【コラム】ソースを味わうフランス料理、手作りのマヨネーズ

野菜やお好み焼きにかけてよし、サンドイッチにはさんでよし、タルタルソースにしてもよし。日本の家庭では一から作るものではなく、市販されているものを材料として使うことも多いマヨネーズですが、フランスでは事情が違うようです。フランス菓子・料理研究家の大森由紀子さんが、その著書『ベーシック・フレンチ 地方のおそうざいレシピ』の中で、フランス料理に欠かせないソースのひとつとして紹介しています。

 日本人がマヨネーズMayonnaiseといってまず頭に浮かぶのは、市販のマヨネーズ。子供のころからマヨネーズといえば、何の疑問も抱かずお店で販売しているそれを使っていた。ところが、20代後半にパリに留学して、びっくりしたのが、市販のマヨネーズがほとんど出回っていないという事実だった。フランスでは、マヨネーズは食べる分だけお母さんが作ってくれるものなのだとあとから知った。マヨネーズは保存して使うものではなかったのだ。

 世の中にマヨネーズを嫌いな人を見つけるのは困難だ。マヨネーズをご飯にかけて食べれば他には何もいらないという人までいる。そんなに愛されるマヨネーズ。実は、かなりの脂肪分である。皆、だまされている。マヨネーズは、全体の70%の油、15%の卵黄、15%の調味料で作られている。これほどまでに大量の油が使用されているのに、脂っぽく感じないのだ。

 その理由は、マヨネーズの油が水分の中に取り込まれているところにある。そうすると、食べてすぐには脂っぽさを感じない。反対に、水分が油に包まれているのが、バターやマーガリンだが、これらは脂っこく感じてとても大量には食べられない。

 しかし、そんなマヨネーズの繊細な美味しさも、ひとたび作り方を誤ると脂っぽく台無しになってしまうので要注意だ。コツは、しっかり攪拌して卵黄と油をうまく乳化させることである。マヨネーズに使う油は、サラダ油、ひまわり油、菜種油、ピーナッツオイル、グレープシードオイルなど何でもOKだが、グレープシードオイルを使うと、わりと失敗しないという説もある。

 ところで、「マヨネーズ」という名前の由来だが、私の調べたところによると4つの説がある。

1. フランスの南西部バイヨンヌ地方で作られたので、バヨネーズBayonnaiseと呼ばれ、のちに、マヨネーズになった。
2. 卵黄を表す古い言葉、moyeuから派生した。
3. 1570年代の新旧の宗教戦争の折、旧教徒の代表マイヨンヌ公Mayenneが、戦いの前夜に食べた鳥料理のソースがあまりにも美味しかったので、公の名前がそのソースにつけられてマヨネーズとなった。
4. ルイ15世の時代、オーストリア大使となったリシュリュー元帥公が、1756年に勃発した七年戦争でイギリス領マヨルカ島を占領する。要塞だったマオン港Mahónをフランス軍の手中に収めて、お祝いの食事を提案。そこで、現地人は卵を生のままソースにするという情報を得た料理人が、それを真似して作ってみたらこれがたいそう美味しく、島の名前をとってマヨネーズとつけられたとか。

 青山のとあるビストロに友人と行ったとき、彼女は「私、ウフマヨ」と注文する。何かと思ったらウッフ・マヨネーズOEuf mayonnaise、つまりゆで卵のマヨネーズかけ。パリのビストロでは定番のそれだったのである。

次にこちらの本から、手作りマヨネーズでおいしさ倍増の「ブルターニュ風サラダ」(上の写真)をご紹介します。ぜひマヨネーズから作ってみてください。

ブルターニュ風サラダ

●材料(4人分)
手長海老 4尾
帆立貝 4個(大きいものなら、横に2枚に切る)
あさり 8個
白ワイン 100cc
好みの葉野菜(食べやすい大きさにちぎる) 適量
アーティチョーク(瓶詰) 適量
レモン(くし形切り) 1個

●作り方
1.ボウルなどにたっぷりの水を入れ、3%ほどの塩を加えて混ぜる。あさりを入れ、一晩冷蔵庫において砂をはかせる。
2.鍋に白ワインを入れて沸騰させ、海老を殻つきのまま入れてゆで、取り出す。帆立貝を入れてゆで、取り出す。あさりを入れてふたをし、貝殻が開くまで火を通す。
3.アーティチョークは食べやすい大きさに切る。
4.皿に葉野菜を敷き、アーティチョーク、海老、帆立貝、あさりを盛りつける。マヨネーズとレモンをかけていただく。

●マヨネーズの材料(4人分)
【A】卵黄 1個
【A】ディジョンマスタード 小さじ1
【A】塩、こしょう 各適量
サラダ油 200cc
白ワインヴィネガー 大さじ1

●マヨネーズの作り方
ボウルに【A】を入れる。電動泡立て器などを使って絶えずかき混ぜながら、サラダ油を少しずつ垂らし、混ぜ合わせる。白ワインヴィネガーを加え、さらに混ぜる。

 

大森由紀子(おおもり ゆきこ)/フランス菓子、料理研究家。学習院大学文学部仏文科卒。パリ国立銀行東京支店勤務後、パリの料理学校で料理とお菓子を学ぶ。フランスの伝統菓子、地方菓子など、ストーリーのあるお菓子や、フランス人が日常で楽しむおそうざいを雑誌、書籍、テレビなどを通して紹介している。フランス伝統菓子&地方菓子を伝える「クラブ・ドゥ・ラ・ガレット・デ・ロワ」の理事、毎年夏、フランスの地方へのツアーも企画。フランスのガストロノミー文化を日本に伝える懸け橋になりたいと願いながら、点が線になる仕事を目指している。

撮影:海老原俊之

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