダコテンヤを落としてから、「トントン」と海底を叩くように動かしましょう。イイダコに限らずタコやイカは、不規則に動く物に興味を惹かれる習性があるので、「トントン……トーン!…トトトン」のように、トリッキーなリズムを刻んでみましょう。

イイダコの下処理

マダコやミズダコと呼ばれる大型のタコの場合、塩でヌメリを落として、下茹でをしなければいけませんが、小型のイイダコは簡単な下処理で調理できます。タコやイカを捌(さば)くのは難しそうに感じますが、慣れてしまえば普通の魚よりも簡単です。


韓国風踊り食いも美味

イイダコといえば、やはり酒と醤油、みりん、砂糖で味付けして炊いた煮付けが最高です。ただしイイダコは、他のタコに比べて味が染みやすいので、加熱しすぎると本来の甘みを損ねてしまうので注意しましょう。イイダコに熱が通ったらいったん火を落とし、余熱で温めるようにして調理するのが、イイダコを美味しく炊き上げるコツです。

1~2月に釣れるイイダコは、まだ卵を持っていないことも多いので、その場合は韓国風のタコの刺身、サンナッチで食べるのもオススメです。サンナッチは、新鮮なイイダコに塩をまぶし、しっかりとヌメリを落としたらぶつ切りにして、ゴマ油とコチュジャン、お酢を混ぜたもので和えていただきましょう。韓国のサンナッチは、テナガダコと呼ばれる種類のタコを使いますが、小型のイイダコのほうが柔らかく、甘みも強いので生食に向いています。





【新鮮すぎる魚が食べたい。】は、毎週金曜日に掲載します。
 

文・写真・イラスト:東雲輝之(しののめ てるゆき)/1985年生まれ、福岡県北九州市出身。猟師&ライター。狩猟や釣り、養蜂など、自然から食を得て楽しむ“キャッチ&イート”をメインテーマとしたアウトドアライター。ジビエの流通やニホンミツバチ養蜂などの活動も行う。著書「これから始める人のための狩猟の教科書」、「イラストマニュアルはじめての養蜂」など(共に秀和システム)。
ブログ「孤独のジビエ」http://kodokunogibier.blog.fc2.com/
Twitter:@rakurou21

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