スギアカツキ【たまごのはなし】第31回 猛暑疲れを癒す、ふわふわ優しい卵とじ素麺

この夏も酷暑が続きましたが、皆さんお体は大丈夫ですか? 暑い時こそ、体に優しい、温かいものを。この連載では、「たまごが一番大好きな食材」という食文化研究家のスギアカツキさんが、その経験と好奇心を生かしたさまざまなアプローチで「たまご」を掘り下げます。

蒸し蒸しと猛烈に暑い夏。心も体も疲れ切ってしまう日って、ありますよね。そんな1日をねぎらうべく、爽快にビールで乾杯……もいいですが、もっと優しく、もっと柔らかく。フワフワと心身を鎮めたい時が、私にはあります。そしてそんなシーンにありがたい食事こそが、「あったか煮麺(にゅうめん)」です。





暑気払いとして味わう、ツルツルとのど越しのよい涼しげなものではなく、温かい汁ものの麺料理。ちょっと軟らかめに茹でた素麺に、強い食材(食感・香り・存在感)を限りなくそぎ落とした、シンプルな熱々のだし汁を注ぐような、優しく家庭的な感じ。具体的に言えば、卵をたっぷり惜しみなく使って作る「あんかけ卵とじ」が理想的です。





お出汁は、気負わずに。顆粒だしでも構いませんし、市販の素麺つゆやめんつゆを、少々薄めて使用するのでもよいでしょう。だけどしっかり温めて、片栗粉でとろみをつけること。そして、1人分につき卵を2個(1個じゃダメ!)溶きほぐして、強火でふんわり仕上げること。それさえ守れば、ほぼ完成です。





添える薬味は、お好みのものをふわっと乗せて。青ねぎ、白ねぎ、しょうが、ごま、のり……、選択肢はいろいろある中で、私が最近気に入っているのが、“削りかまぼこ”。イメージ的には、花鰹のようなもので、桃色のかまぼこを乾燥させて薄く削ったものなのですが、この品良くフワフワとした食感や、ヒラヒラと花びらのような美しさが、卵とじの世界観にかわいらしく寄り添います。気になる人は、魚の専門店やネットショッピングで探してみてくださいね。





そもそも「素麺」の歴史は古く、日本では奈良時代に中国から伝わったとされ、“おもてなしの料理”として、特別な日のごちそうとして食べられていたそう。そんな歴史を背負っているおかげなのか、身近な食卓で愛されるようになった現代でも、食べる人を品良く癒してくれるような、そんなパワーを秘めている気がします。

私はこの、温かくて柔らかくて、卵たっぷりの煮麺を食べるだけで、自分の中に知らず知らずに溜まってしまった“淀み”のようなものを優しく洗い流したり、人間関係などで擦り切れてしまった、本来大切にしたい“自分らしさ”を、フワフワ修復できるような感じがします。

どうぞご自愛ください。

そんなメニューなのかもしれません。今年の夏も終りまで、無理なく、元気に過ごせますように。


【たまごのはなし】は、ほぼ隔週火曜日に掲載します。

 

文・写真:スギアカツキ/食文化研究家。長寿美容食研究家。東京大学農学部卒業後、同大学院医学系研究科に進学。基礎医学、栄養学、発酵学、微生物学などを幅広く学ぶ。現在、世界中の食文化を研究しながら、各メディアで活躍している。『やせるパスタ31皿』(日本実業出版社)、女子SPA!連載から生まれた海外向け電子書籍『Healthy Japanese Home Cooking』(英語版)が好評発売中。
「みなさん、一番大好きな食べ物ってなんですか? 考えるだけで楽しくなりますが、私は『たまご』という食材に行きつきます。世界中どこでも食べることができ、その国・エリア独特の料理法で調理され、広く愛されている。そしてなにより、たまごのことを考えるだけで、ワクワクうれしい気分になってしまうんです。そこで、連載名を『たまごのはなし』と題し、たまごにまつわる“おいしい・たのしい・うれしい”エピソードを綴っていきたいなと思います」
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Twitter:@sugiakatsuki12

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