分とく山・野崎洋光さんに教わる“料理上手になる食材のきほん”―里芋編

もう8月も終わり。朝晩に秋の気配を感じるようになってきました。“食欲の秋“はすぐそこに。そこで、東京・南麻布「分とく山」総料理長の野崎洋光さんが、料理人として長年にわたり食材と向き合い、日本各地の農家を訪ねるなどして蓄積されてきた食材の知識を、集大成としてまとめた本『料理上手になる食材のきほん』から、秋に食べたい食材のひとつ、里芋をご紹介します。後半では野崎さんならではの美味しい煮ころがしの作り方もご紹介しています。

里芋のきほん

サトイモ科。タロ芋の一種で、原産地は東南アジア。
日本へは縄文時代に渡来。江戸時代にさつま芋が普及するまで重要な食用芋で、月見などの行事に供えてきました。
食べるのは肥大した地下茎。親芋の周囲に多くの子芋ができるため、子孫繁栄の縁起ものとしておせちに使われます。

種類により、食べる部分が「親芋」「子芋と孫芋」「両方」の三通りで、子芋を食べるのが一般的。
ほかに小型・球形の「石川早生(いしかわわせ)」、曲がっている「海老芋」、親芋と子芋がかたまり状の「八頭(やつがしら)」などが。「ずいき」は里芋の葉柄(ようへい)で、その付け根に付くのが「むかご」です。

【選び方】
少し湿り気があって、しっかり固いものを。

【旬の時季】
一年中出回りますが、9~11月が旬。

【産地】
千葉県、埼玉県、宮崎県などが主な栽培地。

【栄養】
芋類では低カロリー。ビタミンB群、Cなどを含みます。ぬめり成分のムチンは胃腸を助けます。

【料理のコツ】
皮をむくときは、泥を洗って熱湯で3分ゆで、水にとって、アルミ箔を丸めてこすると難なくむけます。
「六方むき」のように形よくむきたい場合は、水気があるとぬめりが出てすべりやすいので、布巾で拭いて乾いた状態で行います。
煮ものでは、里芋特有のぬめりがあると調味料が浸透しにくく、煮汁も吹きこぼれやすくなるので、下ゆでして除いてから使うのが一般的。ゆで湯に米ぬか、または米一つまみを加えるか、米のとぎ汁を使って八分(ぶ)通り下ゆでし、ざるに上げて湯気を飛ばします。水にさらすと水っぽくなるので避けましょう。
含め煮や煮ころがしなど、煮ものにするときは、煮くずれないよう、80℃くらいをキープします。けんちん汁や、新潟の郷土料理「のっぺい」、山形の「芋煮」では、里芋を下ゆでせずに直接加え、ぬめりでとろみを出します。
一番シンプルな料理は、蒸して塩をふった「衣(きぬ)かつぎ」。わさび醤油や生姜醤油で味が引き立ちます。

里芋の煮ころがし


材料(2人分)
 里芋……10個
 烏賊げそ……1ぱい分(または煮干し3本)
 煮汁
  水……1と1/2カップ
  酒……1/2カップ
  砂糖……大さじ2と1/2
  醤油……大さじ1と1/3

作り方
1. 里芋は皮付きのままよく水洗いし、たっぷりの湯で3分ゆでて冷水にとる。アルミ箔を丸め、こすって皮をむく。黒ずんでいる部分は包丁で取り除く。
2. だし用の烏賊げそは、湯にさっと通して霜降りにし、水にとって水気をきり、ぶつ切りにする。煮干しの場合は頭と腹わたを取り、半分に割る。
3. 鍋に煮汁の材料を合わせて、1を入れる。2も入れて落とし蓋をし、火にかける。煮汁が少なくなり、里芋に竹串がスーッと通るようになったら火を止めて、汁ごと器に盛る。げそは、はずしてもよい。

野崎洋光(のざき ひろみつ)/東京・南麻布の日本料理店「分とく山」総料理長。1953年、福島県古殿町生まれ。武蔵野栄養専門学校を卒業、栄養士でもある。従来の考え方にとらわれない今の時代に合った料理哲学を、やわらかな語り口で分かりやすく説く、稀有な料理人。常に家庭料理の大切さ、家庭でしか作れないおいしさを唱えている。『和食のきほん、完全レシピ』(小社刊)、『日本料理 前菜と組肴』(柴田書店)など、著書も多数。

撮影:日置武晴

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