おいしいコーヒーの味わいを保つために、プロが人知れず気をつけていることとは

コーヒーを注文するときに、自分好みの味わいを探すのに苦労していませんか。産地を目安に、自分好みだろうと予想して頼んだものの、飲んでみたら何か違う……ということもあるかもしれません。同じ産地でも味わいが一定でない理由や、コーヒーのプロがどんなことに注意を払っているのか、世界No.1のコーヒーハンター、川島良彰さんに教えていただきました。

一国のなかでも環境、作り方いろいろ

かつてはブラジル、コロンビアという国名がついたコーヒーがメニューに並び、味わいの違いを表している時代がありました。それは提供できるコーヒーが限られていたことも原因の一つでしょう。また生産国からの情報が乏しかったこともありました。しかし現実には、生産国には多くの農園があってそれぞれ栽培環境が異なるため、収穫される実の品質が違います。

また植えている品種や生豆への加工方法も異なるため、当然味わいも多様となり、国名だけでは目当ての味を選べないのです。

品種についても同じです。氏より育ちの側面が大きく影響し、条件が異なれば味わいも変わります。たとえばお米で言うと、同じコシヒカリでも、栽培地や育て方、育てた人、また新米か古米かで味が異なるのと同じです。

今ではさまざまなシングルオリジン(※)のコーヒーが販売されていますが、正確に言えば、これでさえ年によって自然環境は変わり、当然味も変わるはずです。ワイン造りと同じです。でもこうした「違い」を楽しむのもコーヒーの楽しさのひとつ。飲んだコーヒーを記録していくことで、自分なりのおいしさの基軸を見つけていきましょう。

※シングルオリジン…シングルは「混ぜ物がない」の意味。産地だけでなく、特定のエリア、農園、農園内の限定された畑、さらに品種などを特定できて、生産現場をある程度まで遡れる情報を持つ高品質のコーヒーという概念で使われています。もしひとつの農園だけの豆ならシングルエステート、単一栽培種の豆だけならシングルカルティバー、ひとつの畑の豆だけならシングルロットと呼ばれます。

焙煎、抽出でも大変身

コーヒーの面白いところは、同じ生豆を使っても保管方法や焙煎、抽出で味にかなり違いが出るところです。コーヒーを淹れ、カップに注ぐ最後の段階まで味は揺れるわけです。またその日の体調や天気、お店の雰囲気までが関係するので、コーヒーの味わいはまさに一期一会です。

コーヒー農園や精選工場、ロースターなど、コーヒーのプロの重要な任務は、揺れやすいコーヒーの味わいを一定にすることでもあります。味の変化でブランドの信頼を失わないように日夜努力しているのです。


完熟した実だけを収穫しようとしても、熟し足りないものや茎が付いたものが混ざってしまいます。それを取り除くか除かないかでも味は変わります。


果皮付きで乾燥させる「ナチュラル」(写真左)と、果肉除去して乾燥させる「ウォッシュト」(写真右)では風味が違います。見た目も異なり、焙煎豆の筋が色づいているのがナチュラル、白いのがウォッシュト。


たとえ同じ山で収穫されたコーヒーでも、高度や斜面によって自然条件が違います。特に朝日があたるかどうかは出来に影響します。

おいしいコーヒーとの出合いは一期一会。心して、そのときの一杯を味わいたいものですね。

 

川島良彰(かわしま よしあき)/1956年静岡市に生まれる。生家は珈琲焙煎卸業。コーヒーの香りのなかで幼少期を過ごし、中学生のときには自室でサイフォンコーヒーを淹れていた。高校卒業後、エルサルバドルへ留学したのちエルサルバドル国立コーヒー研究所に入所し、コーヒー栽培・精選技術を習得する。1981年UCC上島珈琲株式会社入社。世界各地の農園開発を手掛け、帰国後、執行役員農事調査室長を務め、2007年同社退社。2008年株式会社Mi Cafeto(現:株式会社ミカフェート)を設立。40年にわたり世界のコーヒーに関わり、世界各地からおいしいコーヒーを探し出す世界でもNo.1のコーヒーハンターとして、日本のコーヒーマーケットに革命をもたらしている。株式会社ミカフェート代表取締役社長。ジャパンインターナショナルコーヒーインスティテュート校長。日本サステイナブルコーヒー協会理事長。東京大学コーヒーサロン共同座長。JAL日本航空コーヒーディレクター。カリフォルニア大学デイビス校 コーヒーセンター・アドバイザリー・ボードメンバー。タイ王室メーファールアン財団コーヒーアドバイザー。著書に『私はコーヒーで世界を変えることにした。』(ポプラ社)、『コーヒーハンター』(平凡社)。監修『僕はコーヒーがのめない(ビッグコミックス)』(小学館)。

写真:川島良彰、伏見早織

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