【コラム】焼肉の焼き方 7つのキホンの心得―これであなたも焼き奉行!

「焼肉を一緒に食べる男女はデキている」。そんな風にささやかれたのも今は昔。今や「焼肉」は老若男女、大勢で食べても一人で食べても、みんな大好き! スタンダードな日本の食文化の一つとなっています。肉を焼いて食べる、というシンプルな食べ方ですが、実はその焼き方・食べ方次第では、よりおいしくもまずくもなるという奥深い料理でもあります。そこで本当においしい焼肉を食べるための7つの心得を、『焼肉美味手帖』を監修した「焼肉芝浦」オーナーの藤枝祐太さんに教えていただきましょう。

焼肉は調理の仕上げを客が行う食べ物

普段何気なく訪れている焼肉店。しかし、肉の”正しい”焼き方、”美味しくなる”焼き方を知っているという人は意外と少ないのではないだろうか?
 焼肉は調理の仕上げを客が行う食べ物。焼き方次第では1000円の肉の価値を3000円にすることも、逆に100円にしてしまうことだってあるのだ。
 そこでまずは焼肉の基本的な心得を叩き込んでほしい。これを読めばあなたも焼き奉行への道を歩みだせるはずだ。

1 肉は室温にしてから焼く!

焼肉店でテーブルに運ばれてきた肉。おいしそう!と網の上に載せるその前によく見てみよう。肉が冷たくて表面が硬かったりすることはないだろうか?
 冷蔵庫から出されたばかりの肉はまだ温度が低いので、中まで火が通りにくい状態だ。このまま焼きはじめてしまうと外側ばかりが焼けて中は冷たいままという、理想的な焼き上がりとはほど遠い肉になってしまう。もしも冷たいままの肉が出てきた場合は、まず、はやる気持ちをぐっと抑えるべし。しばしの間おつまみとドリンクを楽しみつつ、肉が常温に戻るのをじっと待とう。

タンは冷たいまま出されることが多い部位。

2 サシと厚みで焼き加減を変えろ!

いざ肉を焼くとなったそのときに、ふと「果たしてどれくらいの焼き加減が最適なのか?」と悩んだことはないだろうか。
 ごく簡単な目安としては「赤身の肉はさっと焼き、サシの沢山入った肉はしっかり焼き」が基本だ。赤身肉は火が入り過ぎるとどんどん硬くなってしまう。一方サシの入った肉はある程度焼いても柔らかさが失われないし、何より和牛の脂は火をしっかり通すことで独特の甘みがより際立つからだ。
 また「薄い肉はさっと焼き、厚い肉はじっくり焼き」も覚えておきたい。炭火ならば火の強いところと弱いところを見極め、ガス火ならば火力調整を活用することも大事だ。

まずは肉を見極めることが大事。

3 ホルモンは場数を踏むべし!

ホルモン類にも上述のような焼き方の目安はあるのか? 結論からいうとこれは非常に難しい。ロースやバラなどの正肉と違い、ホルモンは部位によって最適な火加減がバラバラ。さらにお店ごとのカットの仕方によっても火の通り方がまったく変わってくるので、とても一言ではコツを伝えられないのだ。
 残念ながらこればかりはもう場数を踏むしかない。ホルモン通の友人にあれこれ訊ねてみたり、自分で少しずつ焼き加減を変えて試したりしながら研究してみよう。一つだけアドバイスをするならば、新鮮なホルモンに出合ったら思いきって軽めの焼き加減にトライしてみるのがお勧めだ。

ホルモンの世界はどこまでも奥深いのだ。

4 迷ったら店員さんに訊け!

