純米酒を1升造るのに必要な玄米と田んぼの面積を知っていますか?

桜の季節の日本人らしい風習と言えば、お花見ですね。今年の花見酒は日本酒にしませんか。今日は「1日1合純米酒! 田んぼの未来を燗がえる!」をモットーにご活躍中の酒食ジャーナリスト、山本洋子さんがまとめた本『厳選日本酒手帖』から、意外と知らない日本酒と田んぼの関係についてご紹介します。「純米酒1升1本飲めば、田んぼ1坪分(2畳)飲み干したことになります」。
作付面積第2位の酒米「五百万石」は、「山田錦」に首位を譲るまで長くNo.1だった。最盛期に生産高が500万石を超えたのを記念して五百万石と名づけられた。加賀百万石にも使われる「石」。イシじゃなくてコクと読む。コクってなんだ?
1石(いっこく)とはその昔、大人1人が1年間に食べる米の量だった。つまり加賀百万石は100万人が食べていける国を意味する。そして1石がとれる田んぼの面積を1反(いったん)と呼ぶ(妖怪の“一反”木綿とは別単位)。生活に密着したわかりやすい単位が日本にはあったのだ。
2018年度に廃止が決まった減反政策だが、今なお100万ha以上の田んぼで米が栽培されていない。反数にしたら1,000万反、つまり1,000万人が食べていける面積が遊んでいる。もったいない。
ここでちょっと酒を計算してみよう
米(米麹)+水 = 醪(もろみ)
醪 = 酒+酒粕
純米酒 = 米+水−酒粕
純米酒造りで、米と水から醪を造り、醪を搾って酒粕を除くと純米酒の出来上がりだ。
純米酒造りだと、水は米の約1.4倍、「粕歩合」という酒粕の比率は約0.3倍(※1)。そこから計算すると、仕込んだ米の約2.5倍の純米酒ができる。
逆に計算すると、1升の純米酒は1kgの玄米から造られる(※2)。
農薬化学肥料に頼らずスカスカと間隔を空けて育てる田んぼでは、平均1反あたり6俵(360kg)という。すなわち純米酒360本分だ。1反は約1,000平方メートルだから、360で割ると、純米酒1本造るのに必要な田んぼは約3平方メートル、
つまり1坪・2畳分!
それでは減反中の田んぼを活かして純米酒を造った場合、1升瓶36億本だ。結構多いような気がするが、日本の成人人口1億人で割れば、1人年間36本、1日当たりたったの1合じゃあないか。
1日1合純米酒!
純米吟醸、純米大吟醸ならもっといいね!
※1 粕歩合は純米より純米大吟醸の比率が高くなる。
※2 70%精米の純米酒の場合
www.yohkoyama.com
撮影:森谷康市
(写真は、農薬化学肥料を極力減らした天の戸・森谷杜氏の美山錦田圃。明け方、細かい霧をまとったクモの巣が逆光に浮かび上がる。「そろそろタニシを食べにカラスやサギがやってくる頃」と杜氏。)
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