イタリアで食べたい、唯一無二の秘密のレシピが気になる伝統菓子とは?

そろそろ夏の旅行計画を立てる時期。美味しいお菓子を食べ歩くイタリア旅行はいかがでしょうか。本日は、イタリアを拠点に幅広く取材・執筆・撮影を手がける池田愛美さんと池田匡克さんの著書『Dolce! イタリアの地方菓子』から、おすすめの伝統菓子店のひとつをご紹介します。

伝統菓子にはふたつのタイプがある。ひとつは、その土地でさまざまな人や店によって作られてきたもの。作り手によってレシピにバリエーションはあるものの、出来上がりは大体同じだ。そしてもうひとつは、とある店(あるいは修道院)が作り出し、その味が評判となり、しかしレシピは秘密、ゆえにその味を求めて人々が集まってくる唯一無二の菓子だ。モデナ郊外のヴィニョーラという街の「トルタ・バロッツィ」はまさに後者のタイプである。

生まれは19世紀終わり、ヴィニョーラの中心地で菓子店を営んでいたエウジェニオ・ゴッリーニは土地の銘菓を生み出すべくトルタの研究を重ね、「トルタ・ネーラ」なるアーモンドとコーヒーの入ったチョコレートケーキを開発する。研究熱心なエウジェニオはその後も理想の配合を求めて試作を繰り返し、ついに思うとおりのトルタを完成。1907年、地元が輩出した建築家ヤコポ・バロッツィ生誕400年の折に、その著名な建築家の名をつけて新たに売り出した。

美味しさはもちろんのこと、作ってから40日間と日持ちがし、また、作りたても、日がたってからもそれぞれの美味しさが楽しめることから評判となった。さらにそのレシピは秘伝とあってなおさら人気を煽ったのである。以来現在に至るまでレシピは門外不出、菓子作りを趣味とする人々は自己流トルタ・バロッツィに挑戦してはそのレシピをネットに公開するといった具合で、堂々の銘菓ぶりを発揮している。



レシピは門外不出、コーヒー風味のチョコレートケーキ。



ヴィニョーラは桜の地としても有名。ゴッリーニでは春にはピンク色に包装されたコロンバ菓子を売る。



昔ながらの雰囲気が残る同店は、旧市街の広場に面し、街のモニュメント的存在。店内には、創業者エウジェニオ・ゴッリーニの写真が飾られている。




PASTICCERIA GOLLINI(パスティッチェリア・ゴッリーニ)
Piazza Garibaldi, 1/N Vignola (Modena)
Tel.059-771079
www.tortabarozzi.it

 

文:池田愛美(いけだ まなみ)・写真:池田匡克(いけだ まさかつ)/出版社勤務を経て98年に渡伊、雑誌を中心にイタリアの食、旅、職人仕事などを取材執筆。共著に『アマルフィ&カプリ島 とっておきの散歩道』『フィレンツェ美食散歩』(ダイヤモンド社)、『伝説のイタリアン、ガルガのクチーナ・エスプレッサ』(河出書房新社)、『サルデーニャ!』(講談社)などがある。フィレンツェ在住。

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