【コラム】粉の使い方がカギ!「てんぷら近藤」に教わる、家庭で簡単に作れる極上天ぷらの基本・その3

2週に渡り東京・銀座の名店「てんぷら近藤」店主の近藤文夫さんの著書『「てんぷら近藤」主人のやさしく教える天ぷらのきほん』から、おいしい天ぷらを挙げるための手順をご紹介してきましたが、3週目の今回はいよいよ“揚げる”段階に突入です。近藤さんの技を参考に、ぜひご家庭でもおいしい天ぷら作りに挑戦してみてください。

粉をまぶしてから、ころもづけ。

一般には、素材に天ぷらのころもをじかにつけますが、近藤流は薄力粉をまぶして粉の薄膜を作り、その上にころもをつけます。

理由はふたつ。ひとつは、ころもの濃度がかなり薄く、部分的にはげることもあることから、均一にころもがつくよう接着剤的な役割をするため。

ふたつめは、揚げている間に素材からにじみ出る水分を薄力粉が吸い取ってくれるため。その結果、ころもがベタつかずにカラッと揚がり、素材がみずみずしく、風味豊かに揚がるのです。

気をつけたいのは、薄力粉を厚くまぶさないこと。厚化粧すると、ころもをつけた時に粉がダマになる可能性があるので、トントンと叩いて余分な粉を落とします。

ご家庭では、さまざまな素材を一度にたくさん揚げることも多いでしょう。でも、最初にまとめて薄力粉をまぶすのはNG。素材からの水分で粉がベタつき、ころものつき方にむらが出てしまいます。そのつどまぶすほうが、絶対にうまく揚がります。

ほとんどの素材は、〈薄力粉→ころも〉の2層ですが、なかには〈ころも→薄力粉→ころも〉と3層にすることもあります。玉ねぎ、小玉ねぎ、葉しょうが。素材の表面がツルッとして薄力粉がつきにくかったり、表面がいびつな形だったりする場合です。はじめにころもを少量つけることで、二度目のころもがきれいにつきます。

揚げる温度は3通り。

天ぷらの揚げ油の適温は、素材、大きさ、一度に揚げる量によって微妙に違ってきますが、おおよそ次のように覚えておくと便利です。

〈野菜170℃、魚介一般180℃、穴子190℃〉

実際には油にたねを入れるとすぐに温度が下がります。1個ずつならあまり変化はありませんが、実際には3~4個を同時に入れます。そうすると10℃は下がってしまう。170℃のつもりが160℃で揚げていることになるので、揚げ始めは10℃高く温めます。特にフライパンは温度が下がりやすいので、揚げている時が適温となるよう心がけましょう。

ただ、素材が小片のかき揚げは、油が高温だとたねがバラバラに散る可能性があるので、10℃高く温めた油の火をいったん消し、たねを入れてから再度火をつけて、揚げながら適温に戻すのがコツです。

揚げ上がりは、泡の大きさと量、油のはねる音、素材の浮き方で判断するのがいちばん確実。泡は小さくたくさん出ていたものが、だんだん大きく少なくなる。音はころもの水分がはねる高い音から、素材の水分がはねる低い音になる。沈んでいた素材は、水分が抜けて軽くなり、浮いてくる──こうした変化が起きてくれば揚げ上がりのサインです。ころもの状態に目を配り、油のはねる音に耳を澄ませましょう。

【揚げ油の温度の見分け方】
●170℃の油

・ころもはいったん鍋底に沈んでスッと浮く 
・油のはねる音はジュワジュワ 
・泡は中くらいの大きさ

●180℃の油

・ころもは油の深さの途中まで沈み、素早く浮く 
・油のはねる音はジャッ
・泡は中くらいの大きさで、量が多くさっと広がる

●190℃の油

・ころもは沈まず、油の表面に素早く散る
・油のはねる音はシャッ
・泡は小さくたくさんの量が一気に出る

【揚げる手順】
(170℃でしいたけ3~4個を揚げる場合)

1.180℃の油に入れる
しいたけに薄力粉ところもをつけて、適温より10℃高い180℃の油へ。油に入れるところまでは太い粉箸、油に入れてからは細い盛り箸(ステンレス製)を使うとたねを持ちやすい。

2.170℃を保って揚げる
揚げている間はできるだけたねをさわらない。形が崩れたり、ころもがはげたりしやすい。裏に返す時も、大きくて重いもの以外は、箸で挟まず、箸先でポンとすくって返す。

3.油から取り出す
油から引き上げたら、すぐにペーパータオルにのせて油をきる。平らにねかせるより、縦長に立てるようにおいたほうが油きれがよい。紙にしみる油の量が少ないほど揚げ方がよい証。

長い余熱調理で仕上げる天ぷらもある。

天ぷらは揚げて終わり、と思っている方は多いでしょう。私たちが手を加える作業はたしかに終わり。でも、調理は続いています。余熱によって火が入っていくからです。

実際、油から引き上げた天ぷらは、余熱によって中心温度が上昇し、数分たった頃から下降していくことが科学的にわかっています。ある大学の実験によれば、するめいかの中心温度は揚げたてに40℃だったものが、余熱によって60℃まで上がり、数分後に再び40℃に下がっています。

どんな素材を揚げた場合でも、この余熱調理は起きています。その分を見越して、完全に火が入る1~2分手前で油から引き上げるのがベストのタイミングです。

店では、こうした通常の天ぷらとは別に、大きなブロックに切った野菜を、時間をかけて揚げた後、紙で包んで10分以上の余熱調理で仕上げる天ぷらも取り入れています。当店の看板料理となった厚切りのさつまいもや、かぼちゃに適した調理法です。ホクホク感が強調された食感や、濃い旨みと香りは、薄切り天ぷらでは得られない、大きなサイズと長い余熱時間を生かしてこその味わいです。




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近藤文夫(こんどう ふみお)/東京・銀座「てんぷら近藤」店主。東京生まれ。高校卒業後、東京・神田駿河台「山の上ホテル」に入り、和食・天ぷらの部門に配属。23歳で「てんぷらと和食 山の上」の料理長に抜擢、以後21年間務めた。1991年に独立し、「てんぷら近藤」を開店。薄ごろもで揚げる手法や野菜天ぷらなど、斬新な発想で、独自の天ぷらを提案し続けている。

撮影:日置武晴