【コラム】簡単、便利でおいしい! 日本料理店「分とく山」に教わる万能&季節の“合わせ薬味”5種

「野菜不足になりがちな食生活が気になる」「ごはんの支度はできるだけ手早くしたい」「もちろんおいしいものを食べたい」というかたにおすすめなのは、合わせ薬味の活用です。東京・南麻布の人気の日本料理店「分とく山」でもかくし味として常備しているという、とっておきの合わせ薬味の作り方を、総料理長・野崎洋光さんに教えていただきましょう。後半には冬の合わせ薬味を使った「かきのバター焼き」の作り方もありますよ。

和食ではいろいろな料理に薬味が登場します。刺身にはわさびを添え、和えものには木の芽を天盛りにし、吸いものには柚子を吸い口に浮かべる……。こうした薬味は殺菌や料理の味の引きしめ役、繊細な季節の香りを伝えるなどの役割を果たします。薬味に使う野菜には香り、辛み、苦みなどの成分があり、それぞれの素材で異なっていて、人によっては好き嫌いがあるでしょう。

こんな薬味野菜のうち、一年中手に入るごく一般的な「青じそ、生姜、みょうが、ねぎ、貝割れ菜」の五種を刻んで合わせたものが「分とく山」の“合わせ薬味”。合わせることでそれぞれの香り、辛み、苦みなどがミックスされてやわらぎ、複雑なうまみに変わって、いずれかの薬味が苦手な人でもおいしく食べられるようになります。

この合わせ薬味を冷蔵庫に常備して、ゆでただけ、焼いただけのような料理に使うと、合わせ薬味の歯ざわりと香りで上等な料理に仕上がります。それに野菜がたっぷり摂れて健康的。使い方は万能で、洋風にも合います。

ご家庭で、みょうがや青じそをパックで買って残ってしまうことはありませんか?
 でも初めからこの合わせ薬味にしておくと、使い勝手がよいのでしなびさせることはまずないでしょう。「分とく山」でもこの合わせ薬味を常備して、かくし味としていろいろな使い方をしています。

一年中、何にでも万能―基本の合わせ薬味

五つの薬味を合わせると、それぞれの苦み、辛みがうまみに変わります。

【材料】
・ねぎ…青い部分 本分を小口切りにする。青ねぎ、万能ねぎでもよい。消化を助ける。
・青じそ…10枚を横にせん切りにする。防腐作用があり、消化器官の働きをよくする効能もある。
・生姜…1かけを皮をむいてみじん切りにする。魚や肉の生臭みを消し、殺菌効果もある。
・みょうが…3個を縦半分に切ってから、小口切りにする。食欲増進効果や、発汗作用がある。
・貝割れ菜…大根の貝割れ専用種の若葉。1パック分をざく切りにする。これが加わると全体がからみやすく、まとまるようになる。

【作り方】
1.切る:五つの薬味野菜をせん切り、みじん切り、ざく切りなど、素材に適した切り方で切ります。
2.さらす:五つの切った薬味野菜を混ぜ、たっぷりの冷水(夏は氷水)に5分さらします。さらすことであくが抜け、シャキッとして日持ちするようになります。
3.保存:合わせ薬味をしっかり水きりして、キッチンペーパーを敷いたふたつきの容器に入れて冷蔵庫へ。一週間保存できます。これが“基本の合わせ薬味”です。

香りの違いを楽しむ季節の合わせ薬味

季節が移ろうにつれて野菜の旬が変わる日本らしさを生かし、季節ごとで異なる合わせ薬味を用意して香りや歯ざわりの違いを楽しむこともできます。

例えば春ならクレソンや木の芽、冬なら柚子を使ってみましょう。こんな合わせ薬味があるだけで、日々の食卓が季節感に満ちた上質な料理で彩られます。材料の割合は目安で、お好みで加減を。


春は苦みやあくの強い山菜が芽吹き、緑濃い野菜も旬を迎えます。昔から“春は苦みを食べよ”といわれ、苦みは体を目覚めさせる効果があります。
「春の合わせ薬味」はクレソンの葉先5本分、にら8本、ねぎの白い部分1/2本、木の芽5g 、三つ葉1わの五種。
ねぎは1cm角の色紙切り、ほかはざく切りにして合わせて水にさらし、水気をきって保存。ほろ苦さが特徴です。


蒸し暑い夏。食欲の落ちた体にしみ入るような水分の多い果菜が出回ります。
「夏の合わせ薬味」はみずみずしいきゅうり1本、長いも50g、にんじん2.5cm、青じそ5枚、ねぎの白い部分1/2本を加えた五種。
きゅうり、長いも、にんじんは口の中で回りやすい2.5cm長さの短冊切り、青じそ、ねぎはせん切りに。合わせて水にさらし、水気をきって保存。シャキッとした食感です。


実りの季節、「秋の合わせ薬味」は、ししとう、貝割れ菜、みょうが、生姜、菊の五種。
ししとう10本とみょうが3個は小口切り、貝割れ菜1パック分はざく切り、生姜20gはみじん切り、食用の菊2輪は花びらをむしります。これらを合わせ、水にさらして水気をきって保存。
優雅な色合いとやさしい香りが特徴で、菊の色は紫や白などに替えても。


温かい料理が恋しくなる頃、「冬の合わせ薬味」は、黄色に色づいた柚子の皮に春菊、ねぎ、せりの四種。
柚子皮1個分とねぎの白い部分3cmはせん切りに、春菊の葉先5本分とせり1/2わはざく切りにします。これらを合わせ、水にさらして水気をきって保存。
香り高く、鍋ものにたっぷり使うことができ、煮ものに加えると歯ざわりが新鮮です

それではさっそく冬の薬味を使って「かきのバター焼き」を作ってみましょう。

かきのバター焼き


【材料(2人分)】
かき…10個
大根おろし…適量
小麦粉(薄力粉)…少々
サラダ油…小さじ2
バター…大さじ1と1/2
醤油…小さじ1
冬の合わせ薬味…適量
もみのり…少々

【作り方】
1.かきは大根おろしの中でもみ洗いし、水で振り洗いをしてざるに上げる。水気を拭いて小麦粉をまぶす。
2.フライパンにサラダ油を熱し、1を入れて焼き色をつける。
3.2のフライパンの余分な油をキッチンペーパーで拭いてバターを加え、溶けたら醤油を加えてからめる。
4.器に冬の合わせ薬味を盛り、3をのせて、もみのりをふる。


今すぐに合わせ薬味を作りたくなりますね! 野崎さんの著書『作りおきで便利、「分とく山」のかくし味』には、ご紹介した合わせ薬味を使ったレシピが多数掲載されています。

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野崎洋光(のざき ひろみつ)/東京・南麻布の日本料理店「分とく山」総料理長。1953年、福島県古殿町生まれ。武蔵野栄養専門学校を卒業、栄養士でもある。従来の考え方にとらわれない今の時代に合った料理哲学を、やわらかな語り口で分かりやすく説く、稀有な料理人。常に家庭料理の大切さ、家庭でしか作れないおいしさを唱えている。『和食のきほん、完全レシピ』(小社刊)、『日本料理 前菜と組肴』(柴田書店)など、著書も多数。

撮影:湯淺哲夫、南雲保夫、三木麻奈