【コラム】コーヒーハンターに学ぶおいしいコーヒーの淹れ方、その1。素材の基本を知る

毎日自分で淹れるコーヒーの味に満足していますか? 今回は自宅でおいしいコーヒーを淹れるコツを、世界No.1のコーヒーハンター、川島良彰さんに教えていただきます。まずは素材の選び方から。

素材の力が8割。
家でおいしいコーヒーを淹れるには、何と言っても、よいコーヒー豆を用意することです。コーヒーの味を決める8割は素材。料理と同様に、コーヒーも素材の力がベースだからです。
 抽出器具へのこだわりや技術の習熟は、もちろんコーヒーのおいしさを支えてくれます。しかし豆の持っている成分以上のものは抽出されないので、豆がよくないと、どんなに頑張っても限界があるのです。
 豆がよければ、たとえ初めての抽出であっても、十分においしいコーヒーがはいります。Have fun!

よい豆を用意します
何と言っても焙煎から日が経っていない鮮度のよい豆を選ぶこと。そして、粉より豆を選んでください。豆なら豆診断をすることができますが、挽いてしまったものは、プロでも見た目で質の良しあしを見分けにくくなります。粉は、豆より鮮度を保ちにくく、風味が落ちやすいという理由もあります。
 また、豆をよく見て、焙煎の色みが味均ーなものを選びましょう。味をわるくする「未熟豆」の混入が少ない証です。
 豆がどんな包装で売られているかもポイントで、真空パック入りは要注意です。豆は焙煎後しばらく炭酸ガスを発生します。そしてガスとともにコーヒーのよい香り成分も出ていきます。つまり、「ガスが抜けるイコール、豆のよい香りも抜ける」ということです。真空パックは、このガスを抜いてからパックするので、香りをかなり失っています。
 一般的なガス抜きバルブ付きパックに入ったものは、窒素を注入して酸素を追い出してからシールすることで酸化を遅らせ、袋内で発生したガスを外に少しずつ出して爆ぜることを防ぎます。しかし窒素を入れずただシールしただけの真空パックの製品は、まったくおすすめできません。
 やはりより多くのガスを豆の中に残すことが品質保持の秘訣です。それで私は、このガスの発生に耐えられるシャンパンボトルやペットボトルに焙煎豆を入れています。
 また、購入するお店としては、豆の生産地や農園、品種が明示されていたり、説明できるスタッフがいたりするところなら、きっとよい豆に出会えると思います。

窒素充塡してペットボトルに密封したものもあります。開封すると、プシュッと炭酸水のボトルを開けたときのようなガスが出て、煎りたてのすばらしい香りが広がります。

合うお水を用意します
じつはコーヒーの98%は水。そのため水の味もおいしさに影響します。コーヒーの抽出に適した水は軟水です。日本の水道水はほぼ軟水なので、もしそのままおいしく飲めるならそれでOKです。気になる場合は、浄水器を通した水や軟水のペットボトル入りの水を使ってください。


これでおいしさアップ。買ってきたら「豆診断」
コーヒー豆を買ってきたら、お皿やバットの上に豆を広げてみましょう。よい豆なら粒がきれいにそろっているはずです。もし、割れ豆や欠け豆、色づきがわるい豆、異常に黒い豆などの「欠点豆」が見つかったら、すべて取り除いてください。特に色づきがわるく、薄く黄色っぽい「未熟豆」は、味をわるくするので探して取り除きます。
 本来、欠点豆の除去はお店の仕事ですが、もし混ざっているときにはご自身で。欠点豆を取り除くと雑味やえぐみが出にくくなり、クリアな味のコーヒーになります。


ボトルが活躍。家での保管方法
開封したら、すぐに密閉容器に移し、冷暗所で保管します。豆から出るガスをなるべく長く豆に留めるために、容器はキャニスターのように口の広いものより、口の狭いペットボトルなどがおすすめです。シャンパンキーパーをお持ちなら、ガラスボトルで保管するのもよいでしょう。
 冷蔵庫や冷凍庫で保管するのは、出し入れする際の温度変化がコーヒーの劣化を促進させるのでよくありません。必要量をこまめに購入し、開封したら10日以内で飲みきるようにしましょう。

豆を挽くのは、抽出の直前に
必ず挽きたてを使います。そのとき使う量だけを抽出する直前に挽いてください。挽き目(粒の大きさ)は、抽出器具ごとに目安がありますが、それが決まりではありません。同じ豆で、同じ抽出器具でも、粗く挽けばさっぱりめにはいりますし、細かく挽けば苦みとコクが出やすくなります。
 たとえば、軽い味わいのデザートと合わせるなら粗く挽いて、甘みが強いデザートなら細かく挽いて淹れるなど、家なら一杯ごとに挽き目を変えて、味の幅を楽しむこともできます。

電動のプロペラ式(ミキサータイプ)のミルは粒の大きさにバラつきが出て、微粉も多くなります。豆を切り刻むタイプのカッター式(写真)、もしくはすり潰しタイプの臼式がおすすめです。

「微粉」を捨ててクリアな味に
豆を挽くと、業務用の高性能ミルであっても少なからず微粉が出てしまいます。微粉混じりで抽出すると、粒の小さな微粉からは、出て欲しくない成分が出てしまい、渋みや嫌な苦み、重たさなどの原因になってしまいます。
 挽いた粉を茶こしに入れ、軽く微粉をふるい落としてから抽出してください。これはクリアなおいしさを楽しむ秘訣です。ぜひ試してみてください。

おいしいコーヒーなら微粉も香りが高いはず。これをバニラアイスクリームにぱらぱらとかけるとおいしいコーヒーアイスクリームができます。

「素材の基本」がわかったら、いよいよ「抽出の基本」です。次回は「淹れ方、その2」として、ペーパードリップでの淹れ方をご紹介します。来週木曜日をお楽しみに。

 

川島良彰(かわしま よしあき)/1956年静岡市に生まれる。生家は珈琲焙煎卸業。コーヒーの香りのなかで幼少期を過ごし、中学生のときには自室でサイフォンコーヒーを淹れていた。高校卒業後、エルサルバドルへ留学したのちエルサルバドル国立コーヒー研究所に入所し、コーヒー栽培・精選技術を習得する。1981年UCC上島珈琲株式会社入社。世界各地の農園開発を手掛け、帰国後、執行役員農事調査室長を務め、2007年同社退社。2008年株式会社Mi Cafeto(現:株式会社ミカフェート)を設立。40年にわたり世界のコーヒーに関わり、世界各地からおいしいコーヒーを探し出す世界でもNo.1のコーヒーハンターとして、日本のコーヒーマーケットに革命をもたらしている。株式会社ミカフェート代表取締役社長。ジャパンインターナショナルコーヒーインスティテュート校長。日本サステイナブルコーヒー協会理事長。東京大学コーヒーサロン共同座長。JAL日本航空コーヒーディレクター。カリフォルニア大学デイビス校 コーヒーセンター・アドバイザリー・ボードメンバー。タイ王室メーファールアン財団コーヒーアドバイザー。著書に『私はコーヒーで世界を変えることにした。』(ポプラ社)、『コーヒーハンター』(平凡社)。監修『僕はコーヒーがのめない(ビッグコミックス)』(小学館)。

イラスト:横山暢男、オザワミカ
撮影:伏見早織