三ツ星シェフに聞く、煮もの・蒸しものを上手につくるために知っておくべき5つのポイント

煮ものが上手に作れると、なんだか料理上級者になれた気がしませんか。でも実際は、なぜか生臭かったり、予想よりやわらかく炊けていなかったりして、意外と難しい。おいしく作れないのはなぜなのでしょう。そこで、東京・銀座の名店「銀座 小十」奥田透料理長に、煮ものや蒸しものをふっくらと上手に作るコツを教えていただきました。

1. 魚は湯にくぐらせ、堅い野菜は下ゆでして

上品で澄んだ味の煮魚を作るには、熱い湯にくぐらせる(霜ふり)ひと手間が大切です。
これで魚の生臭みや汚れが取れます。
また大根などの堅い野菜を煮るときは、下ゆでが必要です。
煮るときにだしや調味料がしみやすく、雑味なく煮上がります。

魚を煮るときは欠かせない霜ふり。

2. 煮ものは鍋の大きさに注意

短時間で煮上げる場合でも、時間をかけて煮る場合でも、最適な口径の鍋を選ぶこと。
材料に対して広く大きすぎると、煮る途中で材料が揺れて煮くずれ、煮汁も無駄に蒸発します。
逆に、材料に対して小さすぎると煮汁が均一に回らず、むらができます。
基本は、鍋底に材料が納まり、ほどよく隙間が出る大きさ。
そして煮汁の多い含め煮や下ゆでには深鍋を、煮くずれやすい魚の煮つけには浅鍋を使います。
むらなく煮るために落としぶたとして、ペーパータオルを活用するとよいでしょう。

2人分のさばの味噌煮は、さば2切れがちょうど並ぶ浅鍋で。

3. 煮ものの味つけは「さしすせそ」

調味の基本は、昔から「さ・し・す・せ・そ」といわれてきました。
「さ」は砂糖、「し」は塩、「す」は酢、「せ」はしょうゆ、「そ」は味噌のこと。
この順番で味を含ませると、味がきちんとつくことを意味します。
塩はしみ込みやすく、素材の組織をしめる作用があるので、先に入れるとその後に加える砂糖が入りにくくなります。
逆に砂糖はしみ込みにくく、素材を柔らかくします。
また、酢は早く加えると揮発し、醤油や味噌は香りがなくなります。
そこで、煮立ててあくを除き、まず酒、砂糖(またはみりん)を加えて甘みが素材になじむまで煮て、次に塩を加えます。
塩がなじんだところで酢、醤油、味噌を加えるのです。
また、色を薄く仕上げたいときは薄口醤油を使うことも多いのですが、普通の醤油(濃口醤油)よりも塩分が2%も多いので、注意が必要です。

筑前煮も、まず砂糖を加える。

4. 煮ものには季節の香りを添える

温かい煮ものなら、盛る器も湯にくぐらせて温めておきましょう。
春なら木の芽、冬には黄柚子など、その季節の香味野菜を天盛りとしてのせ、香りを添えることで、ぐっと季節感が増します。

冬の味覚、ぶり大根には黄色く色づいた柚子が合う。

5. 蒸しものは下味をつけて蒸す

蒸気で加熱する蒸し料理は、しっとりと柔らかく仕上がるのが特徴。
寒い冬などは特に喜ばれます。
蒸しもののよさは、材料が煮くずれず、旨みが溶け出さないので食材の持つおいしさが保たれること。
蒸している間に味をつけることができないので、魚や肉などを蒸す前には塩や酒で軽く下味をつけて、生臭さを消しておきます。
いただくときはポン酢醤油などをつけると、蒸し料理特有の淡泊な味わいを補うことができます。

奥田 透(おくだ とおる)/1969年静岡市生まれ。高校時代から料理に興味を持ち、静岡や徳島などで修業。99年に独立、静岡市に「花見小路」を開き、連日満席ながらも店を譲り、2003年に東京・銀座に「小十」を開店。ミシュランガイドでは、初年の2008年度版から三ツ星を守り続けている。日本料理の原点「だし」の味を決めるのは水であると、故郷・静岡の湧き水を毎日取り寄せるほど。おいしさへの追求心はとどまることがない。

撮影:高橋栄一

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