三ツ星シェフに聞く、刺身をおいしくつくるために知っておきたい4つのポイント

新米の季節、炊きたてのご飯に気の利いたお刺身があれば、それだけでごちそうです。刺身包丁も持っていないし、美味しくつくれるのか不安……と、ついスーパーで「お造りパック」を手にとってしまうかたも多いのでは。でもお刺身好きなら、自分で切って盛りたいですよね。そこで、東京・銀座の名店「銀座 小十」奥田透料理長に、お刺身を美味しくつくるための4つのポイントを教えていただきました。「包丁使いの技とキレが大切な刺し身は、家庭料理ではなじみが薄いかもしれませんが、基本はぜひ覚えておきたいもの。何度か試して、上達するものです」。

1. 刺し身用の包丁は?

プロの料理人なら「柳刃(やなぎば)包丁」が一般的です。先端が尖って幅が狭い片刃の包丁で、魚の組織をこわさないよう刃そのものが薄く、刃元から刃先までを使って切るので刃渡りが長いのが特徴です。ご家庭用では、魚をおろしたり堅い骨を切る厚手の出刃包丁や万能の三徳包丁を使うかたが多いかもしれませんが、刺し身好きなら柳刃包丁をそろえるとよいでしょう。


左が柳刃包丁、右が出刃包丁。

2. 包丁の持ち方と姿勢

刺し身は包丁を刃元から入れて手前に引き、刃先まで使って切ります。ひじを後ろにスムーズに動かすため、体を調理台から10cmほど離し、右足は少し後ろに引いて斜めに構えます。

包丁の持ち方にも留意を。柳刃包丁も出刃包丁も、まず柄を中指、薬指、小指の3本でしっかり固定すること。親指は添え、人差し指は峰に当てるだけ。包丁と人差し指とを固定するような感覚です。これで刃先の方向が定まり、後ろに自由に引けます。そして手首だけ動かすのではなく、腕全体で引きます。


包丁の峰の部分に人差し指を当てて持つことが大切。

3. 赤身魚、白身魚それぞれに合った切り方を

魚の身質が柔らかいか堅いか、身が厚いか薄いかなどで切り方を変えます。まぐろやかつおなどの赤身の魚は身が柔らかく、薄切りにすると歯ごたえがなくなるので、平造りや角造りなど厚く切るのが一般的。

一方、鯛やひらめのような白身魚は、身がプリプリとして歯ごたえがあるので、そぎ造り(薄造り)にします。またひとつのさくの中でも、身が薄い部分では包丁を寝かせ、身が厚くなったら包丁は立てるなど、1切れの大きさがそろうようにします。

あじなどの青魚は赤身魚と白身魚の中間の性質なので、平造りや細造りが適します。


鯛やひらめのさくは、部分によって身の厚さが違う。両端の身の薄い部分は包丁を寝かせ(写真上)、中央の厚い部分では包丁を立てぎみにする(写真下)。

4. 種類や切り方の違う刺し身を盛る

刺し身の盛り方には一種盛りと、二種盛り、三種盛り、多種盛りなどがあります。二種以上盛りでは、魚の種類、身の色、切り方の違うものを盛り合わせるのが理想的。その違いを際立てながら、少しずらして重ね、「けん」「つま」などの野菜をあしらいながら盛り込みます。

平皿に数種盛りする場合、奥には安定感のある濃い色の刺し身を小高く盛ります。手前は淡い色の魚、白身魚などを低めに。刺し身の数は奇数にするのが一般的で、わさびや生姜などの薬味は、取りやすい右手前に置きます。

鉢盛りの場合は、切った面を上にして小高く重ねて盛るとよいでしょう。


平皿に三種を盛り合わせたもの。


かつおのたたきを重ねて鉢盛りに。

奥田 透(おくだ とおる)/1969年静岡市生まれ。高校時代から料理に興味を持ち、静岡や徳島などで修業。99年に独立、静岡市に「花見小路」を開き、連日満席ながらも店を譲り、2003年に東京・銀座に「小十」を開店。ミシュランガイドでは、初年の2008年度版から三ツ星を守り続けている。日本料理の原点「だし」の味を決めるのは水であると、故郷・静岡の湧き水を毎日取り寄せるほど。おいしさへの追求心はとどまることがない。

撮影:高橋栄一

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