正肉でもホルモンでも言えることだが、焼き加減に迷ったら店員さんにアドバイスを求めるのが一番良い方法だ。「当たり前だ」と思われるかもしれないが、これは意外と重要。というのも、肉のことをしっかり答えられる店員さんがいるかどうかは、よい店を見分けるバロメーターの一つでもあるからだ。
 肉の最適な焼き加減はもちろん、その日お勧めの肉、知らない名前の部位についてなど、少しでも疑問を持ったら迷わず店員さんを呼んで訊ねてみよう。詳しい説明を、眼を輝かせながらしてくれる人に出会えたらラッキー。間違いなくよいお店だといえる。場合によっては、それがきっかけで思わぬ裏メニューに出合えるかもしれない。

カウンター焼肉だと店員さんと話しやすい。

5 ベストな打線を組み立てろ!

焼肉では肉を食べる順番も重要だ。何故なら組み立て次第では同じ肉でも全く違う印象になるからだ。
 基本は塩からタレ、味の薄いものから濃いものへ。最初はタン塩、最後に一番上質な肉をタレで、という人が多いがこれはセオリー通りの打順といえるだろう。
 応用編としては、1)最初に上質な肉(ただし脂が強すぎないもの、例えばヒレなど)を配することでインパクトを最大化する 2)タレの途中で敢えて塩モノを挟んで舌をリセットする 3)合間合間にホルモン類のしゃきっとした食感で口中をリフレッシュさせる…など。ほかにも様々な組合せが考えられる。是非本書を参考に独自の方程式を編み出してほしい。

ヒレ肉はスターターに最適。

6 塊肉には「低温調理」で挑め!

焼肉店でもまれに大きな塊肉が出てくる場合がある。焼き手の技量を披露する絶好の舞台だ。そんな機会があったら是非試してほしいのが「低温調理」だ。
 これはタンパク質が凝固し始める60℃前後の温度帯で火を通すという考え方で、近年フランス料理店等を中心に活用されている。専門店では専用の調理器が使われたりするのだが、焼肉のロースターで応用するならなるべく弱火でじっくりと、時に火から下ろして休ませながら時間をかけて仕上げていくといい。
 手間はかかるが、上手に出来ればしっとりとしながら内部には驚くほどの肉汁をたたえた焼き上がりになるはず。特に赤身の塊肉に適した手法なので是非お試しあれ。

塊肉を上手に焼くのは男のロマン。

7 レモンを最大活用せよ!

焼肉店でよく見るカットレモン。皆さんはどのように使っているだろうか? 搾って塩味の肉につけるだけという方がほとんどだろうが、実は他にも応用が利く便利アイテムなのだ。
 例えば焼き始める前の網にひとしずく垂らせば網がどれくら熱くなっているかを測る目安になる。また、肉にかかっている塩胡椒やタレが多すぎると感じたときはカットレモンでさっとひとなで。余分な調味料を落とすワイパー代わりにもなる。
 さらにお勧めの使い方はこれ。つけダレがどうも甘過ぎると感じたら、そのタレにレモンを搾ってみて。酸味が効いてさっぱりと食べやすくなるはずだ。このようにレモンを最大活用すればより自分好みの味を楽しめるのだ。

レモンを使いこなせればあなたも焼肉通!?

監修:藤枝祐太(ふじえだ ゆうた)/服部栄養専門学校卒。イタリア料理店、大手飲食店商品開発を経た後、2007年、「焼肉芝浦 駒沢本店」オープン。2008年株式会社FM設立、2010年「和牛食堂まるに 新橋店」、「焼肉芝浦 三宿店」、2013年「肉の藤枝」と事業を拡張、”生きた命を余すことなく大切に頂く”をコンセプトにA4ランク以上の雌の和牛のみを使用したこだわりの3店舗と、小売りから卸まで手がける精肉店を運営。店舗の「芝浦」という名は、魚介類でいえば築地に当たる、東京・品川駅港南口にある東京都中央卸売市場食肉市場の呼称。独立前に半年間、上質な肉を見る目を養うために、毎日無給でこの地に通い続けた思い出の食肉市場に、「焼肉芝浦」の店名は由来する。肉の仕入れは今も自ら全国からの一頭買いにこだわる。
http://food-majority.co.jp/

撮影:中村香奈子(メイン画像)

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