【コラム】手順次第で驚くほどうまい“ころも”が完成!「てんぷら近藤」に教わる、家庭で簡単に作れる極上天ぷらの基本・その2

「ああ…天ぷらが食べたいっ」と、声に出して言いたくなるほど、おいしそうなレシピが並ぶのは、東京・銀座の名店「てんぷら近藤」店主の近藤文夫さんの著書『「てんぷら近藤」主人のやさしく教える天ぷらのきほん』です。家庭でもおいしい天ぷらを作るコツを惜しげもなく披露しているこちらの本から、今回は“ころも作り”を紹介します。

ころも作りはまず、水に卵を入れる。

ころもの材料は〈薄力粉、水、卵〉の3つですが、これらを混ぜる順番が大事。ここを間違えるとよいころもができず、天ぷらがうまく揚がりません。

最初に混ぜるのは、水と卵です。まず、ふたつだけを混ぜて「卵水」を作ります。

ポイントは「水に卵を入れる」こと。卵白は水溶性なので、水の中に卵を落とすと、卵黄が崩れる前に卵白が水に溶け始めます。底のほうに沈んだ卵白をよく溶きほぐし、次第に卵黄を崩して混ぜていけば、卵白のどろっとしたかたまりがなくなり、サラサラで均一な卵水になります。誤って逆の順序――卵に水を注ぐと、卵黄がすぐに崩れて卵白が溶けにくく、ダマになりやすくなります。

卵水は、少し多めに作っておくと重宝します。私がご紹介する方法は素材に薄力粉をまぶしてからころもに通すので、ころもに少しずつ薄力粉が加わり、濃くなっていきます。それを薄めるのに、卵水の残りがあると簡単です。ころもが足りなくなって、追加で作る必要が出た時にも、卵水があれば簡単ですね。

よく“ころもに氷を入れて冷たくすると軽く揚がる”といわれますが、そんなことはありません。ころもと油の温度差が広がり、かえって揚げにくくなります。普通に冷たい水で充分です。

【卵水の作り方】
1.高さのある容器に水1.6lを入れ、卵4個を入れる。容器いっぱいに水が入ると混ぜる際にこぼれるので、縦長の容器を使って高さに余裕をもたせる。

2.水の中に卵を入れることで、まず水溶性の卵白が自然に水に溶け始める。

3.太い粉箸を容器の底にあて、力強く、小刻みに回して卵白を溶きほぐす。

4.少しずつ卵黄を混ぜながら溶いていく。徐々に細かい泡が出てくる。

5.泡が増え、水面が上がってくると容器からこぼれやすくなるので、容器ごとボウルに入れてかき混ぜる。

6.充分に混ざったところで、表面に浮いた泡をボウルにあける(この泡は使わない)。

7.サラサラの卵水のでき上がり。

ころもの配合は粉1:卵水1。

卵水ができたところで、薄力粉を混ぜてころもを仕上げましょう。

薄力粉は必ずふるいにかけます。ダマをなくす目的もありますが、空気を含んでサラサラになるので、卵水と混ぜた時に溶けやすく、結果としてふわりとした軽いころもができます。ふるうのは1回で充分で、直前でなくても問題ありません。ふるった粉をビニール袋に入れ、冷蔵しておけばサラサラが持続します。

では、ふたつを混ぜます。卵水と薄力粉は体積比で1:1。卵水1カップなら、薄力粉も1カップ。水分が多く、薄ごろもです。天ぷらは「ころもを食べる料理ではありません」からね。

手順は、卵水に薄力粉を3回に分けて加えます。少量ずつのほうが短時間で混ざりやすいからで、一度に全量を入れると、混ぜ始めに薄力粉が舞い上がりボウルからあふれます。混ぜるには、箸よりも泡立て器が断然おすすめ。ひとかきの量が多く、少ない回数で混ぜられるのでグルテンが生成されにくく、粘りが出ません。ころもの中で8の字を描き、トントンと叩く工程を交互に数回ずつくり返せば素早く混ざります。

でき上がったころもは、すくうとすぐにタラーと流れる薄さです。こんなに薄くて大丈夫だろうかと思われるでしょうが、これが目指す状態。素材をうっすらと覆うだけの薄ごろもだからこそ、たねとなる素材の風味と色が生きてくるのです。

【ころもの作り方】
1.薄力粉をふるいにかける。目が細かすぎるとかえって粉同士が密着するので、一般的な目の粗さのざるで充分。ふるってから、ころもを作るまで時間があいてもよい。

2.体積が同量の卵水と薄力粉を用意。ボウルに卵水を入れ、薄力粉の約1/3量を加えて、泡立て器で8の字を6回ほど描いて混ぜる。粉は少量ずつ加えるほうが溶けやすい。

3.薄力粉が完全に溶ける前に、泡立て器でトントンと10回近く叩いて薄力粉を沈め、卵水となじませていく。

4.残りの薄力粉を2回に分けて加え、そのつど2~3と同様に、8の字とトントンと叩く作業をくり返す。

5.ころもの完成。シャバシャバで薄いが、これがベスト。かき揚げなど、より薄いころもにする時は、基本のころも1カップに卵水大さじ3ほどを加える。

6.ころもをすくった時に、箸に多少のダマが残っても大丈夫。ダマがないようでは、むしろ混ぜすぎ。



卵に水を加えるのではなく、水に卵を落とす、という手順が、ころも作りのコツだったんですね! 来週はいよいよ揚げちゃいますよー。


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近藤文夫(こんどう ふみお)/東京・銀座「てんぷら近藤」店主。東京生まれ。高校卒業後、東京・神田駿河台「山の上ホテル」に入り、和食・天ぷらの部門に配属。23歳で「てんぷらと和食 山の上」の料理長に抜擢、以後21年間務めた。1991年に独立し、「てんぷら近藤」を開店。薄ごろもで揚げる手法や野菜天ぷらなど、斬新な発想で、独自の天ぷらを提案し続けている。

撮影:日置武晴